標高が高い山域では冬山の様相。安易な入山計画はたてずに慎重な行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第320号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2023年10月26日に配信された第320号では、標高が高い山域では冬山の様相となっている現状を説明。安易な入山を控えるとともに、確実な装備・準備で入山することを促している。

 

10月26日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第320号では、期間中に起きた11件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 10月17日、北アルプスの北穂高岳で、単独で入山した68歳の男性が、涸沢に向けて下山中に雪により滑落後、技量不足により登山道に戻れず、行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

  • 10月17日、北アルプスの横尾谷で、3人パーティで入山した80歳の男性が、涸沢から横尾に向けて下山中、発病により行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

  • 10月18日、中央アルプスの乗越浄土で、2人パーティで入山した58歳の女性が、乗越浄土付近において幕営中に転倒、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 10月18日、木曽郡南木曽町田立地籍の田立の滝で、2人パーティで入山した76歳の男性が、田立の滝付近を登山中に足を滑らせて滑落、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 10月18日、八ヶ岳連峰の白駒池で、単独で入山した55歳の女性が、白駒池付近を登山中、日没により道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。女性は無事に救出された。

  • 10月19日、東筑摩郡朝日村古見地籍の山林内で、きのこ採りのために単独で入山した79歳の男性が、きのこ採り中に滑落、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 10月20日、北アルプスの三俣蓮華岳で、2人パーティで入山した23歳と26歳の男性が、伊藤新道から三俣蓮華岳に入山して真砂岳方面に縦走中に道に迷う山岳遭難が発生。1人は3日後に自力下山し、もう1人は行動不能となったものの、無事に救出された。

  • 10月21日、北アルプスの槍ヶ岳で、2人パーティで入山した29歳の男性2人が、上高地から槍ヶ岳に向けて登山中、大曲付近で道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。男性2人は無事に救出された。

  • 10月21日、長野市安茂里地積の山林内で、きのこ採りのために単独で入山した79歳の男性が、きのこ採り中に滑落。死亡が確認された。

  • 10月22日、浅間連峰の黒斑山で、10人パーティで入山した73歳の男性が、黒斑山に向けて草すべり付近を登山中に滑落、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 10月22日、松本市の袴越山で、きのこ採りのために2人パーティで入山した61歳と79歳の男性が、道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。2人は無事に救出された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス 

10月3週は、1件の死亡遭難を含む、11件の山岳遭難が発生しました。

北アルプスなどの標高が高い山域では、すでに20cmから30cmの積雪があり、冬山の様相となっています。日中でも気温が氷点下になることもあり、荒天や強風時には、低体温症のリスクが非常に高まります。また、積雪により登山道が埋まっているため、ルートが非常に不明瞭になっており、進行方向を見極める高い判断力が求められます。さらには、凍結している箇所もあり、転倒や滑落した場合には、致命的な遭難に直結します。標高が高い山域への登山を計画している方は、安易な入山を控えるとともに、計画に当たっては天候やルートの状況を必ず確認し、冬山と同等の防寒装備やアイゼン・ピッケルを携行するほか、GPSや登山アプリを活用しましょう。

なお、標高の低い里山であっても、風雨にさらされることにより、低体温症に起因する疲労や病気、転倒遭難が発生しています。特に高年齢層の方は、加齢とともに体温調節機能が低下し、気温変化を感じにくかったり、筋肉量の低下により、熱を生産しにくくなっていますので、本人が気付かない間に低体温症が進行している場合があります。行動中は、汗の処理と防寒防風を意識した服装を心がけるとともに、温かい飲物で体内を温め、熱を生産するためのカロリー補給を積極的に行いましょう。

里山でも自然の厳しさは変わりません。「紅葉狩りに」と観光の延長で入山すると、思わぬ遭難やトラブルに遭いますので、最新の気象情報やルート状況を必ず確認し、自身や仲間の体力・技術に見合った計画を立てましょう。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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