冬山となった県内の山では厳しい環境下での判断力が求められます 島崎三歩の「山岳通信」 第286号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2022年11月25日に配信された第286号では、冬山のコンディションとなった県内の山では厳しい環境下での判断力が求められることを指摘。事前の下調べや天候チェック、装備品の準備を確実に行い、自身や仲間の技量に見合った登山をすることを促している。

 

11月25日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第286号では、期間中に起きた4件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 11月9日、南アルプスの仙丈ヶ岳で、単独で入山した47歳の男性が仙丈ヶ岳から北沢峠に向けて下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。伊那警察署員と伊那消防署員が出動して男性を救助した。

  • 11月11日、大町市八坂地籍の山林内で、きのこ採りのために2人パーティで入山した78歳の女性が同行者とはぐれて行方不明となる山岳遭難が発生。警察・消防団等で捜索を実施したところ、斜面を滑落して負傷し行動不能となっていた女性を発見し救助した。

  • 11月12日、下水内郡栄村の鳥甲山で、単独で入山した49歳の男性が鳥甲山から屋敷登山口に向けて下山中に足を滑らせて転倒し負傷する山岳遭難が発生。岳北消防本部署員らが出動して男性を救助した。

  • 11月16日、長野市の虫倉山で、5人パーティで入山した67歳の男子が、通称「さるすべりコース」を登山中、頂上付近でバランスを崩して滑落する山岳遭難が発生。長野中央警察署山岳高原パトロール隊及び長野市消防本部救助隊が出動して県警ヘリで救助したものの死亡が確認された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

11月2週は、3件の遭難が発生しました。県内は晩秋となり、寒さも日ごとに厳しさを増しています。標高が高い山域では、既に積雪がある山域もあり、アイゼンやピッケルなどの、本格的な冬山装備が必要なルートもあります。冬山は、夏山以上に知識や体力のほか、厳しい環境下での判断力が求められます。事前の下調べや天候チェック、装備品の準備を確実に行い、自身や仲間の技量に見合った登山をしましょう。

11月3週は、1件の死亡遭難が発生しました。各地の里山では、紅葉も終盤となりましたが、登山道は落葉で不明瞭になっていたり、非常に滑りやすくなっていたりします。また、岩場やクサリ場、ハシゴ場がある里山もあり、転倒や滑落は重大な遭難となるため、油断は禁物です。事前の下調べをしっかりと行い、自身の体力・技量にゆとりのある計画を立てましょう。

県内の標高の高い山域では、麓からもしっかりと積雪が確認できるようになりました。本格的な冬山シーズンを迎えるに当たり、装備品のメンテナンスはお済みですか?いざ、入山したら「ビーコンが電池切れ!」「テントが夏用だった!」「ダウンジャケットに穴が!」「アイゼンの爪が効かない!」「バーナーが付かない!」なんてことも。このようなトラブルは遭難に直結する場合がありますので、事前に点検をするとともに、動作確認をしておきましょう。

北アルプス等の山域では、ほとんどの山小屋が今シーズンの営業を終了しています。「登山に行ったら営業していなかった。」「水場がない。」ということにならないように、事前に山小屋の営業期間等を確認しましょう。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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