バックカントリーで滑走する際は、事前に気象・装備・計画など各方面から安全対策の徹底を 島崎三歩の「山岳通信」 第293号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年2月22日に配信された第293号では、4件の山岳遭難のうち3件がバックカントリーでの遭難だったことについて言及。事故を回避するために、気象、装備、計画など各方面から安全対策の徹底を呼びかけている。

 

2月22日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第293号では、期間中に起きた4件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 2月6日、志賀高原の横手山で、単独でスキー場管理区域外をスノーボード滑走していた47歳の男性が、深雪により身動きが取れなくなる山岳遭難が発生。志賀高原地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 2月11日、北安曇郡小谷村地籍の虫尾沢で、6人パーティでバックカントリーを滑走するために入山した50歳の男性が、滑走中に転倒して負傷、行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳救助隊、北アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊が出動して男性を救助した。

  • 2月18日、北アルプスの白馬乗鞍岳で、5人パーティでバックカントリー滑走のために入山した55歳の女性が、白馬乗鞍岳天狗原付近をスキーで滑走中に転倒して負傷、行動不能となる山岳遭難が発生。翌19日に、大町警察署山岳遭難救助隊、警察本部山岳遭難救助隊及び北アルプス北地区山岳遭難防止対策協会救助隊が出動して、女性を救助した。

  • 2月19日、北アルプスの上高地で、5人パーティでアイスクライミング目的で入山した48歳の男性が、大正池付近を下山中に雪崩に巻き込まれ負傷する山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊が出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

県内では、2月2週目に2件、2月3週目に2件の遭難が発生しました。4件中3件がバックカントリーによる遭難でした。週末を中心に、バックカントリーを滑走中に転倒する遭難が続いて発生しています。

本年に入り、県内では29件の遭難(2月19日現在)が発生し、前年同期比プラス10件と増加傾向にあり、うちバックカントリーにおける遭難は10件発生しています。バックカントリーで多い遭難は、「道迷い」「雪崩」「転倒・滑落」「立木に衝突」です。
バックカントリーエリアは、管理されたスキー場内と違い自然の山中を滑走するため、スキー場では味わえない開放感や非圧雪、非整備の斜面を滑走できることが魅力的です。一方で、立木や岩への衝突リスクが高く、転倒した場合には、滑落や雪崩を誘発して巻き込まれる等の様々なリスクがありますので、地形、気温、雪質、前日までの積雪量等、高度な判断が求められます。

雪崩による遭難も発生しています。県内各地では、降雪後に気温の上昇や降雨になるなど、安定しない天候が続いており、雪崩のリスクが非常に高まっています。登山においても、標高が高い山域では、積雪量が増加しているため、登山中に深い新雪に埋もれた場合には、自己脱出が困難になる場合があります。また、稜線では猛烈な吹雪により視界がなくなってしまう、いわゆるホワイトアウトになることもあります。
冬山ではささいな準備不足や判断ミスが致命的な遭難につながります。登山やバックカントリースキー・スノーボードを計画されている方は、自身や仲間の体力・技術に見合った計画を立てるとともに、これらのリスクを認識し、事前にルートや入山前の天候、積雪状況等について下調べを行い、雪崩等のリスクを回避する行動を心掛けてください。

入山直前にも気象情報を必ず確認し、悪天候の場合には、入山の延期または中止をしましょう。また、万が一に備えて、雪崩対策装備(ビーコン・プローブ・ショベル)とともに、ツエルト、防寒具、着替え、ストーブ、非常食等ビバークできる装備を携行し、複数人で入山しましょう。

 

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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