冬山特有の遭難事故が増加中。コンディションや積雪量を考慮した行動を 島崎三歩の「山岳通信」 第326号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2024年1月11日に配信された第326号では、冬山特有の遭難事故が増加していることについて取り上げ、事前準備、積雪量を考慮した行動に加えて、登山口やスキー場などへ移動する際の車の運転などにも注意することを促している。

 

1月11日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第326号では、期間中に起きた9件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 12月25日、八ヶ岳連峰の権現岳で、単独で入山した24歳の男性が、三ツ頭登山口から入山して権現岳から赤岳に向けて縦走中に、雪が崩れスリップして滑落、負傷する山岳遭難が発生。男性は無事に救助された。

八ヶ岳連峰権現岳の遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)1月5日付
  • 12月26日、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳で、6人パーティで入山した43歳の女性が、美濃戸口から入山して南沢大滝でアイスクライミング中、バランスを崩して転落、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 12月27日、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳で、2人パーティで入山した28歳の女性が、行者小屋から美濃戸口に向けて下山中に、凍結した登山道で足を滑らせて転倒、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 1月1日、北アルプスの五竜岳で、単独で入山した28歳の男性が、山小屋周辺で幕営中に積雪でテントが埋まり、行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

  • 1月5日、八ヶ岳連峰の天狗岳で、3人パーティで入山した49歳の女性が、テント宿泊中に発病して行動不能となる山岳遭難が発生。女性は無事に救出された。

八ヶ岳連峰天狗岳付近での遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)1月9日付
  • 1月7日、八ヶ岳連峰の阿弥陀岳で、4人パーティで入山した53歳の女性が、広河原沢をアイスクライミング中に転落、負傷する山岳遭難が発生した。

八ヶ岳連峰阿弥陀岳での遭難現場/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)1月9日付
  • 1月7日、八ヶ岳連峰の横岳で、3人パーティで入山した55歳の女性が、三又峰ルンゼをアイスクライミング中、つかんだ木が折れてバランスを崩し転落、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 1月7日、八ヶ岳連峰の天狗岳で、8人パーティで入山した58歳の女性が、山小屋周辺を登山中に転倒、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 1月7日、中央アルプスの千畳敷で、4人パーティで入山した34歳と29歳の男性が、2人で宝剣岳から浄土乗越に向けて下山中にホワイトアウトにより道に迷い、行動不能となる山岳遭難が発生。2人は無事に救出された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス 

令和5年12月5週は、八ヶ岳連峰で3件の遭難が発生し、うち1件はアイスクライミング中に発生しています。

権現岳の遭難は、滑落後、積雪により身動きがとれなくなってしまったものです。遭難時、携帯電話の電波が通じたことにより救助を要請することができましたが、もし電波が通じなければ最悪の場合、行方不明になりかねない事案でした。遭難者自身は、冬山経験が少なく、食料や水分も不足していたため、当日のうちに救助ができなければ低体温症などにより命を落としてしまうリスクもありました。

冬山の単独登山は、複数人で入山するよりも非常にリスクが高いため、万一のトラブルやアクシデントに備えて十分な装備と食料などを携行してください。
そして、冬山装備は、お守りではなく、実際に有効活用できるよう装備品の取り扱い方法や使用判断については事前に習熟しておきましょう。

令和5年中の長野県内の山岳遭難は、302件発生し、遭難者数は332人で、過去最多を記録しました。「無事帰宅するまでが登山」です。令和6年も安全登山でお願いします。

令和6年1月1週は、6件の山岳遭難が発生しました。積雪による行動不能や、アイスクライミング中の転落、ホワイトアウトによる道迷いなど、いずれも冬山特有の遭難でした。

八ヶ岳連峰では、徐々に気温が低くなり、アイスクライミングに最適な時期になっていますが、アイスクライミングは、冬山経験にプラスして、技術・知識・体力が必要になります。アイスクライミングは、一度転落や滑落をすれば、骨折を伴う重傷以上のケガをしてしまうほど危険を伴いますので、アイスクライミングを行なう際は、ルート判断、確実な支点構築を行ない、登攀中は一歩一歩慎重な行動を心掛けましょう。

中央アルプス千畳敷での遭難は、ホワイトアウトにより方向を見失い、道に迷ってしまったものです。当日は、冬型の気圧配置が強まり、吹雪が予想されていました。このような状況で行動をすれば、ホワイトアウトによる道迷い、低体温症のリスクが高くなります。気象遭難に遭わないためにも事前の気象情報の確認と慎重な判断をお願いします。

1週末は、長野県内北部地域を中心に市街地でもまとまった積雪が確認され、路面が凍結している箇所があります。今後、登山やバックカントリーに出掛ける際は、積雪量を考慮した行動を心掛け、登山口やスキー場などへ移動する際の車の運転にも注意しましょう。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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