比較的危険性の少ない登山道上でも足下に注意を払い事故のない登山を 島崎三歩の「山岳通信」 第273号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年8月18日に配信された第273号では、比較的危険性の少ない下山中の登山道上で「転・滑落」「転倒」が多いことを説明。下山するまで油断せず、注意を払って慎重な行動を心掛けるよう促している。

 

8月18日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第273号では、期間中に起きた20件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 8月8日、八ヶ岳連峰の赤岳で、4人パーティで入山した男性2名(46歳、5歳)および女性2名(45歳、8歳)が、赤岳から下山中に装備不足により行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員及び消防隊員が出動して4人を発見、救助した。
  • 8月9日、北アルプスの常念岳で、2人パーティで入山した79歳の男性が、一の沢登山口から常念岳に向けて登山中にバランスを崩して転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

常念岳での遭難現場の状況/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月15日付

  • 8月10日、北アルプスの奥穂高岳で、8月8日から単独で入山していた79歳の女性が、奥穂高岳を登山中に滑落。救助隊員が涸沢まで搬送後の10日に、収容された山荘で体調が悪化したため、県警ヘリで女性を救助した。

  • 8月10日、北アルプスの北穂高岳で、2人パーティで入山した62歳の男性が、北穂高岳から涸沢に向けて下山中に、バランスを崩し滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリで救助したものの死亡が確認された。

  • 8月10日、八ヶ岳連峰の大同心で、単独で入山した67歳の男性が、大同心付近を登山中に浮石につまずいて転倒し負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪広域消防特別救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 8月10日、八ヶ岳連峰の硫黄岳で、2人パーティで入山した48歳の女性が、赤岩の頭から下山中に浮石につまずいて転倒し、負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して救助した。

  • 8月11日、北アルプスの爺ヶ岳で、単独で入山した86歳の男性が、爺ヶ岳へ登山中に発病して行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して救助したものの死亡が確認された。

  • 8月11日、八ヶ岳連峰の横岳で、単独で入山した61歳の男性が山頂付近を登山中、疲労により足が痙攣し、歩行困難となる山岳遭難が発生。茅野警察署員、諏訪広域消防署員及び諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 8月11日、北アルプスの白馬乗鞍岳で、6人パーティで入山した72歳の男性が、白馬乗鞍岳を登山中に山頂付近で転倒して負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。12日に県警ヘリで男性を救助した。

  • 8月12日、北アルプスの北穂高岳で、3人パーティで入山した50歳の男性が、天気不良のため涸沢に向けて引き返していたところ、バランスを崩して転倒して行動不能となる山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊、長野県山岳遭難防止常駐隊が出動して男性を救助した。

  • 8月12日、北アルプスの白馬岳で、8月11日から2人パーティで入山していた50歳の男性が、白馬岳から下山中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊が出動して男性を救助した。

白馬岳での遭難現場の状況/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月15日付

  • 8月12日、北アルプスの赤岩岳で、2人パーティで入山した27歳の女性が、大天井岳から槍沢に向けて縦走中、赤岩岳~西岳の登山道上から滑落し行動不能となる山岳遭難が発生。13日に松本警察署山岳遭難救助隊、長野県山岳遭難防止常駐隊が出動して女性を救助した。

  • 8月13日、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで入山した55歳の女性が東鎌尾根を下山中に転倒して行動不能となる山岳遭難が発生。防災ヘリが出動して女性を救助した。

  • 8月13日、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで入山した10歳の男性が、槍ヶ岳から上高地に向けて下山中に体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

槍ヶ岳での遭難現場の状況/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月15日付

  • 8月13日、北アルプスの真砂岳で、2人パーティで入山した54歳の女性が、竹村新道を真砂岳から下山中に同行者とはぐれて道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊が出動して女性を救助した。

  • 8月13日、北アルプスの七倉岳で、単独で入山した77歳の男性が、七倉岳から下山中に滑落して行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊が出動して男性を救助した。

  • 8月13日、南アルプスの三伏峠で、2人パーティで入山した69歳の女性が、烏帽子岳から三伏峠へ向けて縦走中に転倒して行動不能となる山岳遭難が発生。飯田警察署山岳高原パトロール隊及び飯田広域消防本部救助隊が出動して女性を救助した。

  • 8月14日、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで入山した66歳の男性が、白馬岳に登山後に宿泊中の山小屋で持病の腰痛が悪化し、行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 8月14日、八ヶ岳連峰の根石岳で、単独で入山した50歳の女性が、本沢温泉から天狗岳に向かって登山中に根石岳付近で道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊、諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊が出動して女性を救助した。

  • 8月14日、黒姫山で、単独で入山した52歳の男性が、黒姫山を登山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。防災ヘリが出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月2週、死亡遭難2件含む20件の遭難が発生し、山域別では、北アルプスで13件、八ヶ岳連峰で5件発生しています。

県内の遭難発生状況は、14日現在で、前年比+25件、遭難者数+28名と大幅に増加し、その多くは、下山中の「転・滑落」「転倒」となっています。転倒・滑落の多くは、ハシゴや鎖が設置されているいわゆる「危険箇所」より、比較的危険性の少ない登山道上で発生しています。
これは、視覚的に危険性が明らかな危険地帯では、自然と緊張感が増して慎重な行動を心掛ける一方、危険性のわかりにくい登山道では、つい注意が散漫になり、油断してしまうことが原因の一つと考えられます。
木の根や岩へのつまずき、浮き石でのバランス崩し、濡れた岩でのスリップなど、僅かな不注意や気の緩みが遭難につながります。下山中に限らず、登山中でも漫然と歩くことなく、足下の状態に注意を払って慎重な行動を心掛けてください。

また、装備不足による行動不能遭難も発生しました。たとえ日帰り登山でも、ヘッドライト、防寒着、ビバーク装備は最低限携行しましょう。

8月は、長期休暇を利用して、遠方から山深い北アルプスや日帰りでアクセスのしやすい八ヶ岳連峰を訪れる登山者の中には、登山前日の深夜、あるいは当日早朝に自宅から登山口までの移動のため、十分な睡眠や休養を取らない方がいます。

その結果、登山中に疲労や体調不良で行動不能となるほか、不慣れな登山道で疲労によりバランスを失い転倒・滑落するといったケースが見受けられますので、登山を計画されている方は、事前の体調管理を徹底し、登山前日・登山後の日程も踏まえた上で、ゆとりのある日程を計画し、安全に登山を楽しんでください。

 

全国でコロナ急拡大!登山者のみなさまへのお願い

山小屋等では、安心して登山ができるよう従業員の健康管理をはじめ定員削減や間仕切設置など様々な感染防止対策に取り組んでいます。

登山者のみなさまは、登山前に自身の健康チェックをしっかり行うとともに、マスクなどの基本的な対策や事前予約を徹底し、急な営業休止などに備えて山小屋の営業状況をHPやSNS等で随時確認するようお願いします。

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長野県内入山注意報発表中

新型コロナウイルス感染症拡大防止のため添付の「入山注意報(7月12日付)」を発表しています。以下の資料の通り、入山を控えていただくエリアと、入山注意区域を発表しています。「入山注意」山域へ入山する際は、「登山者への5つのお願い(PDF)」を守ってください。

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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