凍結路で致命的な転倒や滑落遭難を防ぐために装備および技術的な準備を 島崎三歩の「山岳通信」 第285号
長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年11月9日に配信された第285号では、本格的な冬山シーズンを迎えようとしている山の現状を説明し、凍結路で致命的な転倒や滑落遭難を防ぐための装備および技術的な準備をすることを促している。
11月9日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第285号では、期間中に起きた6件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
11月1日、長野市平柴地籍の旭山で、単独で朝日山観世音を訪れた72歳の男性が、下山中に道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。長野中央警察署山岳高原パトロール隊員及び長野市消防局中央消防署高度救助隊員が出動して男性を救助した。
11月2日、北アルプスの北穂高岳で、単独で北穂高岳に向けて南陵を登山中だった47歳の男性が、宿泊予定の山小屋に宿泊せず、行方不明となっていることを確認。北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して捜索したところ、男性を発見して県警ヘリで救助したものの死亡が確認された。男性は滑落した模様。
11月3日、上田市の独鈷山で、2人パーティで入山した62歳の女性が、独鈷山から宮沢コースを下山中に枯れ葉で足を滑らせて転倒負傷し、行動不能となる山岳遭難が発生。上田地域広域連合消防本部の消防署員が出動して女性を救助した。
11月5日、飯田市の風越山で、2人パーティで入山した69歳の男性が、風越山に向けて登山中に体調不良により意識不明となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して救助しましたものの死亡が確認された。
11月6日、北アルプスの赤岩岳で、単独で入山した20歳の男性が天狗のコルから西穂高岳に向けて登山中、技量不足により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

11月6日、阿智村の恵那山で、単独で入山した74歳の男性が、恵那山から広河原登山口に向けて下山中、バランスを崩して転倒・負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
11月1週は、6件の遭難が発生し、うち2件は死亡遭難です。
県内の標高が高い山域では、本格的な冬山シーズンを迎えようとしています。既に積雪がある山域もあり、ルートが雪で不明瞭になっているほか、凍結している場合もあります。入山にはアイゼンやピケルが必要になりますので、装備品のメンテナンスとともに、アイゼン歩行やピッケル操法を身に付け、致命的な転倒や滑落遭難を防ぎましょう。
各地の里山では、紅葉が一層深まり見頃を迎えていますが、ルートによっては落葉で登山道が非常に不明瞭になっているほか、滑りやすくもなっています。「ちょっと紅葉狩りに行こうかな」というような観光気分の延長で入山すると、思わぬ遭難やトラブルに遭う可能性がありますので、事前の下調べのほか、防寒衣(雨衣)やヘッドライト、食料などを携行しましょう。
山(自然)は美しくも過酷な場所です。少しの油断や判断ミスが、重大な遭難の原因となる場合があります。十分な下調べと装備品の準備を行い、自身や仲間の技量に見合った計画を立て、無理のない行動をしましょう。
北アルプス等の山域では、多くの山小屋が今シーズンの営業を終了しています。「登山に行ったら営業していなかった。」「水場がない。」ということにならないように、事前に山小屋の営業期間等を確認しましょう。
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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