杓子山でムラサキセンブリの可憐な花と富士山の雄大な絶景が待つ爽快ハイキング

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杓子(しゃくし)山は富士五湖の山中湖畔、忍野村の北にあり、山頂からの雄大な富士山の展望で知られています。また高座(たかざす)山は、関東には数少ないムラサキセンブリの自生地があり、可憐な花を愛でることができます。

文・写真=奥谷 晶

今回は、澄み切った晩秋の青空の下、鳥居地峠から高座山を経由して杓子山をめざすコースを選びました。

出発点は鳥居地峠。林道をしばらく登ると、すぐにカヤトが広がる尾根に出ます。道の脇にはノコンギク、リンドウやヤマラッキョウ、カワラナデシコなどの秋の花々が迎えてくれます。

左 ヤマラッキョウ/右 ノコンギク

道は柔らかい粘土質のため、雨の後など、非常に滑りやすく注意が必要です。山頂直下の急坂など、ところどころにはトラロープが設置されていますが、あまり役に立ちそうではありません。トレッキングポールがあると安心です。

尾根は大きく開けていて、隠れることのない富士山の秀麗な姿が現われます。10月末から11月にかけては特に空気が澄み切っていて、くっきりと美しい姿を捉えることができます。

高座山への尾根道にでると富士山が姿を見せる
高座山への尾根道に出ると富士山が姿を見せる

高座山山頂へのカヤトが広がる道の脇で、ひっそり咲くムラサキセンブリを見つけることができました。小さな紫の星形の花びらが可憐です。気をつけないと見逃しそうです。

カヤトの草原が広がる高座山への登路
カヤトの草原が広がる高座山への登路
関東ではめずらしいムラサキセンブリ
関東ではめずらしいムラサキセンブリ

高座山山頂からは岩混じりの登山道となり、木立の中を大ザス峠まで緩やかに登ります。最後に急登を登り切れば杓子山山頂に出ます。標高1597mの頂上からは三六〇度の大展望が楽しめます。とりわけ忍野村の集落を眼下にしてそびえる冠雪した富士山は堂々として雄大です。

杓子山山頂よりのぞむ富士山。眼下に広がるのは忍野村の集落
杓子山山頂より望む富士山。眼下に広がるのは忍野村の集落

帰路は不動湯へのコースをとり、鳥居地峠へ戻りました。

MAP&DATA

高座山地図

コースタイム:鳥居地峠~高座山~大ザス峠~杓子山~大ザス峠~不動湯~鳥居地峠 :約5 時間40分

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この記事に登場する山

山梨県 / 道志山塊

杓子山 標高 1,597m

 山中湖の北、忍野村の北面の山々の尾根歩きは楽しい。カヤトの原の上下もさることながら、富士山の眺めがいい。小林経雄氏の『富士の見える山』によると、富士の北東から北北東の間、20度の範囲から眺めるのが雄大だという。その範囲にぴたりと収まる杓子山。しかも最至近距離ときている。それに裏側の不動ノ湯を経て、頂上下まで林道が使える。この林道の終点で目指す杓子山を見ると、大きなガレが落ちている。シャクというのは、地崩れのことである。恐らく「シャク地の山」が山名の由来であろう。  頂上には、テーブル、ベンチの脇に三等三角点と赤い屋根の小祠、「御祖代山杓子宮」と杓子型の立て札がある。眺めがいい。雲取山から西に奥秩父の山々。西は南アルプス、御坂の山。毛無山の東には富士山。余りにも大きい。  富士吉田駅から3時間で山頂へ。

プロフィール

奥谷晶

30代から40代にかけてアルパイン中心の社会人山岳会で本格的登山を学び、山と溪谷社などの山岳ガイドブックの装丁や地図製作にたずさわるとともに、しばらく遠ざかっていた本格的登山を60代から再開。青春時代に残した課題、剱岳源次郎尾根登攀・長治郎谷下降など広い分野で主にソロでの登山活動を続けている。2013年から2019年、週刊ヤマケイの表紙写真などを担当。2019年日本山岳写真協会公募展入選。現在、日本山岳写真協会会員。

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