居住性が高い登山用テントで快適なソロテント生活を!ライペン(アライテント)/ドマドーム1プラス|高橋庄太郎の山MONO語りVol.89

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高橋庄太郎の山MONO語り

山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回のアイテムは、ライペンの「ドマドーム1プラス」です。

文・写真=高橋庄太郎

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

新型コロナウィルスの感染予防もあり、「密」を避けられるテント泊は、今年も継続して人気。この機にテント泊に挑戦したいと考える人も多かったようだ。

少々手前味噌になるが、僕は今年7月、『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)という本を出した。その冒頭でも紹介しているが、現代のテントの主流は“ダブルウォール×自立型”のタイプである。少し詳しく説明すれば、インナーテント(テント本体)とフライシートで居住空間の間に2枚の布地による壁ができるタイプが“ダブルウォール”。ポールをインナーテント(もしくはフライシート)に組み合わせるだけで立体化するのが“自立式”。それらを組み合わせたのが“ダブルウォール×自立型”タイプというわけだ。シングルウォールタイプや非自立型タイプにもメリットはあるが、誰にでも使いやすいとはいいにくい。

今回ピックアップするライペン「ドマドーム1プラス」は、まさにそんな“ダブルウォール×自立型”タイプである。さらにいえばそのなかでも“居住性の高さ”に焦点を当てたモデルだ。アライテントのブランド、ライペンには以前から「ドマドーム」という定番シリーズがあり、ドマドーム1プラスはその流れに沿った最新モデルとなっている。

 

まずは構成パーツを確認

では、ドマドーム1プラスを構成する各パーツを確認していこう。以下は収納時の状態だ。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

右がポール、中央がインナーテントとフライシート、左がペグ。これらが主要パーツで、その間の赤い箱は付属品のシームコート液である。

次の写真は収納袋から取り出した状態だ。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

左上がインナーテントとフライシートで、そのなかの左がフライシート、右がインナーテント。右上が同じ長さのもの3本で構成されたポール(フレーム)。左下がペグで、13本。右下はテントの防水性を高めるために使用するシームコート液であり、ポールが破損したときの応急処置に使う金属スリーブもいっしょに撮影している。

インナーテントとフライシートの収納サイズは32×直径19㎝だが、収納袋にはかなり余裕があり、ストラップで圧縮すれば、それ以上にコンパクトにできる。また、ポールの収納時の長さは38㎝だ。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

重量はインナーテント、フライシート、ポールの合計が1,680g。ペグが実測で185g。ペグは少々曲がっても折れはしない中太のジュラルミン製だが、好みによってはより細くて軽量なタイプに変更して使ってもよいだろう。

ドマドーム1プラスは、モデル名に「1」という数値がついている通り、基本的には1人用だ。1人用で重量1,680gは、現代の山岳用テントとしては少々重めともいえる。その理由は、ドマドーム1プラスの持ち味が「居住性の高さ」にあるからなのだが、そのあたりはこれから詳しく説明していきたい。

 

設営した状態を確認。前室の構造に注目

ドマドーム1プラスは、いわゆるスリーブ式のテントで、インナーテントにつけられた細長い袋状の部分(スリーブ)にポールを通して設営していく。立体化したインナーテントの上にフライシートをかけた後は、バックルで留めるだけだ。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

ただし、“前室”の部分のみ、ポールの末端はインナーテントとフライシートのリングに引っ掛ける仕組みになっている。

さて、こちらはインナーテントにポールを組み合わせて自立させた状態だ。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

一般的な山岳テントとは異なり、出入口付近が少し湾曲しているように見えるはずだ。

次に、フライシートをかけた状態である。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

ドマドーム1プラスのインナーテントは長方形ではなく、変形の六角形だが、その形状がフライシートをかけた様子からもイメージできる。

そこからフライシートの出入り口を広げたものが、以下の状態だ。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

インナーテントの出入り口の前にフライシートによって屋根が作られた、いわゆる“前室”ができている。だが、その前室の構造は、後から説明するように通常の山岳テントとは少し異なる。

こちらは左側のフライシートをまくり上げた状態。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

この角度からはわかりにくいが、まくり上げた左側の部分も前室として利用できる。一方、右側の部分は前室ではなく、インナーテントの居住空間。右側はフライシートをまくり上げることもできない。

文字だけでは理解しにくいと思われるので、別の角度からのカットもお見せしよう。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

これでわかるだろうか? このように出入り口の左側は前室の一部で、右側はインナーテント内部の居住空間というわけなのである。

次はインナーテントを横倒しにして、床の部分を正面にしてみたときのカットだ。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

まるで角が生えた鬼のような形状である。じつはライペンには「オニドーム」というシリーズもあり、この連載でも数年前に紹介済みだが、オニドームは左右の“角”の部分がどちらもインナーテント内の居住空間になっていたのに対し、ドマドーム1プラスは片方が前室、もう片方が居住空間になっているのが大きく異なる。また、従来のドマドームはインナーテントの前面がすべて前室となっていたが、最新作のドマドーム1プラスは、前室は一方のみ。その点がこれまでのドマドームシリーズとの最大の違いなのである。

その様子をもう少しわかりやすくすると……。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

ピンクが居住空間で、ブルーが前室だ。ブルーの部分の一部はシートで覆われているが、この部分は前室として使う際に地面が露出していないスペースとなっている。ドマドーム1プラスのインナーテントの長辺は200㎝。短辺の短いほう(上の写真の左側)は75㎝、短辺の長いほう(上の写真の右側)は135㎝。フライシートの前室の出入り口(ファスナーで閉じられる部分)の長さは110㎝だ。

ところで、大半の山岳テントには前室があり、わざわざドマドーム1プラスの前室部分について、これほど説明する理由はないと思われる人もいらっしゃるかもしれない。だが、オートキャンプ用などのテントとは違い、山岳用テントの前室はフライシートを引っ張って屋根としただけのものが普通であり、ドマドームシリーズのように“ポールでフライシートを支えている”タイプはあまり見られないものだ。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

しかもインナーテントと同じ高さ(104㎝)を備えている。これだけの広さと高さを備え、しかもポールによって確実に立体化されている前室部分を持つ山岳用テントは皆無といってよい。

テントの火災の恐れを考えれば推奨できることではないが、極度の悪天候時はフライシートを閉めたままでも調理ができなくもなく、少なくとも一般的な前室のテントよりは安全性が高い。前室にはシューズや調理器具などのテント内にはあまり置きたくないものをたっぷり置くことができ、しかも他のテント以上に雨濡れから守られている。小雨程度であれば、出入り口を開けたままでも雨があまり吹き込まず、解放的な気分で野外生活を送ることも可能だ。従来の山岳用テントには見られなかった、非常に実用的で快適に使える前室なのである。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

3本のポールはそれぞれをガイライン(張り綱)で補強することができ、2本のポールを使ったテント以上に強風、豪雨にも耐えられる。ドマドームはあまり軽量なテントではないものの、居住性と耐候性に関してはすばらしいテントといえるだろう。

 

実際に中に入ってみると…

ここからは居住スペースと前室について、実際の使用時の様子をお見せしていく。

こちらは出入り口から見て、右側。つまり、居住スペースが広い側だ。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

寝袋の両サイドに荷物を置くことができ、広々と使用することができる。

それに対し、こちらは左側。居住スペースが狭まった側である。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

幅50㎝ほどのマットを敷いても25㎝程度の余裕があり、バックパックなどを置くことができる。一人用のテントとしては十分すぎるサイズ感だ。

天井部分にはメッシュのポケット。メガネのような壊れやすいものを保管するのに便利だ。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

ヘッドランプを下向きにして入れれば、ランタン代わりに内部を照らすこともできるだろう。

そして、重要な前室部分がこちら。フライシートを閉め切っても、余裕をもってシューズを置くことができる。フライシートが高く立ち上がっているため、シューズがフライシートに付着した結露で濡れることも少ないのがいい。大げさな言い方をすれば、このスペースは、もはやインナーテント内の居住空間の前にできた別室のようである。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

この部分は地面が露出しており、このテントのモデル名である「ドマ(土間)」の由来となっている。

一方、「土間」の横にはインナーテントから延びた布地で覆われたスペースも作られている。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

ここは地面が露出した土間のスペースと使い分け、水筒やカップ、クッカーなどのあまり汚したくないものを置くのに都合がいい。

ドマドーム1プラスのインナーテントの出入り口は、メッシュ素材との二重構造。土間に置いたものが透けて見える。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

メッシュにしておけば通気性が高まり、蒸し暑い時期は涼しく過ごせる。

前室部分のフライシートは、上だけを開くこともできる。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

風が吹いていたり、雨が降っていたりするときでも、内部に影響がない程度に広げておけば、換気性を上げることができる。

インナーテント内の奥の下側にはベンチレーターがあり、さらに通気性を高められる。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

ベンチレーターのパネルはヒモで縛って留める方式だが、じつはきれいに留めるのはけっこう手間取る。ヒモで縛らなくてもパネルは開けたままにできるので、無理に留める必要はなさそうだ。

日が暮れて、山中の夜を迎えた。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

この日は夜半から雨が降る天気予報になっており、テントの耐候性をチェックするには好都合だった。

 

雨の夜を過ごした翌朝。果たして防水性は?

そんなわけで、翌日。朝までに雨はやんだものの、激しくテントを叩いた水滴により、フライシートは全面的に濡れていた。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

フライシートの撥水性は十分で、水分は内側に浸透していることもない。もっとも、裏側は内部の湿気による結露によって少々濡れていたが、これはどんなテントでも避けられないことである。

インナーテントのフロア部分の生地は防水コーティングされており、バスタブのようにフロアから10㎝以上も立ち上がっている。そのために地面から泥とともにはね上げられた水が内部に浸透してくるのを防いでいる。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

防水コーティングの生地の上にある薄いイエローの生地の上まで一部の水滴が付着しているが、テント内部を濡らすほどの量ではなかった。

次からの写真は、このときのテストではなく、別の場所で使ってみたときのものだ。さらに雨が激しいときのもので、光の関係でわかりにくいかもしれないが、前室は池のようになり、マットを敷いていたフロア部分の下にも数㎝の水が溜まっていた。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

だが、内部への浸水は一切なし。もっとも、フロアに小さな穴でも開いていたら水の浸透は避けられないので、傷まないように注意して使いたい。

また、糸の縫い目が小穴となっている縫製箇所も水が浸透していきやすい場所であるが、ドマドームシリーズを含むライペンのモデルは自分で縫製箇所の防水処理を行なわねばならず、そのためにシームコート液が付属している。このシームコート液は乾燥までに30~60分ほどかかるため、防水処理は自宅で行っておくことが望ましい。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

ドマドーム1プラスは防水性に優れたテントではあるが、あくまでも自身で防水処理を行ったうえでの耐候性であることを忘れてはいけない。自分で処理するのは正直なところ面倒で、他メーカーのように発売前に処理されているとラクだとは思う。だが、自分のテントにより愛着を持つための“儀式”と考えれば、楽しく作業ができるだろう。

 

まとめ:居住性が高く、山中でもテントに快適性を求める人におすすめ!

以前のオニドームの記事でも書いたのだが、僕は以前からドマド-ムシリーズを愛用していた。軽量性よりも(自分で持ち運べる重量の範囲という前提で)居住性を重視する僕にとって、最も愛するテントであるといっても過言ではない。だが問題は、1人用はインナーテントの奥行きが75㎝で荷物を置くには少し狭く、2人用は奥行きが120㎝もあって、今度は広すぎるということだった。

高橋庄太郎の山MONO語り・ライペン「ドマドーム1プラス」

しかしドマドーム1プラスは、狭い部分の奥行きは75㎝と従来の1人用と変わらないものの、広い部分は2人用と同じ120㎝もあり、非常に使いやすいサイズなのである。反対に前室は狭くなるが、これまでのモデルの広い前室は便利で快適ではあるものの、あれほど大きくなくても十分だとも思っていたりもした。つまり、ドマドーム1プラスは、1人用と2人用のドマドームのいいところ取りである。また、方向性が似たモデルであるオニドームには、出入り口側の長辺の幅が狭く、内部にモノを置きにくいという弱点があったが、その問題もドマドーム1プラスには存在しない。もっとも、その代わり、オニドーム1よりもドマドーム1プラスのほうが重量はかさむのだが……。

ドマドーム1プラスの本年の生産数は限定されているが、僕はひとつ入手できた。これから大いに活躍してくれそうである。山中でもテントに快適性を求める人に、ぜひ使ってみてほしい。

 

今回のPICK UP

ライペン/ドマドーム1プラス

ライペン/ドマドーム1プラス

価格:56,100円(税込)
重量:1680g(フライシート、本体、フレーム)

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プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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