南アルプス・鳳凰三山 豪快な滝をめぐり、タカネビランジ咲く岩稜と砂地の稜線が続く頂きを踏破する
南アルプスの北西部に位置する鳳凰三山。比較的アクセスが良く、難所も少ない南アルプス入門コースです。滝巡りからはじまり、稜線の縦走路では、北岳をはじめ、甲斐駒ヶ岳や富士山などの展望が広がる気持ちのいい山歩きが楽しめます。
標高約2800mの三座を連ねる鳳凰三山は、南アルプスの入門コースとして名高い山です。ドンドコ沢の深い原生林と水量あふれる滝や沢をめぐり、富士山や北岳、甲斐駒ヶ岳などを見渡せる縦走コースを周回する変化に富む登山ルートを紹介します。入門コースとはいえ、高低差は1800m以上あり、十分な体力が必要です。
出発点となるのは青木鉱泉。キャンプ場があり、水も豊富です。標識にしたがってドンドコ沢コース(川沿いコース)に入ります。護岸工事中のため迂回ルートを通り、樹林帯の中、何度か渡渉をへて、約2時間ほどで南精進ヶ滝の分岐へ。
急なロープを降りると南精進ヶ滝の展望台です。ここから登山道へ復帰できます。さらに岩や木の根をつかんでの崖沿いや露岩帯の急登が続きます。白糸ノ滝へはピストンで戻り、いよいよ五色ノ滝へ。最も水量が多く、豪快にほとばしる姿に一服の清涼感を感じます。
やがてなだらかな川沿いの登山道から地蔵岳のオベリスクが見えはじめると、まもなく鳳凰小屋です。
翌朝、鳳凰小屋から地蔵岳をめざします。樹林帯をぬけると花崗岩の白砂の急斜面で、砂地の斜面は足がめり込んで力を吸われて体力の消耗が激しいです。登り切ったところが賽ノ河原です。
地蔵岳の顕著なオベリスクが目の前にそびえます。岩陰にはピンクや赤紫の花をつけたタカネビランジの群落が点々とし、彩りを添えます。オベリスク上部からは見えるはずの甲斐駒ヶ岳は残念ながらガスの中でした。
赤抜沢ノ頭から岩稜とハイマツ帯の間の砂地をぬけ、観音岳へ登り返します。岩稜帯を登ると観音岳頂上です。振り返る地蔵岳の雄姿が圧巻です。
岩稜の間の砂地に伸びる登山道を進むと薬師岳です。やや平坦な砂地の頂上広場から中道コースで下ります。ほぼ樹林帯の下りで、歩きやすい道ですが、十分に長いです。最後に林道歩きもあり、中道コース登山口からさらに青木鉱泉の駐車場まで戻ります。
プロフィール
奥谷晶
30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。
今がいい山、棚からひとつかみ
山はいつ訪れてもいいものですが、できるなら「旬」な時期に訪れたいもの。山の魅力を知り尽くした案内人が、今おすすめな山を本棚から探してお見せします。