ハクサンイチゲ満開の平標山と環水平アーク
谷川連峰国境稜線の西端に位置する平標山は、天空の花の楽園として知られています。雪解けが進んだ雪渓の間からは、ハクサンイチゲやハクサンコザクラなど色とりどりの花々がいっせいに咲き始めます。なだらかな山容と広々した青空の下で天空の花園の散歩を楽しむことができます。
文・写真=奥谷 晶
梅雨入り直前の貴重な晴れ間を生かして、ハクサンイチゲがまっさきに咲く谷川連峰の平標山をめざします。平標山登山口からスタート、まずは松手山への急登で一汗をかき、稜線に出ると一気に展望が開け、さわやかな涼風で一息つけます。はやくも登山道沿いにはカキドオシ、コイワカガミ、シャクナゲなどが見られました。傾斜がゆるむと、やがて木道が現れ平標山の山頂へと導かれます。ところどころでヨツバシオガマのあざやかな赤紫の花が目立ちます。

九合目の標識を過ぎるあたりから待望のハクサンイチゲの群落が見え始めます。全開したばかりのいきいきした白い清楚な姿に感動です。

ちょうどその時です。山頂方向の空に、上方向に反った弧を描くように虹色の光が見え始めました。虹とは違って太陽と同じ方向に、太陽よりやや下方に見えます。環水平アークです。薄雲のなかの氷の結晶がプリズムの役割をはたし、太陽光が屈折して虹色に投影される現象で、日本の中部山岳地帯では夏前後の時期にしばしば観測されます。

思いがけない空からのプレゼントを楽しんだ後、平標山山頂に向かいます。山頂は大勢のハイカーで賑わっています。ここから仙ノ倉山までなだらかな稜線の道が続きます。さわやかなかぜにふかれて、まさに天空の散歩道の風情です。鞍部には雪渓もほとんど消えてハクサンコザクラやミヤマキンバイなどが群落をつくって咲き誇っていました。

帰路は平標山ノ家を経由してゆっくり下りましたが、例年ならいくつか残る雪渓も一箇所のみで問題なく下ることができました。(取材日=2022年6月5日)
プロフィール
奥谷晶
30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。
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