雪崩が発生しやすくなっている今、事前に雪の状態や雪崩注意報の発出状況の確認を 島崎三歩の「山岳通信」 第332号

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長野県が県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。2024年3月6日に配信された第332号では、雪崩遭難事故について言及。寒暖差や急な降雪により雪崩が発生しやすくなっている今、事前に雪の状態や雪崩注意報の発出状況を確認して、入山を控える判断の必要性を説いている。

 

3月6日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第332号では、期間中に起きた5件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。

  • 3月2日、北アルプスの風吹岳で、異なるパーティで入山していた10人のうち38歳の男性と53歳の男性が、バックカントリースキーのため風吹岳に向けてハイクアップ中に雪崩に巻き込まれる遭難事故が発生した。

北アルプス風吹岳での雪崩遭難現場の様子/長野県警察本部 ホームページ 山岳遭難発生状況(週報)3月4日付
  • 3月2日、北アルプスの小遠見山で、2人パーティでバックカントリーを滑走していた55歳の男性が、雪崩に巻き込まれて負傷する山岳遭難が発生した。

  • 3月2日、毛無山で、単独でバックカントリーを滑走していた34歳の男性が、道に迷い行動不能となる山岳遭難が発生。男性は無事に救出された。

  • 3月2日、中央アルプスの千畳敷カールで、2人パーティで入山していた45歳の男性が、八丁坂を登山中にスリップして滑落、負傷する山岳遭難が発生した。

  • 3月3日、北安曇郡小谷村地籍の鵯峰で、5人パーティでバックカントリーを滑走していた47歳の男性が、立木に衝突して負傷する山岳遭難が発生した。

 

長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス

3月1週は、5件の山岳遭難が発生し、うち4件がバックカントリー中の遭難でした。

北アルプス風吹岳の雪崩遭難は、雪崩発生時、現場に居合わせたほとんどの人が雪崩に巻き込まれています。幸い自力で脱出したり、仲間によって救出されたりしたことにより、救助された2人を含め無事が確認されました。

この時期は、寒暖差や急な降雪により雪崩が発生しやすくなっています。雪崩発生時の雪が滑り落ちる速度は、新幹線と同じくらいとされ、衝撃の強さはトラック1台分の重さと言われています。
このような速度の雪に巻き込まれてしまったら・・・、雪に埋もれて窒息するだけではなく、深刻な外傷を伴うこともあります。
冬山では、いつどこで雪崩が発生するかわかりません。「過去に雪崩が発生していないから大丈夫」という保証はどこにもありません。入山や滑走前に雪の状態を確認し、事前に雪崩注意報が発出されている場合は、入山を控えることも大切です。

中央アルプスでは、滑落遭難も発生しています。朝晩と日中の寒暖差により、凍結した雪面と岩が混在しているため、非常に滑りやすくなっています。特に下山は集中力が散漫になりやすく、一歩足を滑らせてしまうと凍結した斜面で止まることなく滑り落ちてしまいますので、アイゼンとピッケルをしっかりと利かせるとともに、なによりも滑らないことが大切です。

プロフィール

島崎三歩の「山岳通信」

信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。

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島崎三歩の「山岳通信」

長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。

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