開運祈願! 初春の奥武蔵・高麗郷を巡る初詣ハイキング

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いよいよ2024年。歴史薫る初春の奥武蔵・高麗郷の野山をハイキングしながら、初詣で開運祈願はいかがだろうか。東京から鉄道でアクセスしやすい日和田山と、山麓の古刹・古社、巾着田を巡るハイキングコースを紹介しよう。

文・写真=西村 健(山と溪谷オンライン)

開運出世の高麗神社を詣でる

聖天院を後にして、民家の間を縫って、カワセミ街道と並行する小道を行くと、高麗神社の参道に合流する。高麗神社の主祭神は高麗王若光で、代々宮司を務める高麗家は、その若光の子孫といわれている。地元の氏神さまとして信仰され、10月の例祭で氏子たちが奉納する獅子舞が有名だ。

一方で、高麗神社は遠方からの参拝者も多い。政治家、文学者、歴史家、文化人といった各界で活躍する有名人が訪れており、参道の芳名録を見ると、錚々たる顔ぶれに圧倒される。特に政界では、参拝後に首相となった政治家が相次いだことから「出世明神」の神社として評判になった。毎年正月には開運を願う参拝客が長い列をつくっている。

高麗神社本殿
高麗神社本殿
10月の例祭で奉納される獅子舞
10月の例祭で奉納される獅子舞

この高麗神社にも白御影石の将軍標があるほか、扁額には「高句麗神社」(句の字は小さい)とあり、やはり高句麗との繋がりを随所に見ることができる。

高麗神社では元日から3日まで正月特別大祈祷が行われ、境内は大変なにぎわいとなる。一息つきたくなったら、神社の裏手にある国指定重要文化財・高麗家住宅に立ち寄ろう。17世紀後半(江戸時代前半)の建築とされ、埼玉県の民家の中では非常に古いものだ。

「高句麗神社」の扁額
「高句麗神社」の扁額
国指定重要文化財の高麗家住宅
国指定重要文化財の高麗家住宅

清流のほとりを歩いて巾着田へ

高麗神社からカワセミ街道を少し戻り、高麗川沿いを歩いて巾着田をめざそう。高岡橋でいったん川を渡り、住宅地の道を少し歩くと、厳島神社の前に出る。そこから川沿いの遊歩道を進む。途中にはかつて渋沢栄一が深谷から江戸をめざした際に歩いたという古道が竹林の中に残されている。運がよければ澄んだ声で鳴きながら水面を飛ぶカワセミに出会うことができるかもしれない。

遊歩道は県道の橋の下をくぐり、上り坂の上で高麗郷民俗資料館の前に出る。正月は閉館しているが、高麗地区の歴史や養蚕、茶の栽培といった産業、生活様式などを紹介する展示が興味深い。

高麗川の清流を眺めながら遊歩道を歩く
高麗川の清流を眺めながら遊歩道を歩く
歴史や産業に触れられる高麗郷民俗資料館(年末年始休館)
歴史や産業に触れられる高麗郷民俗資料館(年末年始休館)

資料館の裏手にある日本最大級の木造トラス橋「あいあい橋」で高麗川を渡り、巾着田の内側に降り立つ。その名の通り、高麗川が巾着のシルエットのように大きく蛇行した内側に広がるのが巾着田で、かつては一面水田だったという。現在は水田や畑、牧場、グラウンド、公園などとして利用されているほか、川沿いの林の林床には22ヘクタールに500万本という国内最大規模の曼珠沙華(ヒガンバナ)自生地が広がる。冬は青々とした葉が繁るのみだが、9月の彼岸ごろには一帯が燃え上がるような大迫力の花畑となる。

広々とした河原は絶好のピクニックスポットだ。ここでのんびり午後の時間を過ごしてから高麗駅に戻るのがおすすめだ。周辺には国の登録有形文化財となっている高麗古民家(旧新井家住宅)があるほか、カフェやコンビニもある。

日本最大級の木造トラス橋・あいあい橋
日本最大級の木造トラス橋・あいあい橋
巾着田から見上げる日和田山
巾着田から見上げる日和田山
江戸時代から明治時代にかけて建てられた高麗古民家(年末年始休館)
江戸時代から明治時代にかけて建てられた高麗古民家(年末年始休館)

MAP&DATA

ヤマタイムで周辺の地図を見る

参考コースタイム

西武秩父線高麗駅~日和田山登山口~男坂~日和田山~女坂~日和田山登山口〜聖天院〜高麗神社〜巾着田〜高麗駅:約4時間

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この記事に登場する山

埼玉県 / 奥武蔵

日和田山 標高 305m

西武秩父線の高麗(こま)駅のプラットホームから北に見える低山の中にある山で、中腹に赤い屋根の金毘羅神社が見える。この山を中心にして歩くハイキングコースは初心者向けのものだ。 日和田山から尾根通しに歩くと、一等三角点のある物見山に達する。さらにヤセオネ峠、岩舟地蔵、北向地蔵へと歩き、左へ小さな尾根と沢を越えてユガテに出る。ここは山中の平地で人家と畑があり、南方への展望もよく、思わず足を止めてみたくなる所だ。ユガテから樹林帯を下って車道に出たら、左へ歩くと虎秀で、道の左手に福徳寺阿弥陀堂がある。それは美しい鎌倉期の建築物で、国の重要文化財に指定されている。また日和田山の西麓は、ロッククライミングの練習場である。 コースタイムは高麗駅から日和田山、物見山を経て、ユガテに下り、東吾野駅まで約4時間。

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