「早出早着」の徹底を! 日没後の救助要請が続く。 島崎三歩の「山岳通信」 第83号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2017年8月21日に配信された第83号では、県内で起きた14件の遭難について触れている。本格的な夏山シーズンに突入したアルプス山域では日没後(およびその前後)の救助も多く、自分に適した登山計画を呼びかけている。

 

8月21日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第83号では、7月31日~8月6日の間に起きた山岳遭難の遭難事例が掲載されている。以下に抜粋・掲載する。

 

7月31日~8月6日の信州の山岳遭難現場より

7月31日~8月6日の間に長野県内で起きた山岳遭難は以下の14件でした。

  • 7月31日、北アルプス白馬鑓ヶ岳で、58 歳の男性がテント場付近で足を踏み外して転倒し滑落。腰椎圧迫骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 8月1日、中央アルプス木曽駒ヶ岳で、68 歳の女性が下山中に登山道を外れ、道に迷う山岳遭難が発生。駒ヶ根署員などの捜索により発見救助された。

  • 8月2日、北アルプス間ノ岳で、57 歳の男性が間ノ岳付近の稜線から何らかの原因により滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助されたものの、頭部外傷により死亡が確認された。

  • 8月2日、北アルプス横通岳で、54 歳の男性が大天井岳から常念岳に向かう途中で道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。県警救助隊員などにより発見・救助された。

  • 8月3日、南アルプス易老岳で、67 歳の男性が易老岳に向けて登山口を出発後まもなく何らかの疾患を発症し、意識消失となる山岳遭難が発生。山梨県防災ヘリが救助したものの、その後死亡が確認された。

  • 8月3日、中央アルプス南木曽岳で、72 歳の男性が山麓避難小屋から山頂に向けて登山中、足を滑らせ転倒し、左大腿骨骨折の重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 8月3日、北アルプス蝶ヶ岳で、79 歳の男性が蝶ヶ岳に向けて登山中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。遭対協により救助された。

  • 8月4日、北アルプス常念岳で、61 歳の女性が常念岳から下山中に王滝ベンチ付近においてスリップし滑落、右足首骨折などの重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリで救助された。

常念岳一ノ沢で発生した遭難現場の状況
(写真提供:長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月8日付)
  • 8月4日、北アルプス前穂高岳で、57 歳の女性が重太郎新道を下山中に浮石に乗ってバランスを崩し滑落、頭部裂創などの重傷を負う山岳遭難が発生。県警ヘリにより救助された。

  • 8月4日、北アルプス針ノ木岳で、70歳の女性が針ノ木岳雪渓の下部で転倒し頭部や顔面などを負傷する山岳遭難が発生。付近の山小屋従業員により救助された。

  • 8月5日、北アルプス七倉岳で、76 歳の男性が船窪小屋から七倉尾根を七倉登山口へ下山中に、何らかの原因により滑落するする山岳遭難が発生。県警山岳救助隊が発見救助し、県警ヘリにより収容されたものの、多発外傷より死亡が確認された。

  • 8月6日、北アルプス針ノ木岳で、36歳の男性がテントで宿泊中に誤って熱湯を足にこぼし、右足甲部熱傷を負い行動不能となった。県警ヘリで救助された。

  • 8月6日、八ヶ岳連峰双子山で、子どもを含む家族6 名(3 歳から61 歳の男女)が日帰り予定で入山したが、下山中に日没により道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署員により救助された。

  • 8月6日、北アルプス北穂高岳で、67歳の男性が大キレットを北穂高岳に向けて登山中、疲労のため歩行困難となる山岳遭難が発生。遭対協隊員が出動し、付近の山小屋へ収容した。男性はその後、症状が回復し、7日に自力で下山した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月1週は、14件の遭難が発生しました。そのうち道迷いが3件、疲労が2件発生しましたが、それらの遭難の内容を見ると、ほとんどが日没近くもしくは日没後に救助要請をしており、長時間の行動により極度の疲労に陥ったり、夜間や視界不良の中、無理に行動を続けたりして遭難しているケースが多く見受けられました。

登山の常識の一つとして「早出早着」という言葉がありますが、これは早朝早いうちに行動をはじめ、午後3時頃までにはその日の行動を終えるというものです。

「早出早着」は無計画な長時間行動を避け、時間及び体力に余裕を残すとともに、午後の落雷被害のリスクを避けるといった、古くから登山者が経験を積み重ね、身に着けた安全登山のための行動パターンです。皆さんも「早出早着」を実践して余裕のある行動を心がけてください。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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