バックカントリーの魅力とリスクは表裏一体であることを忘れずに入山を 島崎三歩の「山岳通信」 第329号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2024年2月8日に配信された第329号では、期間内の事故がすべてスキー場管理区域外への迷い込みを含むバックカントリーで起きていることを指摘、あらためて魅力の裏に潜むリスクを認識するよう呼びかけている。

 

2月8日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第329号では、期間中に起きた5件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 1月22日、下高井郡山ノ内町大字平隠の山林内で、スキー場を滑走していた32歳の男性が、管理区域外へ迷い込み、道に迷って行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

  • 2月2日、毛無山で、バックカントリーを滑走していた32歳の男性と23歳の女性が、道に迷って行動不能となる山岳遭難が発生。2人は無事に救出された。

  • 2月2日、毛無山で、バックカントリーを滑走していた55歳の男性が、道に迷って行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

  • 2月2日、毛無山で、バックカントリーを滑走していた63歳の男性が、道に迷って行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

  • 2月3日、瑪瑙山で、バックカントリーを滑走していた51歳の男性が、道に迷って行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

1月4週は、1件の山岳遭難が発生しました。スキー場を滑走していたところ、管理区域外へ迷い込んで行動不能となったものです。
スキー場の立入禁止エリアを滑走中、立木に衝突したり、他の滑走者と衝突するといった、スキー場内での事故も発生しています。
スキー場には、滑走禁止エリアや管理されていないエリア(管理区域外)があります。スキー場を利用する際は、スキー場が定めるルールとマナーを守り、他の滑走者との衝突に注意して安全に滑走しましょう(管理区域外での怪我や道迷いは山岳遭難です。)

2月1週は、4件の山岳遭難が発生し、全てバックカントリー中の遭難でした。
2月に入ってから、バックカントリー中の遭難が多発しています。1週の遭難は、スキー場を滑走する感覚でバックカントリーエリアに出て、現在地が分からなくなってしまったものです。日没間際の救助要請だったため、翌朝、救助隊が到着するまで遭難者らはその場でビバークをせざるを得ない状況でしたが、冬山装備やビバーク装備等の携行はありませんでした。
状況によっては、低体温症で命を落としてしまう危険もあるため、バックカントリー滑走の際は、最低限のビバーク装備を携行してください。

バックカントリースキー・スノーボードは、管理されたスキー場内と異なり、自然の山の中を滑走するため、スキー場では味わえない開放感が魅力ですが、その魅力とリスクは表裏一体であることを忘れてはいけません。
山中では、天候や気温、標高によって大きく状況が変化します。単純な滑走能力だけではなく、山中で安全に行動するための判断力と経験が必要になります。スキー場からバックカントリーエリアへ出る場合は、「冬山」へ踏み込むという認識を持ち、事前に地図等でルートを確認するなどしっかりとした計画を立てて、届出をし、冬山装備や雪崩対策装備、ビバーク装備等を携行した上で慎重な行動をお願いします。

 

スキー場及びバックカントリーエリアにおける日本人向け安全啓発動画

長野県では、スキー場及びバックカントリーエリアにおける安全啓発動画を日本人向けにも公開しています。

長野県内のスキー場利用の注意点、バックカントリースキーの魅力とリスクや安全に楽しむ方法について、ぜひ事前にご覧ください。

スキー場編

バックカントリー編

⇒長野県山岳総合センター啓発動画一覧
(長野県山岳総合センター Youtubeチャンネル)

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

⇒バックナンバーはコチラ!

島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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