パーティ登山ではお互いに協力し合うような登山を行いましょう 島崎三歩の「山岳通信」 第263号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年6月2日に配信された第263号では、パーティ登山中の遭難事故について言及。パーティ登山の利点を損なうことのないように、お互いに協力し合う登山を促している。

 

6月2日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第263号では、期間中に起きた7件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 5月22日、戸隠連峰の高妻山で、8人パーティで入山した66歳の女性が、下山途中にバランスを崩して約200メートル滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

戸隠連峰高妻山での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)5月23日付

  • 5月22日、北アルプスの前穂高岳で、4人パーティで入山した47歳の女性が前穂高岳から下山中に滑落して負傷。23日に行動不能となったため、県警ヘリで女性を救助した。

  • 5月24日、北アルプスの涸沢で、単独で入山した64歳の男性が、下山中に岩につまずいて転倒し負傷する山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して、防災ヘリで男性を救助した。

  • 5月26日、北アルプスの燕岳で、単独で入山した62歳の男性が、合戦尾根を下山中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。救助要請があったため安曇野警察署山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 5月28日、北アルプスの常念岳で、2人パーティで入山した61歳の男性が、常念岳方面へ向けて登山中に行方不明となる事象が発生。29日に北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員と安曇野警察署山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 5月29日、南佐久郡南牧村の飯盛山で、2人パーティで入山した67歳の女性が、飯盛山山頂から下山中にバランスを崩して転倒、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 5月29日、佐久市志賀地籍の岩場で、8人パーティでクライミングのため通称・ひなたエリアクライミングをしていた19歳の男性が、疲労により約3メートル滑落して負傷する山岳遭難が発生。消防署員が出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

5月3週は1件の遭難が発生しました。遭難現場である高妻山山頂直下は、約300メートル以上もある急斜面が続く登山道で、いまだに山の斜面には雪が残っています。このような場所で一歩足を踏み外すと、残雪上を止まることなく簡単に数百メートル滑落し、最悪の場合、命を落としてしまう危険性があります。
また、下山時は、登りに比べて疲労が蓄積しやすく、集中力が散漫になり、思い掛けないところでつまずいたり、ルートを誤る等のリスクがあります。下山中はこれらのリスクを念頭に、安全登山を心掛けましょう。
5月から6月にかけては、山菜採りシーズンとなります。山菜採りに行く際は、山に入る意識を持ち、行き先や帰宅時間を家族等へ知らせるとともに、携帯電話・雨具・食料などの装備を携行しましょう。また、山菜採りに夢中になり過ぎて危険な斜面等に入り込み、自分の命を落とす事案が毎年のように発生していますので注意しましょう。

5月4週は6件の遭難が発生しました。このほか、山岳遭難には至っていませんが、山菜採り中に「仲間とはぐれてしまった」、「下山中、疲労で足がつり動けない」などの通報がありました。いずれも、すぐに同行者と合流することができたり、少し休憩をして回復したりしたため、大事には至りませんでしたが、このような場合でも油断は禁物です。
4週の遭難では、パーティで登山中、別々に行動し、仲間のうち一人が道に迷う遭難がありました。パーティ登山は、ペースや体力などがそれぞれ異なるため、自分のペースで歩けないストレスがあるかもしれませんが、山頂に到着した喜びや美味しいご飯を共有できるなど、単独登山では味わえない楽しさがあります。また、万が一トラブルに遭遇した際は、お互いに協力し合うことができるほか、怪我などで遭難した場合には、仲間が通報することにより、早急な救助活動につながる場合があります。パーティで行動する際は、パーティ登山の利点を損なうことなく、下山まで安全に行動をしましょう。

県内は、梅雨前線等の影響により、天気予報も急に変化することがあります。最新の天気予報を確認し、無理のない登山計画を立て、慎重な判断をしましょう。

 

長野県内入山注意報発表中

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため添付の「入山注意報(5月24日付)」を発表しています。以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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