積雪期の登山では体力と時間が相当に必要。余裕を持った登山計画を立てることが大切 島崎三歩の「山岳通信」 第292号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年2月10日に配信された第292号では、冬山登山では装備の増量、積雪や凍結などによって、予定通りに行動できないケースが多いことを説明。十分余裕を持った登山計画を立てるとともに、現在地と時間をこまめに確認して引き返すことも考慮した行動を促している。

 

1月26日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第290号では、期間中に起きた5件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 1月31日、下高井郡山ノ内町の焼額山で、2人パーティでバックカントリースキーをしていたイギリス国籍の男性(23歳)と、オーストラリア連邦国籍の女性(26歳)が道に迷い遭難。捜索中のところ、翌2月1日に自力下山した。

  • 2月3日、北アルプスの常念岳で、単独で入山した74歳の男性が常念岳に向けて東尾根を登山中に、疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。翌3日に安曇野警察署山岳遭難救助隊員、警察本部山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 2月3日、北アルプスの常念岳で、4人パーティで入山した34歳の女性が、常念岳に向けて東尾根を登山中に体調不良などにより行動不能となる山岳遭難が発生。翌5日に安曇野警察署山岳遭難救助隊員、北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 2月5日、北アルプスの五竜岳で、単独で入山した32歳の男性が、五竜岳から鹿島槍ヶ岳に向けて縦走中、五竜岳南方の稜線上で滑落して行動不能となる山岳遭難が発生。2月5日に富山県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス五竜岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)2月7日付
  • 2月5日、入笠山で、2人パーティで入山した39歳の男性が、山頂から下山中に足を捻って負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員及び諏訪広域消防特別救助隊員が出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

1月5週目から2月1週目は、県内では、5件の遭難が発生し、うち1件はバックカントリーによるものでした。

常念岳の疲労で行動不能となった遭難者は、携帯電話を所持していなかったため救助を要請することができず、その場でビバークをしていたところ、偶然付近を通り掛かった登山者に助けを求め、地上から駆けつけた救助隊により無事救助され、事なきを得ることがきでました。このように単独登山は、万が一のことを想定し、自分自身で対処できる知識・技術・経験が必要であるとともに、ビバーク装備、携帯電話、予備バッテリー、非常食・防寒着等の最低限の装備が必要不可欠となります。単独登山は、非常にリスクが高いことを認識し、慎重な行動に努めてください。

積雪期の登山は、無雪期に比べ携行する装備が多いため荷物が重くなり、また積雪量等によって予定通りに行動できないなど、体力と時間が相当必要になります。時間には十分余裕を持った登山計画を立てるとともに、現在地と時間をこまめに確認し、引き返すことも大切です。

転倒や滑落による遭難も発生しています。この時期は、凍結箇所や雪と岩がミックスしている箇所があるため、行動中は足下をよく見て、ゆっくりと確実に歩行しましょう。特に、アイゼンを装着している場合は、自分の足に引っ掛けたり、岩や石等に引っ掛けて転倒したりすることがないように十分に注意しましょう。

今後、気温上昇によっては、雪崩のリスクがさらに高まるため、事前に入山前の天候や積雪状況について下調べを行い、雪崩を回避する行動を心掛けるとともに、必ず雪崩対策装備(ビーコン・プローブ・ショベル)を携行してください。登山やバックカントリースキー、スノーボードを計画される方は、自身や仲間の体力・技術に見合った計画を立てるとともに、気象情報を必ず確認し、悪天候の場合には、入山の延期もしくは中止することを検討しましょう。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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