天気に恵まれた晩夏の富士登山。下山後は富士山モチーフのグルメを満喫

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標高日本一の山、富士山。富士宮ルートから山頂をめざし、富士スバルライン五合目で「富士山グルメ」を満喫した。

写真・文=西野淑子

思い立って富士登山

8月末、そうだ、富士山に登ろうと思い立った。

昨年は富士吉田の北口本宮冨士浅間神社から山頂をめざした。

今年は普通に五合目から。今まで登頂したことがない、富士宮ルートで登ることにした。新幹線の新富士駅から路線バスで富士宮の五合目に向かい、登山口で入山料を支払い、スタート。平日だからか登山者は少なめ、でも富士宮ルートは登山道と下山道が同じで、下山者とのすれ違いがある。疲れてよろよろ下ってくる登山者とすれ違うときに少し緊張する。

富士宮口/元祖七合目から宝永山方面
富士宮口/元祖七合目から宝永山方面を望む
お鉢
迫力満点のお鉢

元祖七合目の山口山荘で快適に宿泊し、翌朝は3時半ごろに小屋を出発。九合目の山小屋の前で御来光を眺め、順調に富士宮口頂上へ到着。剣ヶ峰で写真を撮るのに1時間ほど並んだが、天気がよかったのでまあいい。無事に記念写真を撮り、お鉢を歩いて吉田口頂上へ向かう。扇屋で富士山写真家の小岩井大輔さんにご挨拶をし、下山に向けて豚汁をいただく。具だくさんでコクのある豚汁、元気いっぱいになった。

剣ヶ峰の記念撮影渋滞
剣ヶ峰の記念撮影渋滞。到着まで1時間かかった
扇屋の豚汁
吉田口頂上、扇屋の豚汁。いつ食べてもおいしい

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:1泊2日
コースタイム:【1日目】2時間25分
【2日目】8時間
行程:【1日目】
富士宮口五合目・・・六合目・・・七合目
【2日目】
七合目・・・八合目・・・富士宮口頂上・・・剣ヶ峰・・・須走口・吉田口頂上・・・八合目(下山道分岐)・・・六合目・・・富士スバルライン五合目
総歩行距離:約13,600m
累積標高差:上り 約1,604m 下り 約1,686m
コース定数:40

見た目が楽しいだけじゃない、味も申し分ない富士山グルメ……

下山は吉田ルートへ。歩きやすい砂地の道をざくざく下り、富士スバルライン五合目に到着。

今日は富士山みはらしでカレーを食べて帰る。下り始めるときから決めていた。 富士スバルライン五合目、ロータリーを囲むように立ち並ぶ施設のひとつ。1階が売店で、2階が食堂。昨年は下山後にこの店でラーメンを食べた。今年はカレーがいいなと思っていた。

富士山みはらし
富士スバルライン五合目に富士山みはらしが立つ
写真付きの看板
おすすめメニューは写真付きの看板

昼どきだったが、運よく並ばずに入ることができた。 入口の券売機で食券を買う。富士山ガパオライスや富士山ラーメンなど、「富士山」モチーフのメニューが多くて、メニュー看板の写真を見ているだけでうれしくなる。アルコールとおつまみの「おつかれさまセット」に心ひかれるが、お腹が空いていてしっかり食べたいので、お目当ての「噴火カレー」にする。

店内はガラス張り、窓の外からは人でにぎわう五合目のロータリーが見下ろせる。広々としたテーブル席で、登山を終えて一息ついている人、これから登山をスタートするらしい人が入り交じっている。海外の人も多いな、やっぱり。いろいろな国の言葉でざわめく店内が心地よい。

「富士山みはらし」の店内
明るいガラス張り、広々とした店内
入口の富士山絵てがみコーナー
入口の富士山絵てがみコーナー。すてきな作品がたくさん

さほど待たずに番号が呼ばれる。噴火カレー、いただきます!

名物の噴火カレー
名物の噴火カレー。野菜や小鉢がうれしい

富士山のように高い山になった白飯に、カレーが掛けられている。山頂や山麓?にちりばめられた真っ赤な福神漬けが「噴火」の雰囲気に彩りを添える。レタスとキャロットラペ、野菜がたっぷり添えられているのが、下山後にはうれしい。小鉢はザーサイと冷奴。さりげなく栄養バランスも考えられているじゃないか。

カレーと福神漬け
カレーと福神漬けが「噴火」の雰囲気をかもし出す

シャキシャキのレタスを噛み締め、冷奴を味わい、いよいよ本丸のカレーへ。白飯の山をちょこっと崩し、カレーとともに一口。辛過ぎない、うまみとコクが強めのカレーだ。カレールウはちょうどよいさらさら加減、ご飯がどんどん進んでしまうね。ザーサイの塩味と食感も変化があっていい。冷奴はしょうゆではなくゴマドレッシングがかかっているのも好き。スプーンとフォークは持ち手に「富士山」の焼印。細部にもこだわっているよねえ……。

本当にお腹がすいていたようで、あっという間に食べ終わってしまった。誰かが「カレーは飲み物」って言っていたけど、空腹の下山後は本当にそうなのかもしれない。

バスの時間まではもう少しある、コーヒーでもいただこうかな……と思ったら、隣の外国人グループの人たちが食べているスイーツが目についてしまった。あれは富士山サンデーだね、おいしそうじゃないか。……衝動的に券売機に向かい、富士山サンデーを購入。

富士山サンデー
彩りがよい富士山サンデー

ソフトクリームにベリーのソースがたっぷりかかっているのは、やっぱり噴火モチーフなんだろうか。添えられているクッキーが、ちょっと富士山ぽい。フローズンのマンゴーも存在感があるね。ソフトクリームやアイスクリームがみっしり詰まり、底はコーンフレーク。アイスクリームとベリーソースを和えながらサクサクと食べる。味も食感も楽しめる、すてきなスイーツだな。

楽しかった富士登山を、おいしい富士山グルメで締めくくることができた。満足!

ちなみに、富士山サンデーを食べたら、オリジナルのコースターが付いてきた。コルクのコースターは今、私の仕事部屋でコーヒーカップを置くのに使っている。見るたびに、楽しくておいしかった富士登山を思い出し、ふふっと笑ってしまうのだ。

富士山みはらし

富士山みはらし

富士スバルライン五合目に立つ山小屋。1階はギフトショップとカフェ兼コーヒー焙煎所。2階の食堂は富士山にちなんだフードからスイーツまでメニュー豊富。

所在地 山梨県富士スバルライン五合目
TEL 0555-72-1266
営業期間 ギフトショップは富士スバルラインの営業期間に準じる。カフェ、食堂は天候により変動

この記事に登場する山

山梨県 静岡県 / 富士山とその周辺

富士山・剣ヶ峰 標高 3,776m

 日本の山岳中、群を抜いた高さを誇る富士山は、典型的なコニーデ式火山。いずれの方向から眺めても円錐形の均整のとれた姿は美しく、年間を通して人々の目を楽しませてくれる。東海道本線や新幹線の車窓から見ると、右手に宝永山、左手には荒々しい剣ガ峰大沢が望め、初めて見る人の心を奪う。  昔は白装束姿で富士宮の浅間(せんげん)神社から、3日も4日もかけて歩き通したという話を古老から聞いたことがある。現在では、富士宮と御殿場を富士山スカイラインが結び、途中からさらに標高2400m辺りまで支線が延びているので、労せずして雲上の人になれる手近な山となった。  日本で一番高い山、美しい山であれば、一生に一度は登ってみたい願望は誰にでもある。7月、8月の2カ月間が富士登山の時期に当たり、7月1日をお山開き、8月31日を山じまいと呼ぶ。  山小屋や石室が営業を始めると、日本各地や外国の人々も3776mの山頂を目指して集まってくる。特に学校が夏休みに入り、梅雨が明けたころから8月の旧盆までは、老若男女が連日押し寄せ、お山は満員となり、登山道は渋滞し、山小屋からは人があふれる。  富士宮口から登ろうとする場合は東海道新幹線の新富士駅、三島駅などからの登山バスで五合目まで行き、自分の足で山頂へ向けて歩きだすことになる。山梨県側には吉田口があり、東京方面からの登山者が多い。  目の前にそびえる富士山はすぐそこに見えるため、山の未経験者は始めからスピードを出しすぎ、7合目か8合目付近でたいていバテてしまう。登り一辺倒の富士山は始めから最後まで、ゆっくり過ぎるほどのペースで歩くことがコツである。新6合から宝永火口へ行く巻き道が御中道コースで、標高2300mから2500mを上下しながら富士山の中腹を1周することができたが、剣ガ峰大沢の崩壊で通行不能になっている。  山慣れたパーティならば新6合から左に入り、赤ペンキや踏み跡を拾いながら、いくつもの沢を渡り3時間もかければ大沢まで行くことができる。辺りは樹林帯で、シャクナゲの群落やクルマユリやシオガマなどの高山植物が咲く。  9合目右側の深い沢に残る万年雪は、山麓からも見ることができる。富士宮口を登りつめると正面に浅間神社奥ノ院がある。隣は郵便局。もうひとふんばりすると、最高地点の剣ヶ峰。山頂にはかつては毎日データを送り続けていた気象観測所跡が残っている。天候に恵まれたならば噴火口の周囲を歩く御鉢巡りが楽しめる。

プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きから沢登り、雪山登山まで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

下山メシのよろこび

登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。

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