歴史を感じる中山道ハイク。木曽・奈良井宿から鳥居峠を越えて藪原宿へ

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中山道(なかせんどう)は、江戸時代に整備された五街道の一つで、江戸の日本橋と京都の三条大橋を内陸経由で結ぶ街道であり、「中仙道」とも記されます。当時、江戸と京都をつなぐ街道は東海道がメインでしたが、天下の嶮・箱根や大井川といった難所を避けられるため、中山道は多くの旅人に利用されました。

写真・文=原 誠一

今回は、その中山道の道中でも、江戸時代の面影が色濃く残る木曽路の奈良井宿(ならいじゅく)から鳥居峠を越えて、藪原宿(やぶはらじゅく)へと下るルートをご紹介しましょう。この区間は木曽路最難関ルートだったといわれていますが、寄り道しても7km弱、所要時間約3時間で、初心者から中級者向けのハイキングルートです。

JR中央本線の奈良井駅からスタートして、まずは奈良井宿へ。通り沿いにはかつての雰囲気が感じられる風情ある建物が並び、土産店や飲食店も点在しているので、多くの観光客でにぎわいます。その一方で、観光客がまばらな平日の朝などは、まるで江戸時代にタイムスリップしたような気分にひたれます(冒頭写真)。

風情ただよう奈良井駅の駅舎

街並みを過ぎて、鳥居峠への入口から石段を上っていきます。ところどころに熊除けの鐘が設置されているので、しっかり鐘を鳴らして通過しましょう。こちらの存在を知らせれば、だいたい逃げていくのですが、最近ツキノワグマによる事故が増えているので、注意してください。

鳥居峠入口の石段
熊除けの鐘

一度車道に出て、案内板の箇所から鳥居峠への山道に入ります。途中に出てくる石畳は街道らしい雰囲気が漂います。石畳は、雨で道の土が流されないように施されたものだそうです。

石畳の道

石仏や、古道の名残でもある中の茶屋を過ぎ、さらに登っていきます。秋になると路傍にはアキチョウジの花が咲き、ところどころにオヤマボクチも見られます。

かわいらしい石仏がたたずんでいます
アキチョウジ
アキチョウジ
オヤマボクチ
オヤマボクチ

ようやく鳥居峠に到着。鳥居峠の名の由来は、平安時代の末期、源平合戦の折、木曽義仲が打倒平家を祈念して、この地に鳥居を建立したことによるといわれています。峰の茶屋があり、休憩できます。ここ鳥居峠は分水嶺になっていて、東の奈良井川は北の信濃川へ流れ込み、西は木曽川で南に流れていきます。地理的にも興味深い場所です。

ログハウス風の峰の茶屋

鳥居峠を後に、道標に従って藪原方面へと下っていくと、ほどなくして御嶽(おんたけ)神社に着きます。今では周囲を木々に囲まれていますが、かつては旅人が御嶽山を遥拝した場所です。御嶽山を遥拝する様子は、渓斎英泉(けいさいえいせん)と歌川広重による『木曽海道六十九次』の「藪原 鳥居峠硯清水」(画・溪斎英泉)に描かれています。

樹林の中に静かに鎮座する御嶽神社の鳥居

神社からほど近くの丸山公園に来ると、芭蕉の句碑や展望台のあずまやがあり、これから下る藪原宿が見下ろせます。石畳の道を下り、やがて案内板がある場所で車道に出て、あとは道標に従って藪原駅に向かいます。

展望台のあずまや

中山道は、外国人旅行者も戻り始め、往来がにぎやかになってきました。また、11月頃からは紅葉シーズンも始まります。藪原宿をスタートして奈良井宿をめざす向きもよく歩かれていますので、ご都合や目的に応じて計画いただき、ぜひ木曽路の鳥居峠越えをお楽しみください。

MAP&DATA

鳥居峠地図

コースタイム:奈良井駅~鳥居峠入口~鳥居峠~御嶽神社~案内板~藪原駅 :約3時間

鳥居峠の位置を確認する

プロフィール

原 誠一(はら・せいいち)

信州阿智村在住の登山ガイド。中央アルプス富士見台高原の萬岳(ばんがく)荘の管理人。ガイド範囲は、日本アルプス全域、熊野古道や旧東山道、中山道などの古道歩きなど。

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