「もしも」に備えた準備を万全にして、早出・早着の心掛けを 島崎三歩の「山岳通信」 第274号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年8月26日に配信された第274号では、「もしも」に備えた準備を万全にしておくことの大切さを説明。ヘッドライト・防寒着・ビバーク装備の携行と早出・早着を心掛けることを促している。

 

8月26日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第274号では、期間中に起きた13件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 8月15日、八ヶ岳連峰の蓼科山で、2人パーティで入山した55歳の女性が、下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊、諏訪広域消防本部特別救助隊が出動して防災ヘリで女性を救助した。

  • 8月15日、八ヶ岳連峰の縞枯山で、2人パーティで入山した76歳の女性と78歳の男性が、下山中に装備不足により道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員、諏訪広域消防特別救助隊員及び諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して、2人を発見・救助した。

  • 8月16日、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで白馬岳に向けて入山した50歳および13歳の男性が、登山中に天候不良により行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して2人を救助した。

  • 8月16日、北アルプスの岳沢で、2人パーティで前穂高岳に入山した23歳の男性2人が、下山中に道に迷う山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員及び長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して2人を救助した。

  • 8月18日、北アルプスの燕岳で、2人パーティで入山した60歳の男性が、合戦尾根を登山中に発病して意識を失い行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して救助したものの死亡が確認された。

  • 8月19日、北アルプスの涸沢で、2人パーティで入山した26歳の男性が、涸沢でテント泊中に体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊が出動して県警ヘリで男性を救助した。

  • 8月20日、北アルプスの槍ヶ岳で、単独で19日から入山していた23歳の男性が、北鎌尾根を登山中に滑落して行動不能となる山岳遭難が発生。警察本部山岳救助隊、大町警察署山岳救助隊、長野県山岳遭難防止常駐隊が出動して、21日に県警ヘリで男性を救助した。

長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)8月22日付
  • 8月20日、北アルプスの北穂高岳で、2人パーティで19日から入山していた51歳の男性が、奥穂高岳に向けて縦走中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊が出動して山小屋へ収容し、22日に警察本部山岳遭難救助隊及び長野県山岳遭難防止常駐隊が出動して、県警ヘリで男性を救助した。

  • 8月21日、北アルプスの白馬鑓ヶ岳で、単独で入山した48歳の男性が、白馬鑓ヶ岳に登山中につまずいて転倒して負傷する山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊が出動して最寄りの山小屋に収容し、22日に県警ヘリで男性を救助した。

  • 8月21日、南アルプスの甲斐駒ヶ岳で、単独で入山した54歳の女性が、甲斐駒ヶ岳から下山中にバランスを崩して転倒して負傷する山岳遭難が発生。伊那警察署員、南アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助部救助隊が出動して防災ヘリで女性を救助した。

  • 8月21日、御嶽山で、5人パーティで入山した55歳の男性が、御嶽山から黒沢口登山道へ下山中に足を滑らせ転倒・負傷する山岳遭難が発生。警察本部山岳救助隊、木曽警察署、地区山岳遭難防止対策協会救助隊が出動して男性を救助した。

  • 8月21日、八ヶ岳連峰の本沢温泉で、12人パーティで入山した72歳の女性が、山小屋に宿泊中に体調不良となり行動不能となる山岳遭難が発生。佐久警察署山岳高原パトロール隊及び佐久広域連合消防本部救助隊が出動して、22日に防災ヘリで女性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月3週、死亡遭難1件を含む13件の遭難が発生し、特に下山中における転倒・滑落遭難が後を絶ちません。滑落や転倒で救助要請する前に、体調不良を自覚していたり、小さなスリップや転倒を経験しているケースが見られます。このような登山中の異変やヒヤリハットを感じた場合には、気持ちを引き締め直したり休憩をとるほか、予定の行動を再検討することが遭難を回避する上でとても大切なことです。

また、夜間行動中に装備不足による行動不能や悪天候による道迷い等の遭難もありました。八ヶ岳縞枯山で発生した遭難は、夜間行動中に装備不足(ヘッドライト)と疲労により遭難した事案で、2日にかけて救助隊が地上から出動し、幸いにも2人とも無事に救助することができましたが、夜間に行動不能となった場合には、救助を待つ間に低体温症に陥り、最悪命を落としてしまうこともあります。
日帰りの登山であっても、最悪のケースを想定してヘッドライト・防寒着・ビバーク装備等を必ず携行するとともに、日没間際の行動を避け、早出・早着を心掛けましょう。

登山中に予期せぬ体調不良や怪我に見舞われることは誰にでも起こり得ることです。「もしも」に備えた準備を万全にし、登山前・登山中に自分自身の体調などを客観的にチェックして、安全に登山を楽しんでください。
新型コロナウイルス感染症拡大のため、登山を計画されている方は、体調管理を徹底し、山小屋の営業状況等を確認した上で、十分にレベル(体力・技術)を落とした山域選びと、慎重な計画・行動をお願いします。

 

全国でコロナ急拡大!登山者のみなさまへのお願い

山小屋等では、安心して登山ができるよう従業員の健康管理をはじめ定員削減や間仕切設置など様々な感染防止対策に取り組んでいます。

登山者のみなさまは、登山前に自身の健康チェックをしっかり行うとともに、マスクなどの基本的な対策や事前予約を徹底し、急な営業休止などに備えて山小屋の営業状況をHPやSNS等で随時確認するようお願いします。

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プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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