来たれ、山岳写真ファン!「ヤマケイ・フォトコンテスト2021」締め切り迫る

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2020年より復活した『山と溪谷』の人気企画「ヤマケイ・フォトコンテスト」。再出発となった昨年は「山岳景観」「自然風景」の2部門で作品を募集し、北アルプスの絶景やユニークな風景が集まった。今年の締め切りは、2021年7月31日(土)。まもなくだ!

2020年より復活した『山と溪谷』の人気企画「ヤマケイ・フォトコンテスト」。再出発となった昨年は「山岳景観」「自然風景」の2部門で作品を募集し、北アルプスの絶景やユニークな風景が集まった。今年の締め切りは、2021年7月31日(土)。まもなくだ!

 

昨年末、各部門の最優秀賞、優秀賞、入選を速報として、ヤマケイオンラインで発表した。しかし、佳作作品は雑誌に掲載したものの、ヤマケイオンラインでは未発表となっていた。そこで今回は、各部門の掲載作品をすべて掲載し、「完全版」としたい。発表は2回に分け、前編では「山岳景観」部門の13作品を紹介しよう。

>>後編はこちらから

選評/菊池哲男(きくち・てつお)
1961年生まれ。後立山連峰を中心に、雲海が生み出す稜線の絶景や山並みを生かした星景など、ドラマチックな作品を数多く撮影。メーカーや旅行会社が主催する写真教室の講師も務める。『天と地の間に 鹿島槍・五竜岳』(小社)など著書多数。

 

山岳景観部門

最優秀賞

 「雲舞う鳥海山」
長谷川由美子さん(群馬県・63歳)[日本山岳写真協会、山岳写真同人峰所属]
鳥海山・御浜小屋付近(2017年7月20日)
三日月と金星を狙って暗いうちから登り始める。御浜小屋に着いたときには雲が広がっていたが、雲間から月を見ることができた。次第に空がピンクに染まり、太陽が顔を出す。雲がまるで舞っているかのようで、ニッコウキスゲとのコラボレーションが美しかった。
長谷川由美子さん(群馬県・63歳)
鳥海山・御浜小屋付近(2017年7月20日)
[日本山岳写真協会、山岳写真同人峰所属]
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三日月と金星を狙って暗いうちから登り始める。御浜小屋に着いたときには雲が広がっていたが、雲間から月を見ることができた。次第に空がピンクに染まり、太陽が顔を出す。雲がまるで舞っているかのようで、ニッコウキスゲとのコラボレーションが美しかった。
 
[選者コメント]
超広角レンズによる雄大な風景です。ハーフNDを使っているのでしょうか。逆光により手前のニッコウキスゲが浮かび上がり、特に鳥海山の山頂を中心に舞うような雲が印象的で、夏山の魅力が凝縮されています。ただし山肌部分を起こす画像処理が少し気になります。

 

優秀賞

 「夜空の大河」
前田由季さん(岐阜県・42歳)
南アルプス・烏帽子岳山頂にて(2019年5月12日)
烏帽子岳山頂より小河内岳と荒川三山の悪沢岳、中岳。残雪期の烏帽子岳は誰もおらず、貸し切りでした。静かな夜、遠く雪解け水の流れる音だけが山に響き、何度も流れる星々にただただ感動。小屋開け前の山は静かで最高です。
前田由季さん(岐阜県・42歳)
南アルプス・烏帽子岳山頂にて(2019年5月12日)
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烏帽子岳山頂より小河内岳と荒川三山の悪沢岳、中岳。残雪期の烏帽子岳は誰もおらず、貸し切りでした。静かな夜、遠く雪解け水の流れる音だけが山に響き、何度も流れる星々にただただ感動。小屋開け前の山は静かで最高です。
 
[選者コメント]
この時期ならではの美しい星空ですね。夜空を斜めに流れる、いて座付近の天の川の角度がよく、残雪で浮かび上がる山々とうまくバランスされています。コントラストがやや強い印象なので、上げすぎないように気をつけてください。

 

 「たなびく白雲」
鴨井和徳さん(新潟県・58歳)[久比岐ネイチャーフォトグラファーズ所属]
北アルプス・小遠見尾根にて(2018年12月22日)
天気の回復を信じて待っていたところ、雲が開け、山容が見えてきた。雲の流れが早く、激しく変わる雲の形に迫力を感じながら撮影を行なった。
鴨井和徳さん(新潟県・58歳)
北アルプス・小遠見尾根にて(2018年12月22日)
[久比岐ネイチャーフォトグラファーズ所属]
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天気の回復を信じて待っていたところ、雲が開け、山容が見えてきた。雲の流れが早く、激しく変わる雲の形に迫力を感じながら撮影を行なった。
 
[選者コメント]
小遠見山に登った際は真っ白だったようですが、次第に雲が切れて五竜岳が姿を現わしたとのこと。こういう天気の変わり目はシャッターチャンスが多く、それを信じて撮影地点に向かった作者の粘り勝ちといったところでしょうか。

 

入賞

 「明けゆく甲斐駒ヶ岳」
原田智弘さん(埼玉県・59歳)
南アルプス・早川尾根のミヨシの頭付近(2019年9月15日)
早川尾根に7日間こもって、やっと撮影できた一枚です。
原田智弘さん(埼玉県・59歳)
南アルプス・早川尾根のミヨシの頭付近(2019年9月15日)
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早川尾根に7日間こもって、やっと撮影できた一枚です。
 
[選者コメント]
山岳写真の世界では最近少なくなった35mmフィルムカメラによる作品です。1週間粘っただけの甲斐があって、ピラミダルな甲斐駒ヶ岳がきれいな雲海を従えて凛々しく感じられます。「明けゆく」という題名が作品と合わない気がしますが、いかがでしょう?

 

 「滝谷晴天」
青谷晋行さん(兵庫県・58歳)[日本山岳写真協会所属]
北アルプス・奥丸山から滝谷方面(2015年1月3日)
厳冬の滝谷を狙うため、奥丸山へラッセルする。朝は滝谷が影になるが、時間とともに岩と雪の壁を冬の光が照らし始める。雪の白さが飛ばないように露出を切り詰めて撮影した。
青谷晋行さん(兵庫県・58歳)
北アルプス・奥丸山から滝谷方面(2015年1月3日)
[日本山岳写真協会所属]
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厳冬の滝谷を狙うため、奥丸山へラッセルする。朝は滝谷が影になるが、時間とともに岩と雪の壁を冬の光が照らし始める。雪の白さが飛ばないように露出を切り詰めて撮影した。
 
[選者コメント]
まさに正統派の山岳写真といった風格のある作品で、稜線は風が強く、新雪が飛ばされているようです。北穂高岳滝谷の撮影地として知られる奥丸山ですが、厳冬期にアプローチした労作です。

 

 「チングルマ群落」
遠山俊保さん(東京都・72歳)
秋田駒ヶ岳・ムーミン谷にて(2020年6月24日)
避難小屋に宿泊し、通称ムーミン谷へ。翌朝、曇り空のため、ガスが湧いて景色が見えなくなると思い急ぐ。チングルマは見頃で撮影も順調。しかし、その後はガスで見えなくなった。
遠山俊保さん(東京都・72歳)
秋田駒ヶ岳・ムーミン谷にて(2020年6月24日)
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避難小屋に宿泊し、通称ムーミン谷へ。翌朝、曇り空のため、ガスが湧いて景色が見えなくなると思い急ぐ。チングルマは見頃で撮影も順調。しかし、その後はガスで見えなくなった。
 
[選者コメント]
まだ自粛ムードが漂うなかで撮影された作品。避難小屋泊だからこその早朝なのも相まって登山者が誰もいない、珍しい光景です。コロナと無関係に咲き誇るチングルマの群落に自然の底力を感じます。

 

 「富士山遠望」
小口雅己さん(長野県・69歳)[集団こまくさ所属]
長野県・三峰山山頂にて(2020年8月17日)
奥に見えるのは八ヶ岳、富士山、南アルプス。雲海が徐々に消えて、見通しがよくなってきて撮影できました。
小口雅己さん(長野県・69歳)
長野県・三峰山山頂にて(2020年8月17日)
[集団こまくさ所属]
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奥に見えるのは八ヶ岳、富士山、南アルプス。雲海が徐々に消えて、見通しがよくなってきて撮影できました。
 
[選者コメント]
山岳写真で最も相性がよい脇役が雲の存在です。見慣れた構図をドラマチックな作品に変貌させています。敷きつめたような雲海の一部が切れ、尾根の木々が透けて見えているところがポイントです。

 

佳作

 「朝焼けの稜線」
渡部 悟さん(島根県・45歳)[全日本山岳写真協会所属]
伯耆大山・弥山から剣ヶ峰(2017年3月1日)
渡部 悟さん(島根県・45歳)
伯耆大山・弥山から剣ヶ峰(2017年3月1日)
 
[選者コメント]
伯耆大山の弥山から望む剣ヶ峰と御来光です。雪面がいい色に染まりましたね。狙いどおりといったところですが、手持ちでの撮影だったのでしょうか? できればもう少し絞れると被写界深度が広がって、手前のシュカブラにもっとピントが合ったかと思われます。

 

 「雪庇」
緑埜公一さん(群馬県・72歳)[日本山岳写真協会所属]
谷川岳・ノゾキ付近からオキの耳(2013年5月5日)
緑埜公一さん(群馬県・72歳)
谷川岳・ノゾキ付近からオキの耳(2013年5月5日)
 
[選者コメント]
5月連休の谷川岳はもう春山で、標高もそれほど高くないため、通常は残雪感があるので すが、この作品では前日に雪が降ったせいで、まだまだ冬の様相を呈しています。作者は撮影地も熟知されているようで、ポイントとなる雪庇を手前に入れてうまくまとめています。

 

 「盛夏萬歳」
天藤寛子さん(千葉県・30歳)[山岳写真ASA所属]
北アルプス・槍沢終盤から槍ヶ岳(2020年8月6日)
天藤寛子さん(千葉県・30歳)
北アルプス・槍沢終盤から槍ヶ岳(2020年8月6日)
 
[選者コメント]
今年の梅雨開け直後に訪れた槍沢上部のお花畑と槍ヶ岳です。作者のコメントに、まるで「待ってました!」とばかりに咲きこぼれる花々が、どんなことがあろうと季節を祝い、喜ぶ気持ちを防ぐことはできない、とありましたが、まさにそのとおりだと感じました。

 

 「春の星々に抱かれて」
須貝鶴樹さん(東京都・35歳)
北アルプス・栂池自然園より白馬三山(2017年 5月2日)
須貝鶴樹さん(東京都・35歳)
北アルプス・栂池自然園より白馬三山(2017年 5月2日)
 
[選者コメント]
まだ雪に覆われた早春の栂池自然園から望む白馬三山と星空で、澄んだ空気感が伝わります。山だけでなく、星空への配慮もしっかりしていて、北斗七星からの春の大曲線がみごとです。ただし撮影時のISO感度6400はノイズを考えるとちょっと上げすぎかな。

 

 「朝霧流れる」
佐藤孝也さん(愛知県・56歳)[日本山岳写真協会所属]
北アルプス・涸沢岳から奥穂高岳(2019年8月14日)
佐藤孝也さん(愛知県・56歳)
北アルプス・涸沢岳から奥穂高岳(2019年8月14日)
 
[選者コメント]
定番ともいえるアングルながら、穂高連峰に朝日が当たり、白出乗越を飛驒側へと流れる 雲が美しく、非凡な作品に仕上がりました。紅色に染まる山はもちろん、霧の中に浮かぶ 稜線がいいですね。こういうときは直前までガスっていることが多く、待って正解でした。

 

 「雪纏う稜線」
寺田朋弘さん(大阪府・51歳)[全日本山岳写真協会所属]
北アルプス・鏡平より槍ヶ岳(2017年8月17日)
寺田朋弘さん(大阪府・51歳)
北アルプス・鏡平より槍ヶ岳(2017年8月17日)
 
[選者コメント]
下山のタイムリミットまでなかなか視界が開 けなかったようですが、一瞬のシャッターチ ャンスにかけた作者の強い思いがほんの少し 雲をどかせたのでしょう。まとわりついた雲 を突き抜けるように小槍を従えた槍ヶ岳が姿 を現わしました。まさに粘り勝ちといえます。

 

いずれも非常にレベルの高い作品ばかり。見入ってしまうすばらしい山岳風景だ。しかし、誰にでもチャンスがあるのが、ヤマケイ・フォトコンテストのいいところ。写真が好きな人や、おもしろい山の写真が撮れた人、これから山に登る予定のある人は入賞者たちの作品を参考に気軽に応募してほしい。

応募についての詳細&応募用紙は、『山と溪谷』2021年1月号~8月号に掲載されている。

『山と溪谷』2021年7月号

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特集「槍・穂高大全」
 ・第1部 不朽の名ルート
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発売日:2021年6月15日  価格:本体価格1,320円(税込)
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https://www.yamakei.co.jp/products/2821901560.html

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プロフィール

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。

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From 山と溪谷編集部

発刊から約90年、1000号を超える月刊誌『山と溪谷』。編集部から、月刊山と溪谷の紹介をはじめ、様々な情報を読者の皆さんにお送りいたします。

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