南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く③ 歩き遍路の難所について
弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月に渡って通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。
写真・文=岸田 明 カバー写真=横峰寺道
鶴林寺道~太龍寺道~いわや道~平等寺道~大根峠
しかし、実は焼山寺道よりもその先、第二十番鶴林寺から第二十一番太龍寺を越え、大根(おおね)峠を経て第二十二番平等寺までを一日で歩ききる区間の方が厳しい。全長約19.2km、登り下り各々累積標高約1780mある。筆者も初回の遍路では、鶴林寺から太龍寺の区間は体調がよくなかったのと、ゆっくりお参りしすぎて太龍寺越えで時間切れになり、大根峠は翌日に回した経験がある。
首都圏でいうと中央本線初狩駅から高川山を越えて麓に降り、禾生(かせい)駅を抜けて九鬼(くき)山に登り返し神楽山まで縦走して猿橋駅に降りる行程に近いか、それ以上に厳しい。山歩きに慣れていない人は、ここか、あるいは類似した特性をもつ山や尾根ルートを探し、ぜひ歩いて体感してトレーニングに励んでほしいと思う。
難所箇所まとめ
最後に筆者が、歩き遍路の難所と思っている区間を以下にまとめてみた。なお遍路宿の廃業が急速に進んでいる現在、筆者としては冒頭に述べたように、遍路宿間の距離が非常に離れている区間も、難所と呼ぶべきだと考えている。この表では、高低差や距離などから算出されるコース定数をもとに順位をつけている。距離や累積の登り下り標高、コース定数のほか、筆者のコメントも付してあるので、参考にしていただきたい。
また、以下一覧の青字リンクよりヤマタイム地図で場所とコースデータを確認できる。 【遍路ころがしと呼ばれている区間(遍路道順)】 1 焼山寺道(徳島県) 2 鶴林寺道・太龍寺道(徳島県) 3 神峯(こうのみね)寺道(高知県) 4 横峰寺道(愛媛県) 5 雲辺寺道(香川県・徳島県) 6 白峯寺道(香川県) 【その他の峠越え・山寺などで歩くのが大変と思われる区間(遍路道順)】 1 そえみみず(高知県) 高知県須崎の南にある七子(ななこ)峠への尾根道 2 大月遍路道(高知県) 土佐清水市竜串から前半海岸線を歩き、月山神社に参拝して大月町に至る道 3 松尾峠(高知県・愛媛県境) 宿毛(すくも)から一本松への峠越え 4 灘道(柏坂)(愛媛県) 旧御荘(みしょう)町から津島町への峠越え 5 下坂場(しもさかば)峠~鴇田(ひわだ)峠(愛媛県) 内子から久万高原への登り 6 八丁坂(愛媛県)岩屋寺への峠越え 7 三坂峠(愛媛県) 久万高原から麓の浄瑠璃寺まで 8 三角寺(愛媛県) 長いトラバース道の途中にある霊場 9 白峯寺~根香(ねごろ)寺(香川県) 高松市の西・五色台の縁にある両寺をつなぐ 10 大窪寺(香川県) 女体山の山頂を越えた直下にある。結願の寺
以上、遍路道の難所について述べてきたが、次回からのコラムでは県ごとのトピックスに触れていく予定である。
プロフィール
岸田 明(きしだ・あきら)
東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。
四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/歩き遍路旅の魅力と計画アドバイス
登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスと、その記録
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