花好き登山者に聞く!好きな山の花1位は? 憧れの花の山は? 花を楽しむヒントも紹介

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山と溪谷オンラインでは2023年4月に、山に咲く花、「花の百名山」に関するアンケートを実施した。この記事では、アンケートの回答から、花好きの登山者たちによる花を楽しむヒントや、エピソード、人気の花の山を紹介する。

メイン写真=写真投稿企画2023春「山の花」投稿作品

基本データ

受付期間:2023年4月11日(火)~4月25日(火)    
有効回答数:199    
性別:男性107(54%)、女性92(46%)

「花をメインの目的にした山行を計画する」という人は、よくする(48%)、たまにする(40%)をあわせて88%だった。登山歴、登山頻度も高く、ベテランの花好き登山者による回答が多かった。

好きな「山の花」は?

1位 コマクサ……44票    
2位 チングルマ……42票    
3位 カタクリ……24票    
4位 ハクサンイチゲ……21票  

5位以下  
ニッコウキスゲ……17票    
イワウチワ……13票    
イワカガミ……13票    
シラネアオイ……13票    
ツクモグサ……12票    
ニリンソウ……10票    
ハクサンコザクラ……10票    
マツムシソウ……10票

コマクサ(すーさんの登山記録より)    
 

最多得票は「高山植物の女王」とも呼ばれるコマクサ。上位はよく見られる定番が集まった。

全体では、「スミレ全般」というようなものも含め184種が挙げられた。3つまでの回答だったためか、上位は偏った一方、3つ目はかなり好みが分かれたようで、「回答数1」は123種。

関連記事……「高山植物の女王」コマクサ、荒涼とした場所に咲く孤高の花 

山の花を楽しむためのプランニングの工夫やアイデアを教えてください

花を楽しむためのさまざまなアイデアが集まった。テーマを分けつつ一部を紹介する。

年間計画を立てる

「毎年、季節を決めて歩く山を決めています。時には山でお会いした人からどの山にどんな花が咲くのかとか、開花時期に関する最新の情報をお聞きしたりしています」(Sam.Ogawaさん/70代)

「近年、花の開花時期に大きな差ズレが生じており、また、春先は2週間早くても5月末には、例年通りになるなど、中々タイミングを掴むことが難しくなっています。このため、多くの方記録を参考にして、タイミングをはかり、プランニングしています」(Tatsuさん/50代)

「年間の花カレンダーをつくり、いつ何処へ行ったら会えるかを計画する。一回で多くの花に出会えるように、ルートを詳細に練る。常に花の場所や時期の情報を多方面から得るよう心がける」(シュンさん/80代)

SNSで開花情報を日々チェック

「インターネット上の登山記録で開花状況を確認し柔軟に計画すること」(道遥かさん/40代)

「 SNSの投稿をまめにチェックして開花状況をリアルタイムに把握しピークに行けるように計画する」(万願寺とうがらしさん/30代)

人気の山では混雑対策をする

「混雑する山は人と動きがかぶらないようにし、写真を撮りやすい時間を作る。例えば左回りに周回する人が多ければ、自分は右回りで行く」(ikeさん/40代)

ミズバショウの季節は大混雑の尾瀬・山の鼻(ひろかつさんの登山記録より)

時間に余裕を持ったプランニングにする

「山小屋泊をして、日程にゆとりを持った登山計画を立てる。一日滞在もする」(喜作新道さん/70代)

「花を探し、ゆっくり眺めて写真を撮る時間をたっぷり含めた登山計画を作る。花メインにしたい時は、同じように花好きの人と出かける」(Chabikoさん/60代)

撮影を楽しむ工夫

「撮影のための機材、カメラの機能にもよるが花の高さからの撮影、あえて逆光での撮影」(山のデジフォトさん/80代)

「ギリギリまで、風の強さを含めて天気予報をよく見て山行計画を立てるようにしています。(晴れていても風が強いと花の写真を撮るのは難しいため。)一眼レフカメラを持って登りますが、負担にならないようにミラーレス一眼を使うようにしています」(みつまめさん/40代)

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花の名前を調べて楽しむ

「山行の地域に対応した図鑑を時には持参、又は登山後に図鑑を購買して名前を確認して楽しむ」(ハウチャさん/70代)

「山で写真をたくさん撮って、家に帰って本やネットで調べ、また山に行く。の、繰り返しで花の名前を覚えます。写真は花のほか葉っぱを忘れずに撮影しておくようにする」(あんぱんさん/40代)

「花の写真を撮って、名前・特徴を調べると興味がわく。そうするとまた違う花を見てみたいとなり、違う山を登ってみたいと同じような欲求が生まれてくる。花の名前や咲いている時期や山は他の人のSNSやレポートが参考になります。写真で分からない時はGoogleレンズも力強い味方になります」(あいちゃん/60代)

関連記事……植物の名を知るには図鑑がいちばん効率的。この春から植物図鑑を使ってみよう

自分の「お気に入り」をみつけて楽しむ

「ここ数年は男鹿半島の植物をメインテーマにして、時期を少しずつずらしながら同じ場所を何度も訪ねて発見を楽しんでいます。秋田駒ヶ岳や鳥海山などの有名な花の名所も素晴らしいですが、マイナーな山域で年間を通して観察を続ける楽しみにはまっています」(ナマケグマさん/50代)

花を大切に思うなら、盗掘対策も

「写真を撮ったら位置情報は悟られないように アップする際はExifデータを消しています」(みやごんさん/60代)

いつかは登りたい花の名山について、山名と見たい花の名前を教えてください(3つまで回答)

1位 北岳/キタダケソウ……56票    
2位 早池峰山/ハヤチネウスユキソウ……27票    
3位 礼文岳/レブンアツモリソウ、レブンソウ……20票    
4位 白山/クロユリ、ハクサンイチゲ、ハクサンコザクラ……15票  

5位以下  
大雪山/チングルマ、ハクサンイチゲ……14票    
利尻山/リシリヒナゲシ……13票    
八ヶ岳/ツクモグサ……11票    
燕岳/コマクサ……10票    
秋田駒ヶ岳/コマクサ、ヒナザクラ……8票    
アポイ岳/アポイマンテマ、アポイクワガタ……7票

最も多くの人が挙げた山が、北岳とその固有種のキタダケソウだ。一部では雪が残るような6月下旬の梅雨時に咲くため、なかなか難易度が高いことが、憧れとなっている要因かもしれない。

「キタダケソウの時期は連休もなく、土日だけで行くのも厳しく、仕事も休めず。退職して時間ができる頃に北岳に行ける体力があるのか?…絶望している」(ikeさん/40代)

他にも、やはり固有種が見られる山が上位に挙がっている。

キタダケソウ(道遥かさんの登山記録より)

関連記事…南アルプス・北岳にだけ咲くキタダケソウの見分け方 

 

≫花の百名山に関する質問、山の花エピソード集

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この記事に登場する山

山梨県 / 赤石山脈北部

北岳 標高 3,193m

 日本で富士山に次いで高い山は白峰の北岳である。白峰は通称白峰三山と称し、3000mを抜く山5座が、南アルプスの北部に連なっている。すなわち北岳(3192m)、中白峰(3055m)、間ノ岳(3189m)、西農鳥岳(3050m)、農鳥岳(3026m)である。  この連山の最北にある故、北岳。当を得た山名である。古くは『平家物語』に「手越を過ぎて行きければ、北に遠ざかりて、雪白き山あり。問へば甲斐の白根と云ふ」と出ているが、果たして東海道筋から見えたであろうか。時代は下がり、『甲斐国志』(文化11年―1814年編)によれば「白峰、此山本州第一ノ高山ニシテ西方ノ鎮タリ。国風ニ詠スル所ノ、甲斐ヶ根コレニシテ(中略)南北ニ連ナリテ三峰アリ。其北方最モ高キモノヲ指シテ、今専ラ白峰ト稱ス」と記している。  同書によれば、「山上ニ日ノ神ヲ祀ル。其像黄金ヲ以テ鋳ル。長七寸許、容ルニ銅室ヲ以テス。高貳尺貳寸廣方八寸、其四隅ニ鈴ヲ掛ク、風吹ケハ声アリ」と大日如来を祭ってあることを載せている。明治41年7月、この頂に立った小島烏水は「奉納大日如来寛政七年乙卯六月(1794年)」と彫られた小鉄板のあったことを記録している。となれば『甲斐国志』の記事も本当かも知れない。  明治4年、地元、芦安村の行者、名取直江が里宮、中宮、奥宮を造営して開山したという。  登山者として最初にこの頂を踏んだのはウエストンで、明治35年8月23日のことであった。積雪期の初登頂は大正14年3月22日、京都三高山岳部のメンバーで、西堀栄三郎、桑原武夫、多田政忠、四手井綱彦の4人。野呂川両俣から右俣に入り、間ノ岳を経て頂上に立った。次いで3月28日、山梨の平賀文男が広河原から第2登を飾った。  最近は交通の便がよくなり、おそらく南アルプスの山の中で、一番人気のある山ではないだろうか。登山基地の広河原まで車で入れば、1泊2日でゆっくりと往復でき、雪渓あり、お花畑あり、しかも展望絶佳ときている。  展望は南、眼前にどっかと腰をすえた間ノ岳、これに重なり合うは、塩見岳や悪沢岳。南東の櫛形山の上に富士山、東側には鳳凰三山の上に奥秩父。その左には八ヶ岳、甲斐駒ヶ岳。遠く白馬三山から槍・穂高、その左にずんぐりと仙丈ヶ岳、御岳山、中央アルプスが堪能できる。  登山コースは広河原から大樺沢二俣、小太郎尾根経由で6時間、同じく二俣から八本歯のコル経由で5時間強の登りで登頂可能。

岩手県 / 北上高地

早池峰山 標高 1,917m

 北上山地の主峰、早池峰山は、『遠野物語』で柳田國男が「恰かも、かたかなのへの字に似たり」と表現したが、彼の足跡から推察しても、おそらく薬師岳の西稜と早池峰山の西稜とがオーバーラップしていることによるものと思われる。また詩人の宮沢賢治も好んで登り、作品に登場させている。それよりも、ロシア人、マキシモビッチ、須川長之助などの植物や高山蝶などの生物学方面で紹介され、古くから魅力的な山であった。  さらに古来から、拝峠という地名もあるように、女人禁制の山岳修験の山で、常民にとっては水分(みまくり)神の山で、旱(ひでり)のない豊饒の山でもあった。  南北250kmの北上山地を分断するクサビのように、古生代に貫入した蛇紋岩が浸食を受けたカンラン岩の残丘で、中岳南西緩斜面には、周氷河現象の線条痕も見られる。また、その高山植物帯は国定公園特別天然記念物に指定されるほど種類が多い。  この山の固有種の開花時期は6~8月で、梅雨期の7月下旬が好適。ナンブトウウチソウ、ナンブトウノオ、ヒメコザクラ、ミヤマヤマブキショウマ、ナンブイヌナズナ、この山の象徴のハヤチネウスユキソウ、早池峰山を分布上の南限とするナンブソモソモ、サマニヨモギ、チシマコザクラ、ナガバキタアザミなどがある。  なお久出内地区(つきせないちく)に大規模なダムが造られるので、その後の生態系の変化が心配される。  コースは大迫(おおはさま)側が一般的で、河原坊から3時間、小田越から2時間で山頂に立てる。さらに山頂から鶏頭山経由七折滝コースは5時間で下れる。また平津戸駅から高桧山へ4時間、さらに早池峰山山頂へ7時間のコースもある。  大迫側登山口には河原坊にキャンプ場があり、岳集落の民宿もよい。岳集落には早池峰神社がある。早池峰山山頂に奥宮を祭り、祭神は姫大神とされていたが、いつのころからか瀬織津姫神を主神とするようになった。早池峰神社の例祭には、重要無形文化財の早池峰神楽が奉納される。  一等三角点の山頂からは、岩手山を盟主として連なる奥羽山脈の山々、東方には三陸の海、そして北上山地の山並みなど360度の展望が楽しめる。  その昔、享保4年(1719)、幕府からの調査で、藩侯南部利幹(32代)の命を受け、一方井九郎右衛門、江刺家兵左衛門の両人が、早池峰山山頂から晴れた日に山座同定したところ、藩内のほか、遠く北は松前・絵山ヶ岳、津軽、羽州、伊達、南は常陸・筑波山の21座が見えた、と報告したという、眺望の一等地である。

北海道 / 礼文・利尻

礼文岳 標高 490m

北海道・稚内の西側に浮かぶ礼文島は、稚内市の西方60kmの日本海に位置する、最北の離島だ。その礼文島の最高峰の山が礼文岳だ。東南に浮かぶ利尻島と共に、登山者には人気の高い風光明媚な島として知られる。 高山植物の宝庫として知られ、固有種も数多い。とくに6月~7月は、約300種の高山植物が咲き乱れる。 島内にはさまざまなハイキングコースが整備されている。礼文岳に登る場合は、東海岸の内路から往復する。 アクセスは稚内からフェリーに乗り、1時間55分。

山を歩く、花を楽しむ

全国で人気の花の山、関東周辺「花の百名山」のコースガイドや、花に関するコラムを掲載。

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