晴れ間を狙って、オオヤマレンゲやオドリコソウに会いにいこう 7月上旬におすすめの花の山 関西編

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

目次

全国的に不安定な天気が続くなか、山ではさまざまな種類の花が咲き誇っています。今回は、関西エリアで今の時期に登りたい花の山を紹介します。

 

梅雨から梅雨明けにかけて、花山行のススメ

伊吹山山頂お花畑のクサタチバナ。花はタチバナ(ミカン)に似る

推薦人

梶山正

1959年生まれ。カメラマン。20代でナンガ・パルバット、30代で厳冬期黒部横断、40代でペルー・アンデスなど、国内外で困難な登山を実践。96年に京都大原の山里に引っ越し、関西の山を登りながら撮影を続ける。著書に『ポケット図鑑 日本アルプスの高山植物』(家の光協会刊)など。

関西の梅雨は、例年6月中旬から7月20日ごろまでである。例年通りであれば7月中旬まで梅雨の最中だが、晴れ間を上手に狙って花の山を歩きたい。能郷白山(のうごうはくさん)は雪が多い奥美濃にあるため、稜線付近では6月ごろまで残雪が見られる。雪が解けたばかりの場所だと春の花と出会えることも。大峰には甘い香りの白い花を咲かすオオヤマレンゲの群生地がある。オオヤマレンゲを見るために、関西の最高峰八経(はっきょう)ヶ岳に登るのもいい。琵琶湖の北に位置する伊吹(いぶき)山の山頂一帯は大自然のお花畑だ。4月から10月まで、次々にさまざまな種類の花とそこで出合えるだろう。梅雨が去ると、ピンク色のシモツケソウ、黄色いメタカラコウ、白いサラシナショウマの花がお花畑を鮮やかに染める。

今回は、山の紹介に加えて、その山で注目したい花をピックアップして紹介する。

 

能郷白山(のうごうはくさん)

山奥の花豊かな霊山であり、奥美濃最高峰

岐阜県県・福井県/1617m
温見(ぬくみ)峠〜能郷白山山頂(白山神社奥ノ院)〜温見峠 日帰り/3時間40分

注目の花:サラサドウダン

北海道、近畿以東の本州および四国に分布する落葉性のツツジ。深山に自生し、6~7月に咲く花が美しい。花は先端が五つに裂けた釣鐘状。花の紅色の筋が更紗(さらさ)模様に似ることが名の由来。日本固有種。

深田久弥は日本百名山選定にあたり、両白(りょうはく)山地南部の盟主である能郷白山にするか、彼にとって想い出深い荒島(あらしま)岳にするか悩んだという、百名山に匹敵する名山である。あまり目立たない山々が連なる両白山地南部で、能郷白山は最高峰。山深さと自然の濃さが能郷白山の魅力であり、サラサドウダンなどの花と北アルプスの展望がすばらしい。

能郷白山主稜線のすぐ北に位置する温見峠からの道は比較的短時間で登れる、1988年に開設された登山道である。温見峠西側の登山口からブナ林の尾根を登ると、サラサドウダンやムラサキヤシオツツジの花が見られる。急なブナ林を抜けると笹原と灌木の緩やかな尾根となり、白山や北アが遠望できる。雪渓の脇ではカタクリやサンカヨウが花を咲かす。展望のない一等三角点から10分程南西に笹原を進むと、展望が開けた白山神社奥の院がある。帰路は往路を戻る。

オオバミゾホオズキは、高い山の沢沿いや湿地などに群生する高山植物
三角点がある能郷白山山頂の北面を登る

MAP

山で見られる花

温見峠から山頂往復で見られる花。トチノキ、タニウツギ、サラサドウダン、ユキザサ、コバイケイソウ、ムラサキヤシオツツジ、ミヤマニガイチゴ、オオバミゾホオズキ、サンカヨウ、イワキンバイ、カタクリ、マイヅルソウ、ショウジョウバカマ、ムシカリ、オオバキスミレ、エンレイソウなど。

アクセスと山麓情報

温見峠まで公共交通機関はなく、マイカー利用となる。国道157号の道幅は狭くカーブも多いので運転はそれなりに疲れる。冬季は閉鎖する温見峠越えの区間、つまり岐阜県本巣市根尾能郷から福井県真名川(まながわ)ダムまでの間に店はない。温見峠付近には、20~30台ほどの駐車スペースがある。

 

伊吹山(いぶきやま)

時期によってさまざまな花を咲かせる山頂のお花畑

滋賀県、岐阜県/1377m
上野バス停〜三合目〜伊吹山山頂遊歩道周回〜三合目〜上野バス停 日帰り/8時間

注目の花:オドリコソウ

北海道から九州まで分布するシソ科の多年草。花の色は個体差があり、白色や淡紅紫色など、咲く場所によって違いがある。伊吹山では白〜ピンク色。和名は、花の形が笠をかぶった踊り子の姿に見えることから。

琵琶湖北の伊吹山は、植物の種類が多くシダ植物以上の高等植物が約1350種分布する。山頂お花畑には高山植物や高山性植物も多く、春から秋まで約350種の花たちが登山者の目を楽しませてくれる、関西屈指の花の山である。また伊吹山は薬草の宝庫。織田信長が宣教師にポルトガルから薬草を移植させて薬草園を作った記録も残る。

伊吹山登山は、ドライブウェイを使う方法もあるが、ここでは上野登山口から往復するコースを紹介する。登山口から1合目まで植林地を登る。1合目から5合目までのスキー場跡は、広大な草原が続く。平坦な高原の3合目付近から、花が多く見られる。地質が特有の石灰岩のせいか、5合目から山頂まで樹木がほとんどない急斜面が続く。山頂お花畑には一周できる遊歩道が設置されている。下山は往路を戻ろう。

三合目より伊吹山南面。台地状の山頂一帯はお花畑
6〜7合目の登山道は、ヤマガラシ(別名イブキガラシ)の花で黄色に染まる

MAP

山で見られる花

6月下旬ごろまで3合目ではオドリコソウが多く、6〜7合目ではヤマガラシの群落が斜面を黄色に染める。6月下旬〜7月上旬の山頂お花畑ではクサタチバナ、グンナイフウロ、ウツボグサ、コバノミミナグサ、イブキノエンドウ、カノコソウ、ノビネチドリ、ヒメレンゲ、ミヤマコアザミ、ニガナなど。

アクセスと山麓情報

伊吹山入山協力金300円を行政は求めており(協力は任意)、各登山口に協力金箱が設置されている。上野登山口付近には複数の有料駐車場(500円)がある。上野登山口から山頂まで往復6時間20分もかかる。山頂のお花畑をじっくり観察するには、ドライブウェイを使う選択肢もある。

 

八経ヶ岳(はっきょうがたけ)

可憐なオオヤマレンゲの花を見に近畿最高峰へ

奈良県/1915m
行者還(ぎょうじゃがえり)トンネル西口〜奥駆道出合〜弥山(みせん)〜八経ヶ岳〜奥駆道出合〜行者還トンネル西口 日帰り/5時間30分

注目の花:オオヤマレンゲ

本州関東以南から九州に自生する、モクレン科の落葉低木。5〜7月に5~7㎝くらいの白い花を、下向きや横向きに咲かせる。植物園などで目にすることが多いが、そちらはオオバオオヤマレンゲという別種。

近畿地方で最も高い山が大峰山脈の八経ヶ岳で第2位の弥山はその隣にある。6月になると、弁天ノ森付近でシロヤシオの白い花が多く見られる。シロヤシオが終わると次は八経ヶ岳のオオヤマレンゲが有名だ。蓮華(ハスの花)に似た花を、大峰(おおみね)山で咲かせることが名の由来である。シカの食害から守るため、群生地の周囲はネットで囲っている。同じ頃、バイケイソウやサンカヨウの花も見られる。

行者還トンネル西口登山口から弥山と八経ヶ岳を往復する。主稜線の縦走路は修験道の奥駆道でもある。弥山山頂は第54番の行場であり、弥山弁財天社が祀られている。また、八経ヶ岳には役ノ行者(えんのぎょうじゃ)が法華経8巻を埋めたという伝説が残されている。日帰り登山できるが、弥山小屋に宿泊してゆったりと山を楽しむのもいい。

古今宿(ふるいまじゅく)付近から見る、八経ヶ岳北東面
東西に長い山稜の弥山南西面。八経ヶ岳山頂より

MAP

山で見られる花

国の天然記念物のオオヤマレンゲ(モクレン科)が梅雨の7月初旬〜中旬に八経ヶ岳で白い大きな花を咲かせる。シカの食害防止のため群生地には防鹿柵が設置されている。同じ頃、白い花のバイケイソウの群落が見られる。ウルイに似ているが有毒。コアジサイ、ツルマンネングサ、マイヅルソウも見られる。

アクセスと山麓情報

行者還トンネル西口の駐車場は、約100台駐車可能で1日1000円(有料トイレあり)。近郊の日帰り温泉は天の川温泉センター(11時~20時、火曜定休、大人700円)、 天川薬湯センター みずはの湯(11時~20時、木曜定休、大人700円)などがある。 天川村ふれあい直売所 小路の駅「てん」では、地元の特産物を販売している。

目次

山を歩く、花を楽しむ

全国で人気の花の山、関東周辺「花の百名山」のコースガイドや、花に関するコラムを掲載。

編集部おすすめ記事