上高地から槍ヶ岳登山の後は、新平湯温泉藤屋の囲炉裏端で奥飛騨かかさま料理を堪能

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ひとり気ままに山と温泉を楽しむ温泉登山。登山前後に泊まりたい至福の温泉宿を紹介します。第20回は槍ヶ岳に登り、下山後は新平湯温泉の旅館で飛騨の名物料理に舌鼓。

写真・文=月山もも

 

飛騨山脈南部に位置する、鋭く尖った山頂部が印象的な槍ヶ岳。

夏休みを利用し、上高地から往復する槍沢ルートで、槍沢キャンプ場に2泊して登ることにしました。

 

雲一つない青空の下、穂先を目指して歩く

テント泊装備を担いで早朝に上高地を出発。上高地から横尾までは約3時間、ほぼ平坦な道が続きます。横尾から先は沢沿いを緩やかに登り、槍沢ロッヂでテントの受付を済ませてから槍沢キャンプ場へ。

小屋からは30分ほどかかりますが、トイレも新しくなり快適なキャンプ地です。今回はここに2泊するのでなるべく平らで快適そうな場所を選んで設営し、ロッヂで買ったビールを飲みつつ夜を待ちます。この日は早めにシュラフに入り、翌朝は夜明けと同時に出発。

ラッキーなことに雲一つない好天です! 始めのうちは日陰を涼しく歩けたのですが、しばらくすると遮るものがなくなり、肌を刺すような日差しの中、歩を進めることに。

だんだんと傾斜も急になり、体力を削られますが、ハイマツ帯を過ぎてガレた上りに入るとついに槍ヶ岳が姿を現しました。

その姿に励まされながら槍の肩まで歩き、ヘルメットを装着して最後の岩場を登ります。山頂に着いても雲はまだ湧いてこず、360度の絶景が楽しめました。

登頂後は元来た道を戻って槍沢キャンプ場でもう1泊し、翌日に上高地に下山します。

 

Wi-Fi利用も可能な部屋で幸せなお昼寝タイム

上高地からバスで平湯温泉に向かい、新穂高ロープウェイ行きのバスに乗り換えて古屋ヶ根(ふるやがね)バス停で下車し、目の前にある旅館藤屋にチェックイン。

案内いただいたのは2階の8畳間で、既に布団が敷いてありましたが1人なのでそれでもスペースは十分にあります。

入室時から室内はエアコンで快適な温度に調節されており、トイレ、洗面所、冷蔵庫などの設備もしっかり揃っていてWi-Fiも利用可能です。テント泊装備を担いで疲れていたので、昼から布団でごろごろできて幸せでした。

 

ぬる湯とあつ湯の交互浴が最高に気持ちいい

浴室は男女別の大浴場と、空いていればいつでも入れる貸切露天風呂が2つあり、いずれも夜通し利用可能です。

まずは大浴場へ。温度の異なる源泉を混ぜ合わせて入浴に適した温度にしているそうですが、内湯には2つの浴槽があって大きめの浴槽は熱め、小さい浴槽は人肌のぬる湯なのです。この2つの浴槽を行ったり来たりして交互浴を楽しむのが本当に気持ちよくて、かなり長時間浸かってしまいました。

大浴場にも露天風呂がついており、こちらは熱めなので早朝に入ると気持ちよかったです。

貸切露天風呂は外にあり、受付で鍵を借りて向かいます。

岩で造られたこぢんまりとした露天風呂ですが、1人で入るには十分すぎる広さです。プライベート空間での湯浴みを存分に楽しみながら、夕食の時間を待ちます。

 

夕食には飛騨牛朴葉焼き、朝食には朴葉味噌

食事は朝夕共に食事処でいただきます。それぞれのテーブルに囲炉裏が付いていて、席と席の間も広くゆったりとしています。

お酒は飛騨高山の地酒「久寿玉」を冷酒で。お刺身の岩魚は本当に新鮮で、お酒が進んでしまいます。

メイン料理は「飛騨牛の朴葉焼き」です。「朴葉味噌」で有名な良い香りのする朴葉の上に飛騨牛を載せて焼くのですが、朴葉が乾燥した茶色い葉ではなくフレッシュな緑色の葉だったことに驚きました。飛騨牛は柔らかく、少し焦がした味噌と一緒にいただくとえも言われぬおいしさ。

鱒の笹包みは、朴葉とはまた違った笹の良い香りがついていて爽やかな香りと共にいただきます。

天ぷらも揚げたてで提供いただきました。海老の天ぷらに青じそが巻いてあったのが、一工夫あって気に入りました。

冷たいお蕎麦をいただいた後は、囲炉裏にかかっていた鍋料理を。予約時に鴨鍋・熊鍋・地鶏鍋・ぼたん鍋の4つから選べたので、猪肉を使った「ぼたん鍋」をお願いしていました。

やや甘めの濃厚な味付けで、猪肉のほか、きのこなどがじっくりと煮こまれていました。鍋と一緒に〆のご飯もいただき、デザートはさっぱりとメロンを。ごちそうさまでした!

 

朝食にはもちろん、飛騨高山の名物朴葉味噌が。これだけでご飯が何杯でも食べられそうです。

温泉卵や冷や奴、きんぴら牛蒡などのおかずもおいしく、朝からお腹いっぱいになりました。

奥飛騨のおふくろの味ということで「かかさま料理」と呼ばれている藤屋さんの食事、本当においしいので多くの方に味わっていただきたいです。

 

*紹介した食事、サービスは2020年8月取材時の内容です。
 

旅館藤屋

料金:1泊2食付き/1室1名利用15,400円~、2名14,300円~

住所:〒506-1432 岐阜県高山市奧飛騨温泉郷一重ヶ根1757-1
電話:0578-89-2714
HP:http://www.okuhida-fujiya.com/

 

プロフィール

月山もも

山と温泉を愛する女一人旅ブロガー。山麓の温泉宿を一人で巡るうちに「歩いてしか行けない温泉宿」に憧れを抱き、2011年から登山を始める。ゆるハイクから雪山登山まで、テントも一人で担ぐ単独登山女子。 ブログ「山と温泉のきろく」https://www.yamaonsen.com/に、温泉と登山のすばらしさについて綴っている。山と温泉に魅せられる人を増やすことが、人生のよろこび。著書に『ひとり酒、ひとり温泉、ひとり山』(KADOKAWA)。

ひとり温泉登山

山と温泉を愛する月山ももさんによる月1連載。登山前後に入りたい極上の温泉宿をご紹介します。

編集部おすすめ記事