日頃のトレーニングと、ゆとりある計画を立てることの大切さの再認識を 島崎三歩の「山岳通信」 第240号

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2021年10月15日に配信された第240号では、引き続きトレーニング不足の登山者が疲労で遭難するケースが多いことについて言及。日頃のトレーニングの大切さと、ゆとりある計画を立てることを推奨している。

 

10月15日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第240号では、期間中に起きた15件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 10月4日、八ヶ岳連峰赤岳で、2人パーティで入山した83歳の男性が山小屋に宿泊中に心肺停止状態となり、死亡が確認された。

  • 10月4日、八ヶ岳連峰の赤岩の頭で、2人パーティで入山した74歳の男性が、赤岩の頭付近を桜平方面に下山中、突起物に足を引っ掛け、足を負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊が出動して男性を救助した。

  • 10月4日、塩尻市宗賀地籍の山林内で、きのこ採りのために2人パーティで入山した80歳の女性が、山中で転倒して滑落、行動不能となる山岳遭難が発生。松本広域消防救急隊員が出動して女性を救助した。

  • 10月5日、南アルプスの奥茶臼山で、単独で入山した65歳の男性が、奥茶臼山方面へ向かったまま行方不明となる山岳遭難が発生。8日、南アルプス前尾高山付近において、捜索していた下伊那地区山岳遭難防止対策協会救助隊が男性を発見し、県警ヘリで搬送したものの死亡が確認された。男性は滑落した模様。

  • 10月5日、八ヶ岳連峰の高見石で、3人パーティで入山した48歳の女性が、白駒池から高見石に向けて登山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。佐久広域消防救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 10月5日、北アルプスの横通岳で、単独で入山した68歳の男性が、一ノ沢から大天井岳に向けて登山中、体調不良のため行動不能となる山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員及び山梨県消防防災ヘリが出動して男性を救助した。

  • 10月6日、上高井郡高山村牧地籍の山林内で、きのこ採りのために単独で入山した64歳の男性が、帰宅せず行方不明となっていたものの、7日に警察官が滑落・負傷してい男性を発見・救助した。

  • 10月6日、八ヶ岳連峰の美濃戸南沢で、単独で入山した27歳の女性が、赤岳から美濃戸南沢を下山中に道に迷い、装備不足により行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 10月8日、北アルプスの涸沢で、単独で入山した51歳の男性が、涸沢から上高地方面に下山中に転倒して負傷し行動不能となる山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊員及び長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動し、男性を救助した。

  • 10月9日、10月初旬から単独で南アルプス鋸山周辺に入山した72歳の男性が、鋸岳方面に向かったまま行方不明となっていることがわかった。

  • 10月9日、単独で八ヶ岳連峰の阿弥陀岳方面に入山した61歳の男性が、帰宅せず行方不明となっている。

  • 10月9日、南アルプス小河内岳で、単独で入山した76歳の男性が、予定を過ぎても帰宅しなかったことから飯田警察署員が出動して捜索。疲労により下山予定日に下山できなかった男性を発見・救助した。

  • 10月10日、北アルプスの燕岳で、7人パーティで入山した58歳の女性が、山小屋に宿泊中に2段ベッドから転落・負傷して行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

  • 10月10日、北アルプスの湯俣川で、6人パーティで三俣蓮華岳に向けて入山した60歳の男性が、湯俣川沿いを登山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助したものの、その後死亡が確認された。

  • 10月10日、北アルプスの前常念岳で、3人パーティで入山した29歳の男性が、三股へ下山中に疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス・前常念岳の遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)10月11日付

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

10月2週は、15件の山岳遭難が発生しました。このうち死亡遭難が3件、行方不明遭難が2件発生しています。秋の紅葉シーズンとなり、登山やハイキングにはちょうど良い季節となりました。しかし、登山は自然を相手にするスポーツのため、常に危険が伴うことを忘れてはいけません。普段、トレーニングなどをされていない方が、いきなり重いザックを背負い、5、6時間の登山道を歩くことは、非常に身体に負担が掛かり、転倒や滑落のほか、発病や疲労による行動不能遭難の原因になります。日頃からトレーニングを行うとともに、初心者の方は少しずつステップアップを、経験者の方は、初心に返り、ゆとりある計画を立てましょう。なお、長野県の登山を計画する際には、「信州山のグレーディング」も参考にしてください。

県内の標高が高い山域では、雨がみぞれになった山域もあり、いわゆる「気象遭難」に注意が必要です。山岳地帯では、救助を要請しても実際にヘリや救助隊が到着するまでには、相当の時間を要します。アクシデントに遭遇し、行動不能になった場合でも、その場で一晩を過ごせるだけの最低限の装備(シェルター、防寒具、コンロ、非常食など)を携行するようにしましょう。

 

長野県内入山注意報発表中

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため添付の「入山注意報(9月22日付)」を発表しています。以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

編集部おすすめ記事