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手足が出る冬用シュラフを初冬の木曽駒で試す フェザードフレンズ/ウィンターレン[Mondo Japan]

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2016年11月25日

今月のPICK UP フェザードフレンズ/ウィンターレン [Mondo Japan]

価格:5万2,000円+税
重量:936g
使用温度域:-4℃
※ロングサイズもあり

メーカーサイトへ >>

誰もいない木曽駒のテン場でシアトル産シュラフをチェック

そろそろ本格的に雪山の季節だ。昨シーズンは記録的に雪が少なかったが、今季はどうなるのだろうか?
先駆けて冬の山を楽しもうと、僕が今回向かったのは中央アルプスの木曽駒ヶ岳。テントで1泊するために大型ザックに冬季用の寝袋を詰め込み、駒ヶ岳ロープウェイでまずは千畳敷へ向かった。

千畳敷まで上がると、積雪量は10~20cmといったところ。しかし雪が凍結して滑りやすい箇所もあり、アイゼンを装着しないと歩行が不安定だ。一方で、強風が吹きつける場所は岩が露出しており、アイゼンをつけたままでは歩きにくい。初冬らしい中途半端なコンディションなのであった。

千畳敷はほぼ無風だったが、乗越浄土まで進むと急激に風が強まった。その風に逆らうように中岳まで進むと、とうとう木曽駒ヶ岳の山頂が現れる。

その下には、今期の営業を終えた駒ヶ岳頂上山荘。今回はその前のテント場で1泊する予定である。

山荘前に到着すると、早速テントを設営する。この強風の影響を受けやすいテント場には、風除けの石垣がいくつも築かれており、僕はそのなかのひとつを利用した。

強風で吹き飛ばされてこの近くの積雪量はそれほどでもないが、石垣の風下側は雪が吹き溜まっており、ショベルで掘り込んでテント設営のスペースを作り出す。こうすればテントが風で吹き飛ばされる心配はないが、その代わり再び雪が吹き溜まる可能性は出てくる。悪天候下で居心地が悪くなったとしても、今回は安全性の高さをとったわけだ

さて、今回持参した寝袋はアメリカのシアトルに本拠地をもつフェザードフレンズの「ウィンターレン」。ダウン製品で名高い同社の製品の中でも、とくに興味深い特徴を持つモデルだ。

付属のスタッフバッグに入れると、収納サイズは長さ30×直径9cmほど。容量にすれば9Lだ。中綿には超高質の900フィルパワーダウンが522g使用され、表地/裏地などを含めた総重量は936gである

スタッフバッグから取り出し、風が当たらない場所を探して雪の上に広げてみる。左の写真は通常の状態だが、注目してほしいのは右の写真。足元が広がっているのがわかるだろう。

じつは「ウィンターレン」は足先が巾着状になっており、開放することができるのだ。冬季用としては珍しい、ユニークな特徴である。

より足元に寄った写真は以下になる。

ドローコードで引き絞る仕組みだが、末端の生地にいくらかの余裕を持たせているため、絞ったときに隙間ができることはない。だから寝袋内部の暖気は逃げにくい。反対に暑苦しいときには簡単に足先を開け、内部温度を下げて快適に眠れるのである。

もうひとつの面白い特徴は、肩の部分だ。この部分にはファスナーが取り付けられ、足元と同様に開放できる。下の写真は寝袋を横から見た状態で、左ではファスナーを閉じており、右では開けている。

両肩のファスナーを同時に開けると、まるで寝袋を貫通したような姿になるのがわかるだろう。これは寝袋に入ったままで、両腕を外に出せるようにするための工夫だ。オートキャンプ用の寝袋などにはときどき見られるディテールとはいえ、山岳用途の寝袋ではほとんど見たことがない。また、腕を出さなくても、暑いときは換気用のベンチレーターとしても有効だ。このディテールの具体的な使用状態は、後ほどお見せしたい。

他の部分も確認しておこう。
フード部分にはかなり余裕がある。一般的な寝袋はもう少しシェイプされているが、これはほぼ半円形なのだ。

寝袋というものはできるだけ体に密着し、内部に無駄なスペースがないほうが温かい。その意味では、フードの保温力は少し下がっている可能性がある。だがフードで頭部を覆ったときの締め付け感が少ないというメリットもあり、このあたりは使う人の好き好きだ。

このフード部分は、一般的な寝袋と同様にドローコードで引き絞れる。コードストッパーの位置はちょうどアゴの部分になり、すぐに見つけられるので調整はしやすい。だが、寝ていると肌に触れて少々邪魔になりそうだ。

ファスナーも上まで完全に上げると同じようにアゴの位置にきてしまう。他の寝袋には、ファスナーが当たらないように生地で覆う工夫を加えたものが多いが、このモデルには見当たらない。フード部分はシンプルな構造にしようと、省略したのだろうか?

また、この寝袋のメインファスナーはサイドではなく、開け閉めがしやすいフロントについている。下の写真の左を見てもらえばわかるように、引き手はダブルになっており、腰のほうだけを開ければ、過度の暖気を逃がしてくれるベンチレーターになる。冬季用の保温力が高い寝袋ゆえ、それほど低温ではないときには適度に開けて使うと、蒸し暑さが軽減されて快適さが増すはずだ。

そして右の写真はこの寝袋を完全にひっくり返した状態。フロントファスナーの裏側にはダウンが入った縦に細長いチューブが取り付けられ、ファスナーを裏から覆っている。この仕組みで暖気がフロントファスナー部分から逃げるのを防いでいるのだ。
足元、肩、フロントがそれぞれ開閉できるウィンターレンは、気温が高いときも低いときも温度調整が非常にしやすいモデルといってよいだろう。

チェックを済ませた寝袋をテント内に収容し、木曽駒ヶ岳山頂へと出かけてみる。テント場から山頂までは15分程度だ。

南側には三ノ沢岳がそびえている。均整のとれた姿が美しく、僕の好きな山のひとつだ。初冬の中央アルプスに来た甲斐はある。

誰もいない山頂で記念撮影。この日は千畳敷から日帰り往復する登山者はいたが、小屋がすでに閉まっていることもあり、僕以外に山中で宿泊しようという人はいない。
雪が吹き飛ばされた山頂は写真で見る限りはのんびりしたものだ。だが、じつは風速10m以上と思われる強い風が吹いているのである。

西側には御嶽山も眺められた。この日は噴煙が立ち上がっているようには見えない。

実際にはいくらか噴煙が上がっている可能性はあるが、あちらも強風でガスが流されてしまい、確認できないだけなのかもしれない。それにしても、あの山頂に再び登れるようになるのは、いつになるのか。

シュラフから手足が出る自由。トイレも行けるのか!?

山頂からテントに戻り、一休みを兼ねて寝袋に入ってみる。
はじめにすべてのファスナーを閉じ、フードと足元のドローコードも引いてみる。完全防寒態勢だ。このモデルの対応温度は-4℃までとなっており、このときの気温は-2℃。薄手のダウンジャケットだけでも十分に温かい。

しかし、自分の体温が寝袋内にまわっていくに従って、今度は反対に暑くなってきた。そこでフードを外し、両腕を外に出してみる。すると体感温度が下がり、再び心地よい温度に。これでも暑ければ、さらにフロントや足元を開いて冷気を呼び込めばいいのである。

足元も見てみよう。写真に映りやすいように膝を曲げ、寝袋を少し上げて撮影しているが、左がドローコードで絞った状態で、右は開放して足先を出した状態だ。

この気温でこれだけ完全に足先を外に出していると、さすがに寒さを感じ始める。気温に応じて開き具合を変えたほうがよさそうだ。

こちらは寝た状態でのフロントファスナー。白く見えているのは、僕が着ているダウンジャケットである。

腕、足元、フロントまで広げると、ちょうど3シーズン用寝袋程度の保温力かもしれない。冬季用のボリュームある寝袋だけに1kg弱の重量をもつが、重さを気にしないのであれば春や秋も使うことができそうである。

腕や足先を出せるというウィンターレンの特徴は、保温力の調整がラクになるという長所を生み出すだけに限らない。

例えば読書をするときにもわざわざ上半身を外に出す必要はなく、寝袋と体の温かさはいつも守られる。僕は今回、天気予報を調べるためにたびたびスマートフォンを操作していたが、このように腕を簡単に出せることは非常に便利であった。

もちろん足元も開くので、寝袋に入ったままブーツを履くこともできる。

つまり、寝袋にくるまった状態で外にも歩いて出られるということだ。

というわけで、思い切って外へ。

足元は非常に大きく広がり、いつも通りの歩幅で歩くことすらできる。このときの写真では膝上ほどまでしか寝袋をずり上げていないが、裾を腰元まで上げてからドローコードを引いてもいい。すると上半身で固定された寝袋はもはやダウンジャケットのようになり、さらに動きやすくなるのである。極度に寒いときは、このままトイレにも行けなくはない。

夕食を食べると、夜が訪れた。この日の木曽駒ヶ岳山頂付近の予想気温は、深夜で-5℃くらい。ウィンターレンの適応温度と同程度だが、極度の寒がりの僕は分厚いダウンジャケットを着て寝袋に入った。

寝袋とダウンジャケットの色がほぼいっしょでわかりにくい写真になってしまったが、眠るまでのひとときはファスナーから腕を出し、本を読んだり、コーヒーを飲んだりして寛いでいた。

しかし天気が気になる。じつはこの夜、気温はそれほど下がらないものの、一方で風は強まり、最高では風速20mにもなるというのだ。しかも朝までの降水量は合計30mmほど。雨で30mmならば、雪に換算すれば約10倍の30cm近くになりかねない。テントのフライシートには強風が運んでくる雪が盛大にぶつかり、派手な音を立てている。そんななか、僕は若干不安になりながらも眠りについた。

寝袋の保温力は上々だった。ダウンのチューブで覆われたフロントのファスナー部分や、ドローコードで引き絞った足元はまったく冷たくない。肩のファスナー部分にはダウンのチューブでの覆いがないために、少しひんやりするのではないかと考えていたが、着込んだダウンジャケットのおかげなのか、こちらも一切気にならない。ただし、アゴのファスナーの引き具とドローコードのストッパーはやはり肌に当たり、いくぶん異物感を覚える。ここは少し改良してもらったほうがよさそうだ。

思わぬ悪天で熾烈な状況に……

僕は午前3時くらいまでは完全に熟睡していた。だが、明け方になるとなにやら頭と足が圧迫され、目を覚ましてしまった。テントの周囲に吹き溜まった雪で、テントがつぶされそうになっていたのである。しかも妙に温かい。温度計を確認すると、なんと3℃もあり、寝袋内の体は汗ばんでいる。天気予報よりも格段に温かくなってしまったのだ。

月明かりで照らされたテントの入り口を開け、フライシートの様子を見てみる。すると付着した雪は溶け、みぞれのような状態で張り付いている。フライシートの内側も結露でひどく濡れ、無雪期の豪雨に遭遇したとき以上にグチャグチャだ。こうなると、当然テント内もかなり浸水している。

寝袋を確認すると、表面生地の撥水力は充分に効いており、内部への浸透はないようであった。ほっとひと安心する。

しかし、撥水力がキープされていたのは2時間程度。その後は、生地の一部の撥水力は失われてしまった。あれだけぐしょぬれで、しかもつぶされそうなテントの生地に長時間擦れていたのだから、仕方ない。なにしろ、明け方の数時間は雪と風で押しつぶされそうになったテントの壁が顔に当たるほど、厳しい状況だったのだ。おそらく内部のダウンも少々湿ってしまったと思われる。だが、寝袋の表面から確認する限り、「濡れた」というほどではなかったようだ。それにしても、非常に過酷な状況で使ってしまったものである。

この一晩だけで判断するのは早計だが、ウィンターレンの保温力は十分そうである。もちろん、就寝時の気温や着用しているウェア、使う人の体質などによって寝袋内部の体感温度は大きく異なるため、どんなときでも温かく眠れるとまではいいがたい。だが、僕の今回の木曽駒ヶ岳で体感した気温はひとつの目安になるだろう。

個人的には、足と腕が外に出せるという構造がとても気に入った。冬山では一度でも温かい寝袋に入ってしまうと、もう寒い外には出たくなくなり、腕を出して本を読む気さえ失せてしまう。きれいな夕日や朝日の時間にもテントから出るのが億劫になり、写真を撮る気力も出てこない。だがこのモデルであれば、もっとアクティブに雪山でのテント生活を楽しめるはずだ。雪山用の最初の寝袋にはもっと軽量でオーソドックスなものがよいかもしれないが、僕自身はひとつ手元に持っていたいと思わされる寝袋であった。

テント用品 記録・ルポ
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『山道具 選び方、使い方』(枻出版)ほか著書多数。

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