北アルプスの女王・燕岳に登り、温泉天国中房温泉で極上湯と地熱ローストビーフを楽しむ

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ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第16回は夏山シーズン前、まだ雪が残る燕岳に登り、中房温泉へ。

写真・文=月山もも

「北アルプスの女王」と称される燕岳は、頂上の稜線にある快適な山小屋「燕山荘」がゴールデンウィーク以降も営業を続けていることもあって、夏山シーズン前でも比較的登りやすい山です。
登山口の中房温泉まではバスを利用し「北アルプス三大急登」の一つに数えられる合戦尾根を登っていきます。


たっぷりの残雪、奇岩、槍・穂高連峰の絶景!


歩き始めてしばらくは雪もなく、道も整備されていて歩きやすいのですが、途中にある「合戦小屋」から先は残雪がしっかりと残っていました。


  
アイゼンを装着し、夏はジグザグに登っていく急坂を直登します。きついですが、高度をあげるごとに槍・穂高連峰が姿を現してくるのがたまりません。
  
「合戦沢の頭」まで登ると美しい山々の姿が目の前に現れ「おおー!」と思わず声をあげてしまいます。そして、ここまで来ればあと一踏ん張りで燕山荘です。

燕山荘から眺める燕岳の姿は、ところどころに残る雪化粧も相まって「さすが北アルプスの女王だな」と納得してしまう美しさでした。

  

山荘から山頂までの往復1時間ほどの道には「イルカ岩」や「めがね岩」などと呼ばれる奇岩が点在しています。風もなく暖かく、天国のような場所だなと思いながら山頂を往復し、燕山荘でランチをいただいてから来た道を下山しました。


ソファベッドのあるお部屋にて、浴衣でくつろぐ


中房温泉には「招仙閣」と呼ばれる旅館的なサービスの棟と、登山客・湯治客向けの「ロッジ」と呼ばれる棟があります。下山後、のんびりとくつろぎたいので今回は「招仙閣」に宿泊しました。

案内していただいたお部屋にはソファベッドがあり、昼からゴロゴロできるのがすばらしいです。テレビやポットに空の冷蔵庫、広縁には洗面台もある快適なお部屋でした。
  
今回予約したプランでは、女性のみ特典として選べる浴衣がついていました。浴衣と一緒にお風呂に行くときに使えるかごバッグも貸していただき、一休みしたらお風呂に向かいます。


源泉数29本!かけ流しの14の風呂を湯巡り


中房温泉には内湯と露天風呂、貸切風呂、混浴風呂など合わせて14もの温泉のお風呂があります。源泉数は登録されているだけで29本あり、ほとんどが90度以上の高温の源泉なのだそうですが、水を加えることなく自然に冷まして浴槽に注がれています。

 

チェックイン時にいただいた案内図を眺めながら、宿の敷地内で湯巡りを楽しみます。広く開放的な露天風呂「岩風呂」に、こぢんまりとした家族風呂。

  

空いているときに鍵を借りて入る貸切露天風呂「滝の湯」、根っこをくりぬいて作られた1人用の小さな半露天風呂「根っこぶろ」など、すべて正真正銘のかけ流しです。

また、お隣の「ロッジ」にある浴室にも、深夜以外はいつでも入ることができます。

  

眺めのいい半露天風呂のある「大湯」や、中房温泉で一番歴史ある浴室「御座の湯」など、浴室ごとに雰囲気はまるで違いますが、お湯はどのお風呂も新鮮で、つるつるした感触が気持ちいいです。

  

ロッジにある「不老泉」と、招仙閣にある大浴場は混浴なので、女性専用時間帯に入りました。どちらも木の香りが漂う広々としたお風呂で、とても気に入りました。

1泊ですべてを巡ることが難しいほどたくさんの浴室、そしてとびきり新鮮なお湯。温泉好きにとって天国のような場所でした。


裏山の地熱で蒸された絶品ローストビーフ


食事は食事処でいただきます。お隣の席とは十分に空間が空いているので、1人でも気になりません。
 

まずは瓶ビールで喉を潤しました。お刺身は信州サーモンと鯉。鍋料理は鴨で、山の味覚づくしです。

ビールがなくなったところで日本酒を。中房温泉の源泉が入っているという「大雪渓」の特別純米は、ほんのり甘みがあっておいしいお酒でした。

天ぷらはふきのとうやタラの芽など山菜がたっぷり、煮物は筍で、春らしい食材が並ぶのもうれしいポイント。
  
お腹が満たされてきたタイミングで、プランの特典の「地熱料理」が登場しました。宿の周辺には地熱が100度を超えている場所があり、地熱でさまざまな食材を蒸した料理が特別料理として提供されているのです。本日は「信州牛の地熱蒸しローストビーフ」でした。

  

その大きさに驚きながらナイフとフォークで切り分け、タレを付けてご飯の上に載せれば、「ローストビーフ丼」の完成です。脂の旨みがご飯にも染み渡り、えも言われぬおいしさでした。

翌朝の朝食も、同じ食事処で。ほんのり甘めの卵焼きとたっぷりの納豆がうれしかったです。

  

食後は追加で「水出しコーヒー」を注文して、チェックアウト時間までくつろいで過ごしました。
また燕岳登山の後に泊まり、いつかは連泊して、もっと湯巡りを楽しみたい宿です。

 

*紹介した食事、サービスは2019年5月取材時の内容です。
 

中房温泉

料金:1泊2食付き(招仙閣)/1室1名18850円~、2名15500円~※繁忙期は1名利用不可の場合あり

住所:〒399-8301長野県安曇野市穂高有明7226
電話:0263-77-1488
HP:https://nakabusa.com/

 

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

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