脱水や熱中症と思われる疲労遭難が多発。暑さ対策を万全に 島崎三歩の「山岳通信」 第309号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年8月14日に配信された第309号では、脱水や熱中症と思われる疲労による遭難が非常に多いことに言及。また、北アルプスの一部の山小屋では水不足が生じていることにも触れ、多めの飲料水携行と事前の情報収集を呼びかけている。

 

8月14日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第309号では、期間中に起きた23件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

 

  • 7月31日、北アルプスの西穂高岳で、2人パーティで30日に上高地から入山していた66歳の男性が、西穂高岳から奥穂高岳に向けて縦走中に滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助したものの、死亡が確認された。

  • 7月31日、北アルプスの燕岳で、3人パーティで30日から入山していた77歳の男性が、合戦尾根を中房温泉に向けて下山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。安曇野警察署山岳遭難救助隊員、豊科消防署員が出動して男性を救助した。

  • 7月31日、八ヶ岳連峰の赤岳で、17人パーティで入山した16歳の男性が、宿泊中の山小屋で疲労のため体調不良となる山岳遭難が発生。諏訪地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月31日、八ヶ岳連峰の美濃戸南沢で、赤岳登山のために3人パーティで30日から入山していた60歳の男性が、南沢を美濃戸口に向けて下山中につまずいてバランスを崩し、転倒・負傷する山岳遭難が発生。茅野警察署山岳遭難救助隊員および諏訪広域消防特別救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月31日、北アルプスの白馬鑓ヶ岳で、単独で30日から入山していた50歳の男性が、白馬乗鞍岳から白馬鑓ヶ岳を経由して猿倉に向けて下山中に疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 7月31日、北アルプスの西穂高岳で、14人パーティで上高地から入山した15歳の男性が、西穂高岳周辺のテント場において宿泊中、発病による体調不良のため行動不能となる山岳遭難が発生。1日に長野県消防防災ヘリが出動して男性を救助した。

  • 8月1日、北アルプスの北穂高岳で、2人パーティで30日から入山していた60歳の女性が、涸沢に向けて下山中に転倒し負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

  • 8月1日、北アルプスの爺ヶ岳で、4人パーティで30日から入山していた73歳の女性が、柏原新道登山口に向けて下山中に疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 8月2日、中央アルプスの空木岳で、単独で31日から入山していた59歳の男性が、空木岳から檜尾岳へ向けて登山中にバランスを崩し、転倒・左足首を負傷する山岳遭難が1日に発生。翌日になっても回復が見込めず自力下山できないため、県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 8月2日、北アルプスの槍ヶ岳で、単独で31日に上高地から入山していた69歳の男性が、北鎌沢を経由して北鎌尾根を槍ヶ岳に向けて登山中に疲労と右膝の痛みのため行動不能となる山岳遭難が発生。3日に県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 8月2日、北アルプスの白馬岳で、5人パーティで1日から入山していた58歳の女性が、猿倉に向けて下山中に疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員および長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して女性を救助した。

  • 8月2日、南アルプスの仙丈ケ岳で、2人パーティで1日から入山していた65歳の男性が、北沢峠へ下山中に疲労により行動不能となる山岳遭難が発生。3日に伊那警察署山岳高原パトロール隊員および南アルプス北部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

  • 8月3日、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで猿倉から白馬岳を登山中だった68歳の男性が、疲労のため行動不能となる山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

  • 8月3日、北アルプスの槍ヶ岳で、単独で2日に上高地から入山していた46歳の男性が、槍ヶ岳に向けて北鎌尾根を登山中に滑落して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助した。

  • 8月4日、北アルプスの白馬岳で、単独で3日から入山していた59歳の男性が、白馬岳を登山中に岩でつまづき転倒して負傷する山岳遭難が発生。長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

  • 8月4日、北アルプスの燕岳で、2人パーティで3日に中房登山口から入山していた80歳の男性が、燕岳から大天井岳に向けて登山中に滑落する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して男性を救助したものの、死亡が確認された。

  • 8月4日、北アルプスの常念岳で、単独で一ノ沢登山口から入山した58歳の男性が、常念乗越から一ノ沢登山口に向けて下山中に転倒する山岳遭難が発生。消防ヘリが出動して男性を救助した。

  • 8月5日、北アルプスの燕岳で、17人パーティで4日に中房登山口から入山していた67歳の女性が、燕岳から大天井岳に向けて登山中に転倒して負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリが出動して女性を救助した。

  • 8月5日、北アルプスの赤岩岳で、11人パーティで4日に中房登山口から入山していた64歳の女性が、大天井岳から赤岩岳に向けて登山中に疲労による体調不良で行動不能となる山岳遭難が発生。消防ヘリが出動して女性を救助した。

  • 8月6日、北アルプスの五竜岳で、単独で5日から入山していた34歳の男性が、鹿島槍ヶ岳方面に向けて縦走中に落石により負傷する山岳遭難が発生。県警ヘリおよび長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

  • 8月6日、北アルプスの白馬岳で、2人パーティで5日から入山していた64歳の男性が、大雪渓を下山中にスリップして転倒し負傷する山岳遭難が発生。大町警察署山岳遭難救助隊員および長野県山岳遭難防止常駐隊員が出動して男性を救助した。

  • 8月6日、北アルプスの槍ヶ岳で、5人パーティで5日に上高地から入山していた56歳の女性が、槍ヶ岳から上高地に向けて下山中に体調不良となる山岳遭難が発生。松本警察署山岳遭難救助隊員が出動して女性を救助した。

  • 8月6日、北アルプスの燕岳で、親子2人パーティで入山した8歳の男性が、テント宿泊中に体調不良により行動不能となる山岳遭難が発生。7日に下山予定だったが、安曇野警察署山岳遭難救助隊員および北アルプス南部地区山岳遭難防止対策協会救助隊員が出動して男性を救助した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

8月1週は、2件の死亡遭難を含む、23件の遭難が発生しました。連日厳しい暑さが続いていますが、標高が高い山域でも、日中は気温が高くなります。北アルプスの一部の山小屋では、好天が続く影響で、水の補給制限やペットボトル飲料の売り切れ等があるため、山小屋に到着しても水の補給ができない場合もあります。事前に情報収集することや、普段より多めの飲料水を携行しましょう。

また、脱水や熱中症と思われる疲労による遭難が非常に多いです。入山前から体調管理を万全にし、ゆとりある山行計画を立てるとともに、行動中は意識して水分やカロリー補給をするなどしましょう。長時間の行動や暑さで集中力が低下することによる、転倒や滑落にも注意が必要です。

今年の夏山は、連日厳しい暑さが続いているため、暑さ対策や熱中症予防を万全にして、安全登山を心掛けましょう。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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