新緑に映えるツツジやシャクナゲを見にいこう! 5月におすすめの花の山 関東編 

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5月。春から夏に移り変わるこの季節に、山ではさまざまな種類の花が咲き誇ります。今回は、関東エリアで5月に登りたい花の山を紹介します。

 

5月、花山行のススメ

天城山に咲くアマギシャクナゲ

推薦人:石丸哲也
東京に生まれ育つ。オールラウンドな登山を経て、山岳ライター、登山・ツアーの講師など幅広く活動している。 山頂に立つことだけを目的とするのでなく、山を旅する感覚で、登るプロセスや自然に触れることを大切にして山を楽しむことを心がけている。 国内では北海道の利尻山から屋久島の宮之浦岳まで全国の山を登り、海外ではペルーアンデス、ヨーロッパアルプス、北米のヨセミテ、メキシコ、カムチャツカなどの山に足跡を残す。

高山はまだ雪山の5月だが、関東周辺の山は花と新緑のシーズンだ。気象も温暖になり、山道を歩いているだけでも心躍る。花は、低山では春の山野草やツツジが一段落して、中低木に咲くつつましい花が主役となるが、植栽された花畑が目を奪う山もある。中級山岳ではツツジやシャクナゲが花期となり、山地帯に多いブナ林の新緑に映える。

この時期に登って楽しい山は、それこそ山ほどあるが、花のほかにも展望、見学施設、特産の飲食物なども考慮。栃木県、埼玉県、東京都、神奈川県、静岡県から厳選した5山を紹介する。なお、ガイド文中の花期は、例年の標準的な時期を記している。

 

さまざまなツツジが咲く高原を歩く

大山(おおやま)

栃木県/1158m
第1駐車場入口〜大山〜猫ノ平(ねこのだいら)〜霧降の滝バス停 日帰り/4時間10分

つつじヶ丘では群生するヤマツツジの中を歩く

盛夏のニッコウキスゲで知られる日光の霧降(きりふり)高原。その東側におおらかな山容の大山が横たわっている。高原レストハウスから、おおむね下りの楽なコースで歩ける。2時間ほどプラスして、キスゲ平から丸山を周回もできる。5月中旬、つつじヶ丘ではその名の通り美しいヤマツツジが出迎えてくれる。

レストハウスから東へ、霧降高原道路をくぐって下る。合柄(がっから)橋から樹林をゆるやかに登り下りした後、放牧地の草原を緩やかに登って大山へ。大山山頂は赤薙(あかなぎ)山から女峰(にょほう)山を間近に望み、男体(なんたい)山なども眺められる。下りの放牧地と樹林の境目付近はツツジが多い。猫ノ平から霧降川に下ったら、隠れ三滝のひとつマックラ滝を往復するのもよい。ほかの玉簾(たますだれ)滝と丁字(ちょうじ)滝はコース中にある。丁字滝の上で一度車道に出て、また山道に入ると、コース最大のヤマツツジ群生地であるつつじヶ丘に入っていく。霧降の滝バス停がゴールだが、時間があるなら霧降滝展望台を往復しよう。

大山の山頂付近から女峰山、赤薙山を望む

霧降川に懸かる玉簾滝

MAP

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山で見られる花

ツツジの見ごろは、つつじヶ丘のヤマツツジは5月中旬。5月上旬〜中旬には霧降高原〜大山付近でアカヤシオ、シロヤシオ、トウゴクミツバツツジ、少し遅れてヤマツツジが咲く。このころは新緑も美しい。霧降高原のニッコウキスゲは6月下旬〜7月中旬ごろ。

アクセスと山麓情報

霧降高原レストハウスは1階が休憩展示コーナーで自然情報も得られる。2階は日光霧降珈琲で、コーヒーはもちろん、ケーキ、とちぎ霧降高原牛カレーや蕎麦、うどんなどの軽食もある。9時〜16時ラストオーダー(食事は10時〜15時30分ラストオーダー)。

 

 

1200万本という「天空のポピー畑」へ

大霧山(おおぎりやま)

埼玉県/767m
内出(うちで)バス停〜二本木(にほんぎ)峠〜大霧山〜経塚(きょうづか)バス停 日帰り/4時間35分

高原状の山上に広大なポピー畑が広がる

低山では、高山のお花畑のように群生する花は乏しい。しかし、人の手によって作られた花畑は大規模なものがある。大霧山のポピー畑は、見晴らしのよい山上に広がる。もともと、この付近では珍しい、山上に拡がる牧場を利用したもので、スケール、ロケーションともトップクラスだ。外秩父七峰(そとちちぶななみね)の縦走路中にあるが、花畑と大霧山だけなら手軽なコースとなる。

コースは、内出バス停から山間の集落を縫って登り、二本木峠へ。縦走路の県道を南下し、彩の国ふれあい牧場の施設の先で西へ下ると、天空のポピーの花畑に着く。ポピー畑をゆっくり鑑賞したら縦走路に戻り、さらに南下して日本武尊伝説の粥新田(かゆにた)峠から山道を登る。樹林の切れ間に牧草地や笠(かさ)山を望みながら登りきれば大霧山山頂だ。近くの武甲(ぶこう)山から、条件がよければ奥秩父、浅間(あさま)山、谷川(たにがわ)連峰、赤城(あかぎ)山、奥日光などの大展望が開ける。さらに南下を続け、小さな登り下りを繰り返しながら下って、旧定峰(さだみね)峠で縦走路と分かれて経塚バス停へ。

秩父高原牧場から見た大霧山

開けて展望がよい大霧山山頂。休憩にも適している

MAP

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山で見られる花

ポピーの見頃は5月下旬〜6月上旬。期間中の入園は環境協力金500円。縦走路では、日当たりのよい道路脇にノイバラやスイカズラ、マルバウツギ、樹林にコアジサイ、ガクウツギ、ヤマボウシなどが点々と咲く。

アクセスと山麓情報

彩の国ふれあい牧場にはさまざまな施設がそろう。畜産や農業の解説展示があるモーモーハウス、動物広場をはじめ、手作りアイスの直売施設、ソフトクリームや牛乳、フルーツサイダーなどのミルクハウスなどが並ぶ。

 

 

涼しい沢沿いのコースで野生ランを訪ねる

高尾山(たかおさん)

東京都/599m
JR中央線高尾駅〜蛇滝(じゃたき)橋〜高尾山〜6号路〜京王電鉄高尾線高尾山口駅 日帰り/3時間45分

杉の大木の樹上に着生するセッコク

標高600m弱の低山だが、古刹薬王院の境内林として守られてきた高尾山では、貴重な山野草を見ることができる。野生ランのセッコクもそのひとつで、山内の杉の大木に着生する。自生しているものは6号路が最も見やすいが、それでも肉眼では花の詳細を確認しづらいので、双眼鏡、望遠レンズを搭載したカメラやスマホがあるとベターだ。高尾山さる園・野草園や、ケーブルカー清滝駅と高尾山駅の構内でも花を間近で観察できる。各駅ではケーブルカー利用者でなくても、頼めば見学させてもらえる。

ケーブルカーやリフトもあるが、充実した山行となるよう、高尾駅からスタートするコースを紹介しよう。梅郷(ばいごう)遊歩道をたどり、蛇滝口から薬王院の滝行場である蛇滝を経て登っていく。表参道(1号路)に出合うとにぎやかになり、すぐ高尾山さる園・野草園に着く。浄心門(じょうしんもん)で4号路に入り、山腹を巻き、吊り橋を渡って登る。高尾山山頂で高尾ビジターセンターに立ち寄ったら、少し戻って6号路へ。階段を下っていくと、琵琶滝手前でセッコク自生地に着く。なおも6号路を下り、やはり滝行場の清滝を経て、高尾山口駅へ向かう。

沢に沿って6号路を下る

6号路など沢沿いに多く見られるシャガ

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山で見られる花

セッコクは5月下旬〜6月中旬に開花。さる園・野草園が最も早く、6号路が最も遅いので、直前の開花情報を確認して日程を調整しよう。この時期はウツギ、マルバウツギ、ガマズミ、ヤマボウシなど木に咲く白い花が多い。沢沿いの随所には小型のアヤメの仲間であるシャガが群生する。

アクセスと山麓情報

高尾山さる園・野草園は飼育員の解説が楽しいさる園が人気だが、野草園も充実。セッコクをはじめとする高尾山の自生種を中心に山地や亜高山の植物も含めて300種類が栽培され、季節折々に楽しめる。9時30分〜16時30分(季節変動あり)、430円。

 

あでやかな野生のバラに会いにいく

不老山(ふろうざん)

神奈川県・静岡県/928m
明神(みょうじん)峠〜不老山〜JR御殿場線駿河小山駅 日帰り/5時間25分

湯船山付近はみごとなブナ林が続く

西丹沢(たんざわ)前衛の不老山は、園芸品種のような大輪でピンクのサンショウバラ(ハコネバラ)の自生地で、花期は登山者が多く訪ねる。自生地は西へ延びる尾根道にあり、かつては強行軍を強いられたが、明神(みょうじん)峠行きバスが運行されるようになって登りやすくなり、人気が急上昇した。なお、バスは朝8時台の明神峠行きが1便(サンショウバラ開花期は2便)のみで復路の運行はない。

明神峠から富士箱根トレイルの縦走路を東へ向かう。新緑のブナ林が続き、所々、早くもサンショウバラが顔を出す。コース最高地点だが展望はない湯船(ゆふね)山を越え、峰坂(みねさか)峠からは樹林が開けて、サンショウバラも増えてくる。サンショウバラの丘は広場状で、花が最も多く、富士山や箱根、不老山を眺められるベストスポットだ。世附(よつぐ)峠から登り返した不老山でサンショウバラは見納め。下山は南へ向かい、なおも富士箱根トレイルをたどって、駿河小山駅をめざす。

サンショウバラは直径5〜6cm、野生バラには珍しく大輪の花を咲かせる

峰坂峠付近は明神(みょうじん)ヶ岳、金時(きんとき)山など箱根の山々の眺めがよい

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山で見られる花

サンショウバラの開花期は5月下旬〜6月前半。同時期に、中木のヤブデマリが白い花をたくさん付けて目立つほか、低木ではツクバネウツギやウツギ、野草ではフタリシズカなど白い花が多く見られ、ヤマツツジの朱紅色の花も見られる。

アクセスと山麓情報

駿河小山駅前の丸中わさび店は、特産のワサビを使ったわさび漬けをはじめ、わさびの茎三杯酢漬、わさびそば、わさびおからチップスなどユニークな商品も。人気商品の最中「山そだち」は、すりおろしたワサビと白あんがほかにないおいしさだ。9時30分〜18時、水曜定休。

 

伊豆最高峰で特産のシャクナゲを愛でる

天城山(あまぎさん)

静岡県/1406m(万三郎岳)
天城縦走登山口〜万二郎(ばんじろう)岳〜万三郎(ばんざぶろう)岳〜天城縦走登山口 日帰り/4時間25分

大木も見られるアマギシャクナゲ

伊豆半島最高峰で日本百名山でもある天城山は全国でも人気の山のひとつ。四季を通じて登れるが、特産のアマギシャクナゲが咲く初夏は最もにぎわう。天城峠からの縦走路もあるが、日帰りで周回でき、マイカーにも向く天城縦走登山口からのコースが人気だ。

天城縦走登山口からすぐ登山道に入り、四辻(よつじ)から万二郎岳方面へ。平坦な万二郎岳山頂は木立に囲まれているが、南端から伊豆の東海岸などを眺められる。ひと下りした西肩の露岩は万三郎岳方面や富士山を見渡せる、コース一番の展望地だ。アセビがトンネル状に茂る馬ノ背を越え、石楠立(はなだて)の鞍部から急登にかかると、待望のアマギシャクナゲ群生地が万三郎岳直下まで続き、ブナの大木も目をひく。やはり木立に囲まれた万三郎岳山頂から尾根を西へ少し進んだ後、北へ急下降する。涸沢分岐点からは、数少ないがアマギシャクナゲが咲く山腹をトラバースしていく。小さな登り下りがあり、予想外に長く感じられる道だ。四辻からは、来た道を天城縦走登山口へ。

万二郎岳西肩の露岩から万三郎岳方面

平坦な万二郎岳山頂

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山で見られる花

アマギシャクナゲの開花期は5月中旬〜6月上旬。同時期に、ピンクのトウゴクミツバツツジも多く咲く。アマギシャクナゲより先にスズランのような花を開く中低木のアセビも咲いていることが多い。

アクセスと山麓情報

天城山の玄関口は伊豆でも有数の温泉地である伊東。日帰り入浴できる施設は多いが、公共交通機関利用なら共同浴場がおすすめだ。伊東駅からすぐの子持湯など10軒があり、内湯のみだが、200円と激安。子持湯は14時〜21時30分、月曜定休。車なら伊東マリンタウンシーサイドスパが周辺に飲食店もあり、便利。5時〜21時、不定休、1000円〜。

 

山を歩く、花を楽しむ

全国で人気の花の山、関東周辺「花の百名山」のコースガイドや、花に関するコラムを掲載。

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