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悪天の北アルプスで真価を発揮した最新の防寒着 ファイントラック/ポリゴン4ジャケット[ファイントラック]

高橋庄太郎の山MONO語り

今月のPICK UP ファイントラック/ポリゴン4ジャケット [ファイントラック]

濡れに強い化繊のインシュレーション

価格:27,000円+税
重量:335g  サイズ:S~XL
カラー:エバーグリーンなど計3色

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この夏にぴったりのウェアを持って、北アルプス最深部へ

濡れた。保温性が落ちる。乾いた。保温力が戻る。 しかし速いなあ、乾くのが。なるほど、このジャケットのよさは、保温力そのもの以上に、やはり水濡れへの強さなんだな……。

今年の夏山、とくに北アルプスは悪天候ばかりが続いていた。僕が北アルプスの三俣山荘へと取材に入った8月下旬も同様だ。予定していた4日間のあいだ、ほとんどの時間で重い雲が立ち込め、ときには大雨に。もちろん気温も上がらず、夏はどこへ行ってしまったのかと、悲しくなるばかりだった。

三俣山荘近くから見上げると、鷲羽岳は大迫力。中腹に線状に見えるのが、現在は使われなくなっている伊藤新道だ。だが途中までは整備され、歩いてみることができる

こんな気象条件のなか僕が防寒着として持参していったのが、ファイントラックの「ポリゴン4ジャケット」。9月の発売を前に、いち早くサンプルを借りてその性能を確かめようという心づもりだった。ふんわりとかなりのボリューム感があり、夏に使うには温かすぎる可能性もある。しかし、この天候ならばちょうどよいのかもしれない。

一見すると普通のインシュレーションウェアだが、4枚のシートが立体的に封入されている

ともあれ三俣山荘へ向かうべく、新穂高温泉を出発。午前中こそ青空も見えたが、双六小屋へ近づくと曇り空になり、途中で立ち寄った三俣蓮華岳ではわずかながら雨粒を肌に感じる。だが槍ヶ岳~穂高連峰の風景を楽しめなかった小池新道に比べれば、鷲羽岳の姿はハッキリと見え、いくぶん気もまぎれる。でもやはり青空が恋しい。

三俣山荘では、今年発売された山岳書のベストセラー『定本 黒部の山賊』をお書きになった、ご主人の伊藤正一さんにインタビューを行なった。そのテーマは「伊藤新道」。伊藤さんが開削した湯俣と三俣山荘を結ぶ登山道であるが、道中の崩落が激しくて現在は使われていない。だがじつは近いうちに通行を再開させる計画があるという。今回、僕は伊藤新道のこれまでの歴史と今後の展望について、じっくりとお話をうかがうことができた。

三俣山荘のご主人伊藤正一さんに、著書『黒部の山賊』にサインをいただいた

山荘内ではポリゴン4ジャケットを着ていた。居心地のよい屋内では温か過ぎるほどだったが、サイドに大きくつけられたベンチレーターを開けるとスムーズな換気ができ、体感温度が下がる。わざわざ脱ぎ着しなくても細かな体温調整がしやすいので、便利な工夫だ。汗をかいてもべたつかず、この肌触りは僕好みである。

しかし小屋の外に出てみると、想像していたほどは暖かさを感じない。誤解してほしくないが、単純に保温力が低いというわけではない。正確に言えば、見た目が同じくらいふっくらとしているダウンジャケットほどの保温力は感じられないというだけである。

ファイントラックのウェアは同社の製品を重ね着することで、ウェアのベンチレーターを連動でき、すみやかな換気を促す

その理由は、このジャケットの内部構造によるものだろう。ダウンもしくは化繊であっても、一般の防寒着には「中綿」が封入されているが、ポリゴン4ジャケットの内部に入れられているのは、中綿ではなく化繊の「シート」。このシートには特殊な加工で多くのシワがつけられ、多くの空気を含むようになっている。しかも4層だ。そんな仕組みで暖気を溜めこむのだが、感覚的にはポリゴン4ジャケットよりも少し薄いダウンジャケットと同等の暖かさなるようなのである。これは内部構造による外見上のボリューム感の違いであり、保温力が低いわけではない。寒冷期により保温力を高めたい場合は、ベンチレーターの位置などが連動して着やすい同社のウェア同士でレイヤリングするとよさそうだ。

付属のスタッフバッグに入れれば、1Lのボトル程度の大きさに。より小さな袋を使えば、ますますコンパクトな大きさで持ち運べるだろう

濡れの強さを体感するテント泊・・・・・・

伊藤さんのインタビューの後、僕は伊藤新道の現状を調査するために、三俣山荘から湯俣の谷へと降りていった。現在の伊藤新道は基本的には通行止めになっているとはいえ、「展望台」と呼ばれる場所までは毎年整備を行ない、三俣山荘から散策できるようにしてある。それでもやはりヤブっぽさは否めないが、注意して行動すれば多くの人が歩いていける程度だ。詳しくは山荘で状況を聞いてほしい。

深く険しい湯俣川。かつて、この谷には5つの吊り橋がつけられ、三俣山荘と湯俣をむすぶ伊藤新道として多くの登山者が行き交っていた

だが僕はさらに先へと踏み込み、かつてのルートをたどって湯俣川の河床へと向かった。三俣山荘がある標高2550mから数百m下ると雲の下になり、明るさが増してくる。そして目の前には、湯俣川が削り取ってできた深い渓谷の絶景が! 赤茶けて荒々しい硫黄尾根の大迫力だ。伊藤新道が復活すれば多くの登山者がこの景色を堪能できるのかと思うと、今から気分が高揚してくる。本当にすばらしいんですよ、この道は!

とはいえ、調査を終えて標高を再び上げていくと、今度は完全に雨になってしまった。こういうときのテント泊は装備が濡れてしまうと、かなり厳しい。

テント周りで行動しているうちに、僕が持参したポリゴン4ジャケットもかなり湿ってしまった。いや、テストのために、あえて濡らした面もないわけではないのだが……。

じつはポリゴン4ジャケットの売りは、なんといっても水濡れへの強さなのである。実際、湿った状態でも保温力が過度に落ちることはなく、この点では確実にダウン以上。同様に水濡れに強いとされる化繊の中綿と比べても遜色はないようだ。むしろ絞ったときの水の抜け具合では上回るために、極度に濡れてしまった際の安心感は特殊シートを使ったポリゴン4ジャケットに大きなメリットがある。

内側には無用な縫製部分が見えず、まるでリバーシブルタイプのようだ。このために腕を通す際にもつれることがなく、レイヤリング時にストレスがない
袖のデザインは非常にシンプル。だがその部分の伸縮性素材は、外側に対して内側が幅広い。保温シートをできるだけ手先部分にまで伸ばしつつ、フィット感も重視するという工夫である

この点は下山してからペットボトルの水を使って再テストした際にも確認済みだ。乾燥のスピードもすばらしく、晴れているときに干していたら、すぐに湿り気はなくなった。
見た目のボリューム感ほどの保温力は期待しないほうがよいかもしれない。だが湿っていても一定の暖かさを保ち、完全に濡れてしまっても乾きが速い。単に保温力だけを重視するならば他の防寒着でもよいだろうが、悪天候時の安心感を重視する人にはポリゴン4ジャケットはありがたい存在になりそうだ。

水濡れへの強さをテストすべく、ペットボトルに入れた水を振りかけ、さらには内部に浸透させてみた。その結果、丹念に絞れば多くの水が抜け、乾燥も速いことが確認できた

下山時は西鎌尾根を経由し、あえて遠回りをして新穂高温泉へ向かった。少しでも晴れる瞬間があることを期待し、奥丸山から穂高の山々の眺望を楽しみたかったのだ。しかし結局は強風・強雨で体がふらつくほど、ひどい天気であった。素直に新穂高温泉へ直行したほうがよかったか。

下山時に通った奥丸山がある中崎尾根からのカット。好天時は穂高連峰の風景がすばらしいのだが、今回は歩くのがやっとという悪天候だった

だが、伊藤さんのインタビューと伊藤新道の調査は無事完了しているのが救いだ。その成果は数ヶ月内に『山と渓谷』で発表する予定になっている。期待していただきたい。

 

防寒具 記録・ルポ
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『山道具 選び方、使い方』(枻出版)ほか著書多数。

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