早春のお花見が楽しみな秩父・宝登山 下山後は秩父名物の豚みそを味わう
山頂に梅林が広がる秩父・宝登山。心地よい丘陵散歩で山頂をめざし、下山後は秩父の名物グルメでお腹を満たした。
写真・文=西野敏子
冬が近くなると、今年はいつ宝登山へ行こうかと思いをめぐらせる。山頂の梅林は、まず1月に黄金色のロウバイが咲き始め、2月に入ると紅白の梅が咲き乱れる。花のよい香りが漂う梅林の中を歩くのが楽しみだし、時季を同じくして咲くフクジュソウもかわいらしい。山頂からは武甲山や両神山など秩父の名峰が見渡せ、運がよければ武甲山も山麓もうっすら雪をかぶっていたりする。
秋の初め、ガイドブックの取材で宝登山を歩いた。秩父鉄道野上駅から秩父鉄道に並行して延びる尾根道は「長瀞アルプス」と呼ばれている。アルプス?と思う丘陵歩きだが、冬は葉を落とした木々の間から周りの山々が見渡せる。今回はまだ葉が落ちておらず、それでも緑に囲まれた尾根道は心地よかった。
モデルコース:
コースタイム:野上駅(15分)萬福寺(1時間15分)奈良沢峠(40分)宝登山(40分)宝登山神社(15分)長瀞駅 合計3時5分
炭火の香りもたまらない、炙り豚みそ重
山麓の宝登山神社で無事下山のお礼をして、長瀞駅に向かう。
歩き始めが早かったので、下山をしたらちょうどよいお昼どき。どこでご飯を食べて帰ろうかと逡巡し、宝登山神社を出てすぐのところの食事どころ「ガーデンハウス有隣」に入ることにした。店の前に料理の写真付きの看板。そば、炙り豚みそ重、わらじかつ丼・・・どれも心ひかれるではないか。
古民家を思わせる和のたたずまい。洗練された雰囲気が感じられ「山帰りですけど入っていいですか・・・?」と一瞬戸惑うが、お店に入ると優しい笑顔のスタッフさんに出迎えられてほっとする。広い店内、小上がりとテーブル席があるが、テーブル席に案内してもらった。
メニューを開くが、食べたい物はもう決まっている。看板に「炭火でこんがり」とキャッチフレーズが書いてあった、炙り豚みそ重にする。速攻で注文。はぁ、お腹がすいた・・・。
秩父の名物グルメ、わらじカツ丼と並んで人気が高いのが豚肉の味噌漬けだ。かつて秩父の猟師たちは、猟で獲った猪の肉を保存するのに味噌漬けにしていて、その技法を今は豚肉にも用いているのだという。豚味噌丼が味わえる店は秩父地域に多く、土産物としても人気が高い。
待つことしばし、炙り豚みそ重、登場。
丼ではなく重箱なのが上品な感じ。味噌汁と漬物付き。漬物は秩父名物のしゃくし菜漬けだ。付け合わせが地元素材や地元名物のものだとうれしくなる。
重箱のふたを開けると、ふわぁーっと炭火の匂い! 食べる前に匂いでノックアウト、お腹がぐぅっと鳴った。てりてり、つやつやに輝く豚肉がいい感じ。さっそく、豚肉とご飯を一口。・・・おお、肉が柔らかい。味噌の甘みとしょっぱさのバランスがよい。味がしっかりついているのにくどくない。ご飯が進む味だね。というか、豚肉の味噌漬けと白飯って本当に素敵な組み合わせ、無限に食べたい(無理だけど)。
あいまにしゃくし菜漬けを一口。独特の酸味と、シャキシャキの歯ごたえ。味噌漬けの豚肉としゃくし菜、絶妙の組み合わせだな。
幸せな気持ちで食べ進めていく。味噌の味わいがいいし、肉じたいもいい。やわらかい国産ロース肉を使っているといい、たしかにご飯との相性がいいのだ。肉が上質だからだろうか、脂身の部分もさっぱりといただける。
幸せな気持ちで満腹。ごちそうさまでした。
いつもお店の前を素通りして帰っていたけれど、お昼どきに重なることがあったら、いやなんとか重なるように山行を計画して、また食べにいきたいな。そばやわらじカツ丼も美味しそうだし、冬季限定のおっきりこみうどんも気になる。
好きな山の麓に、また行きたくなる店が増えてよかったな。ありがとう。
店名:ガーデンハウス有隣宝登山神社からすぐ、表参道沿いに立つ食事どころ。わらじカツ丼や秩父豚みそ、そばなど秩父の名物グルメや地場の食材を使ったメニューが味わえる。電話:0494-66-0951住所:埼玉県秩父郡長瀞町長瀞704アクセス:秩父鉄道長瀞駅から徒歩10分
プロフィール
西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)
初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きからアルパインクライミングまで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。
下山メシのよろこび
登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。