丹沢の前衛・仏果山。山を眺め、街を眺め、紅葉にまみれる

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高い山から本格的な雪だよりが届く11月は、紅葉がいよいよ低山にまで下りてくる。気温が下がって空気が澄む秋は、展望と紅葉をともに楽しめる贅沢な季節。今回は、神奈川・丹沢山地の東側に位置する前衛の山、仏果山を訪ねよう。

写真・文=三宅 岳

宮ヶ瀬湖と丹沢山塊(高取山山頂展望台より)

宮ヶ瀬湖と丹沢山塊(高取山山頂展望台より)


神奈川県中西部にどっかりと腰を据える丹沢山塊。その東側に丹沢前衛の山として中津川の右岸に連なるのが、仏果山(ぶっかさん)と高取山だ。高取山の方は厚木市にある同名の山と区別して、「半原高取山」ともいわれる。仏果山と高取山の山頂には、ともにゴージャスな展望台があり、山頂を覆う雑木のさらにその上からぐるりと展望を楽しめる。これら2つの山々をつないで登ってみよう。

宮ヶ瀬ダムや愛川ふれあいの村からの登山道もあるが、今回は西側の宮ヶ瀬湖畔から登る。小田急線本厚木駅からバスに乗り、宮ヶ瀬湖のほとりにある仏果山登山口バス停で下車。登山口は通行量の多い県道を挟んだすぐ向かいにあり、歩き始めてすぐの所に登山届用ポストが設置されている。

登山届ポスト。「ヤマビルにご注意」とあるが、晩秋から春先は休眠しているので安心

登山届ポスト。「ヤマビルにご注意」とあるが、
晩秋から春先は休眠しているので安心


しばらくは樹林の中を登っていく。一部植林もあるが、多くは紅葉・黄葉を楽しめる雑木の斜面である。尾根歩きに転じてやがて稜線に近づくと、常緑の針葉樹モミの巨樹が増えてくる。主稜線に飛び出るとそこは宮ヶ瀬越。かつての峠道だが、残念ながら反対側の下山路はすでに跡形もない。

宮ヶ瀬越への登り途中、燃ゆる黄葉

宮ヶ瀬越への登り途中、燃ゆる黄葉

宮ヶ瀬越

宮ヶ瀬越


稜線を北西方向に進むと、ほどなくで高取山の山頂である。ベンチのある山頂は東側が切り開かれ開放感がある。さらに展望台に登れば開放感全開だ。東を眺めれば、愛川からはじまり、街並みがどこまでも広がってゆく。一方西側に目を転ずれば、丹沢山塊の山並みがずらり。眼下の宮ヶ瀬湖もみごとに青い(冒頭写真)。その青が、深まる秋の紅葉をぐっと鮮やかに際立たせてくれるのである。

明るい高取山山頂

明るい高取山山頂

眼下に愛川町半原の街と奥に相模原、さらに都心方面を望む

眼下に愛川町半原の街と奥に相模原、
さらに都心方面を望む

展望台から次に向かう仏果山が見える

展望台から次に向かう仏果山が見える


次に目指すのが、仏果山。先ほどの宮ヶ瀬越までいったん戻り、さらに稜線をたどる。この稜線、たびたび現われるモミの大木が格好いい。そのうち、ぐいっとひと登りで仏果山に到着。山頂そのものは雑木に囲まれ展望はないが、決して広くはないその山頂に、なんと高さ13mもの展望台がある。慌てて登ったら息が切れるだろう展望台を登れば、大展望が待っている。展望と紅葉の組み合わせが、なんとも素晴らしい。

仏果山の立派な展望台

仏果山の立派な展望台

仏果山展望台からの大山

仏果山展望台からの大山

そして東京湾や房総半島まで遠望!

そして東京湾や房総半島まで遠望!


帰路は、往路を下山するのもよいが、愛川ふれあいの村方面へ下るコースも快適登山道なのでおすすめ。体力あるよ、という方なら、ぜひとも稜線を南下して、しばしの縦走を楽しもう。ただし仏果山からしばらくは、やせた尾根になっているので十分注意が必要だ。体力に応じてバス停のある土山峠へ下山するもよし、さらに半原越で登り返して経ヶ岳まで足をのばしてもよい。経ヶ岳も、しっかり展望を楽しめる山である。

経ヶ岳稜線上のコナラ

経ヶ岳稜線上のコナラ

モデルコース:仏果山登山口~(半原)高取山~仏果山~愛川ふれあいの村

仏果山地図

コースタイム:約3時間

⇒仏果山の地図を
ヤマタイムで確認する

プロフィール

三宅 岳さん(山岳写真家)

みやけ・がく/1964年生まれ。丹沢や北アルプスの山々で風景や山仕事などの撮影を行なう。著書に『ヤマケイアルペンガイド 丹沢』(山と溪谷社)、『山と高原地図 槍ヶ岳・穂高岳 上高地』(昭文社)など。

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