重大事故につながる「滑落」が増加傾向、普段以上に慎重な行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第307号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年7月26日に配信された第307号では、急峻な岩稜での事故が増加傾向にあることから、登山者には普段以上に慎重な行動をお願いしている。

 

7月26日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第307号では、期間中に起きた9件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 7月18日、北アルプスの蝶ヶ岳で、2人パーティで入山した64歳の女性が、山小屋滞在中に発病で体調を崩す山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

  • 7月18日、北アルプスの白馬鑓ヶ岳で、単独で入山した69歳の男性が、白馬鑓温泉から下山中にバランスを崩して滑落・負傷する山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して付近の山小屋に男性を収容したものの、自力下山不能となったことから県警ヘリが出動して救助した。

  • 7月20日、北アルプスの天狗ノ頭で、単独で入山した71歳の男性が、唐松岳から天狗平に向けて縦走中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。県警ヘリと長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月20日、北アルプスの常念岳で、2人パーティで三股登山口から入山した72歳の男性が、山頂から一ノ沢登山口に向けて下山中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。安曇野警察署山岳救助隊員が出動して男性を救助した。
  • 7月22日、北アルプスの五竜岳で、単独で入山した53歳の男性が、遠見尾根を下山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリおよび長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

北アルプス・五竜岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月25日付

  • 7月22日、北アルプスの爺ヶ岳で、2人パーティで入山した68歳の女性が、山小屋宿泊中に疲労により体調不良となる山岳遭難が発生。県警ヘリ及び長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して女性を救助した。

  • 7月23日、北アルプスの奥穂高岳で、5人パーティで入山した54歳の女性が、奥穂高岳から前穂高岳へ向けて縦走登山中に滑落する山岳遭難が発生。消防ヘリが出動して女性を救助したものの死亡が確認された。

  • 7月23日、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで22日から入山していた53歳の男性が、北アルプス槍ヶ岳に向けて北鎌沢を登山中に落石により手指を負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

北アルプス・槍ヶ岳での遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)7月25日付

  • 7月23日、北アルプスの白馬岳で、10人パーティで蓮華温泉から入山した57歳の女性が、白馬岳を経由して大雪渓を下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員および長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して女性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

7月4週は、1件の死亡遭難を含む9件の遭難が発生しました。死亡遭難は3週に続き、北アルプス穂高連峰で発生しており、いずれも滑落によるものです。穂高連峰の稜線は、急峻な岩稜が続き、鎖場やハシゴ場が連続する箇所が多数あります。危険箇所を通過する際には、一呼吸を置くなど普段以上に注意しましょう。

最近の遭難の傾向として、50代女性登山者による滑落・転倒遭難が増えていますが、すべての年代の方が、「遭難を他人事」とは思わず、慎重な行動をお願いします。

県内は、梅雨明けとなり、夏本番の厳しい暑さとなっています。標高が高い山域でも日中は気温が高くなり、疲労や発病による行動不能遭難や暑さと疲労で集中力が低下することにより、転倒や滑落のリスクも高まります。
普段なら難なく通過してしまう場所であっても、気温が高かったり、登山行程が長くなると集中力が低下し、転んだり、滑ったりしてしまうことがあります。あらかじめ、ゆとりある計画を立てるとともに、下山するまで体力や集中力を切らさないように、こまめに休憩を取り、意識して水分やカロリーを補給しましょう。

標高の低い市街地で生活されていて、登山経験の浅い方は、登山中の高山病の発症にご注意ください。頭痛や吐き気などの症状が現われたら、症状が重症化して行動ができなくなる前に下山することで、できるだけ標高の低い場所へ移動しましょう。
持病をお持ちの方は、医師に必ず相談し、無理のない行動をお願いします。

夏季は午後になると雷が発生する場合があります。稜線の行動は落雷の危険が伴うため、「早出・早着」を心掛け、事前の天気予報で悪天候が予想される場合は、登山の中止や延期の判断をお願いします。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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