アート・紅葉・温泉を楽しむ秋の六甲欲張りハイキング

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六甲山の秋の風物詩として定着した感のあるアートイベント「六甲ミーツ・アート芸術散歩」。2023年は14回目となり、秋の六甲山上を歩けばアート作品と出会えることがハイカーの間でも知られるようになってきた。今年も11月23日まで開催されるので、ハイキング道沿いの作品をいくつか鑑賞しながら歩き、紅葉の名所でもある有馬温泉をめざすコースを紹介しよう。

写真・文=根岸真理

起点は六甲ケーブルの六甲山上駅。ハイクアップするなら、ケーブル下から油コブシを経由して1時間強だ。山上駅の隣にある天覧台からは、大阪湾が一望できる(冒頭写真)。またケーブル駅と天覧台のどちらにもミーツ・アートの作品が設置されているので、景色とともに鑑賞してから記念碑台へ。

記念碑台にも2作品が展示され、ふだんとは別世界が展開している。立ち寄った後は交差点を東へ。六甲山小学校の前を通って、ゴルフ場方面へ向かう全山縦走路を右に見送り、T字路を直進する。ちょうどそのT字路の角にあるのがバンノ山荘で、今年はミーツ・アートの会場となっている。有料エリアだが、ふだんは非公開で入れないので、興味がある方は見学していくといいだろう。(六甲ミーツ・アート芸術散歩2023鑑賞パスポートが必要)

記念碑台にある、牛が草を食んでいるように見える針金の立体作品。五月女かおる「食事の風景」

別荘街を通り抜けると、ゴルフ場の脇を通って六甲ブナを育成している「ブナの道」へ入る。樹高3mほどのまだ小さいブナが道沿いに何本か植えられていて、間近で観察することができる。緑陰が心地よく歩きやすい道で、途中の森の中にカラフルな作品が点在している。ROKKO森の音ミュージアム側の出口手前に新池があるが、そこにも作品が作られている。(※新池も有料エリアのため、六甲ミーツ・アート芸術散歩2023鑑賞パスポートが必要)

新池の中の小島に木製の舞台と、そこへ渡る木の橋が設置されていて、これらが丸ごと作品。川俣正「六甲の浮き橋とテラス」

ミュージアム前の駐車場から車道へ出て東へ進み、高山植物前を通過して、みよし観音から全山縦走路に合流し、六甲ガーデンテラスへ。

ガーデンテラスにもいくつかの作品が展示されていて、見晴らしのテラスがなんだかリオデジャネイロみたいになっている。六甲有馬ロープウェーの駅舎に続く道にもいくつか作品があるので、時間があれば立ち寄ってみるとよい。

ビュースポットであるガーデンテラスの展望台には印象的なオブジェがたたずむ。武田真佳「Case」

縦走路を東へ進み、極楽茶屋跡を北へ入ると紅葉谷道の入口。番匠屋畑尾根との分岐点付近には、ボランティア団体「ブナを植える会」が植樹育成している六甲ブナがかなり大きく育っている。かなりアップダウンがあってハードだが、番匠屋畑尾根から有馬三山を経由して有馬へ向かうコースを選ぶこともできる。

紅葉谷道入口付近。Y字分岐を左へ進むと番匠屋畑尾根、右が紅葉谷道

紅葉谷道は、一部傾斜が強いところもあるが、よく整備されていて歩きやすい。「紅葉谷」の名のわりには、紅色に紅葉する木よりは、黄色く黄葉する木が多い印象があるが、いろいろな樹種の木が混ざっているので、カラフルな秋色が楽しめる。

谷の上部、標高750m以上のエリアには、自生の六甲ブナの巨木が点在している。20年ほど前の調査で、六甲山にブナの木は300本程度しか残っていないことが判明したのだが、紅葉谷周辺にはわりと大きなブナがたくさんある。

登山道のすぐ脇に生えているブナの巨木

六甲山は、南斜面と北斜面では多少植生が異なり、標高によっても違いがあるので、森の雰囲気を観察しながら歩くと楽しい。

鮮やかな黄葉を見ながら下る
ブナは黄色く黄葉する木だが、年によっては茶色くなってしまうことも

下り着いた有馬温泉の温泉街には、多くの宿泊施設やお店が点在し、激しく湯気を噴き上げる泉源も見物できる。公営の外来入浴施設「金の湯」「銀の湯」のほかにも、日帰り利用ができる宿もある。効能の高い温泉として知られる有馬の湯に浸かって、歩き疲れを癒して帰ろう。

有馬温泉の温泉街でも紅葉が楽しめる。近年お店も増えて賑わっている

MAP&DATA

六甲山地図

コースタイム:六甲ケーブル山上駅~記念碑台~みよし観音~極楽茶屋跡~紅葉谷道~有馬温泉 :約2時間30分

ヤマタイムで周辺の地図を見る

プロフィール

根岸真理(ねぎし・まり)

六甲山西端の神戸市須磨区生まれ。現在は六甲山東端の宝塚市在住。アウトドア系を得意とするフリーライター。親に連れられ、歩き始めると同時に須磨の山に登っていたため六甲登山歴60年。アルパイン歴は約30年。 神戸新聞「青空主義」欄で月に1回六甲山の情報(六甲山大学)を発信中。主な著書に『六甲山を歩こう!』『六甲山シーズンガイド春夏』『六甲山シーズンガイド秋冬』など。兵庫県立六甲山ガイドハウスで「山の案内人」ボランティア活動中。

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