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軽量ながら背負い心地抜群のバックパックで、南アルプス・日向山を歩く グレゴリー/パラゴン38

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2017年03月25日

今月のPICK UP グレゴリー/パラゴン38 [グレゴリー]

価格:24,000円 +税
サイズ:S/M、M/L
重量:1.36kg(S/M、M/L)
容量:38L(S/M、M/L)

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軽量ながら、背負い心地のよさにもこだわったバックパック

寒かった時期も終わり、山は完全に春の光になった。

今回、僕は八ヶ岳や甲斐駒ケ岳の絶好の展望台として知られる日向山へ。南アルプス最北端部にあたり、登山口からの最短ルートで往復する分には気楽に登れるが、コース取りによっては意外なほどハードになる山である。

そんな山行のお供は、グレゴリーの最新バックパック「パラゴン38」。バックパック界に確固たる地位を築いているグレゴリーの製品ラインナップなかでも、「ライトウェイト」を意識したモデルだ。サイズ展開は幅広く、最大は数日のテント泊山行にも応える容量68L、そして58L、48Lと続き、最小が38Lとなる。

今回僕がピックアップしたのは38L、重量は1,360g。本来ならば小屋泊に向いているサイズ感だが、まだ寒さを感じるこの時期にボリュームがある防寒着などを入れることを考えれば、日帰り登山にも便利に使える。ちなみに「パラゴン」は男性モデルで、女性用のハーネスをつけたモデルは「メイブン」という名称であり、サイズ展開は65L、55L、45L、35Lと、すべてパラゴンよりも3L小さい。

軽量性と背負い心地のよさを両立させるために、パラゴンにはいくつもの工夫がなされている。エアロロン・サスペンションという名の背面は、軽量で細いアルミニウムのフレームと、肉抜きされたフォーム材で構成されているものだ。

フォーム材の上はメッシュで覆われ、通気性や吸湿発散性も上々。ウェストハーネスのパッドには幅も厚みもあり、荷重をしっかりと支えてくれる。そのために容量は38Lしかないのに、耐荷重はなんと18キロ。じつはコレ、かなりスゴいことである。立派すぎるとも思えるほどだが、これは最大68Lサイズを持つ同シリーズ共通の仕様だからだろう。

背面パッド同様に、ショルダーハーネスのパッドも肉抜きされており、軽量化と通気性のよさをアップしている。下の写真左が左肩部分のハーネスで、右が右肩部分のハーネスだ。

このうち、左ハーネスにはサングラスを着用しないときに取り付けておくことができるコードが付属。それに対し、右ハーネスにつけられたチェストハーネスには行動中に水を飲むために使うハイドレーションシステムのチューブが取り付けられるようになっている。

背面パッドの裏側にはベルクロが取り付けられ、背面長も調整可能だ。10センチ程度の幅で調整は無段階である。

もともとグレゴリーはモデルごとに背面長の長さを数種用意しており、さらにこの背面長調整のシステムがあれば、ほとんどの人の体に合わせられるはずである。

背負い心地のよさと荷重の分散をバランスよく行なうためには、ヒップハーネスも重要だ。

パラゴンのヒップハーネスは強度が高い樹脂製のパーツを覆うようにパッドやポケットがつけられ、使う人の腰回りに合わせて幅が変わり、程よいフィット感を得られるようになっている。シンプルだが、効果は高そうだ。

少し面白いディテールが、フロントのストラップの部分である。根本の部分が固定されておらず、ただのループで結ばれているだけなのだ。

場合によっては、サイドストラップなどといった別の部分に取り付けるようにすれば、大きなものを雨蓋とのあいだに挟み込めそうである。

また、このストラップ部分の左側には伸縮性のコードが取り付けられている。下部のループと連動してピッケルを固定するのにも使えるが、トレッキングポールのアタッチメントとしても考えられており、下の写真の左のような状態で固定できる。

ただし、トレッキングポールがバックパックの外側に位置することになるため、歩くときに外側に重量がかかる感じが好みではない人もいるだろう。僕自身がそういうタイプなので、今回はいつものようにサイドポケットを利用してトレッキングポールを収納したが、このトレッキングポール・アタッチメントを使用したほうが簡単に固定できるともいえる。このあたりの使い方の好みは人ぞれぞれだ。

美しい甲斐駒ケ岳を眺めながら、林道を進んでいくと…

そんなわけで矢立石の登山口を出発し、日向山の南側にある林道を歩いていく。

林道といっても崩壊が激しく、クルマは通行止め。そこが林道だと知っていなければ、たんなる登山道にしか見えない区間も長くなっている。

しかし、林道から見られる甲斐駒ケ岳は美しい。

この後、山頂付近からも周囲の風景を眺めることはできることはわかっていた。だが甲斐駒ケ岳に関して言えば、山頂よりもむしろ林道からの眺望のほうが圧倒的にすばらしい。とはいえ、夏は樹木が茂ってしまうので、視界は悪くなるのだが、葉が落ちているこの時期は申し分ないのである。とくに錦滝付近からは美しい甲斐駒ケ岳を楽しめるだろう。

林道から登山道に入っていく場所にあるのが、その錦滝である。

好天とあって、直射日光を浴びた滝はどんどん溶け出しているようだった。実際、休憩がてら15分ほど滞在しているうちに、何度も氷が崩落していき、ちょっと恐ろしいほど。しかしこういう氷結した滝を眺められるのは、このコースのよさだ。

錦滝の横からは急登が始まる。日向山はのんびりと歩ける初心者向けの山として知られるが、それは矢立石から山頂へ向かう最短ルートの場合だ。

錦滝からのルートはかなり厳しく、途中には長いロープがつけられている場所、垂直気味の階段がついた場所、斜面のトラバースなどが連続し、歩きなれた人でなければ危険なのである。今回も途中には看板があり、このルートの登りは「通行注意」とされ、下りは「通行禁止」とされていた。それだけ滑落事故が多いのだろう。

花崗岩が風化してできた真っ白な砂の斜面が現れれば、山頂は、もうすぐだ。

このあたりは足元が崩れやすい。砂地なので危険ではないが、雨の日は大変そうだ。僕は山頂に向かう前に、この鞍部で軽い休憩をとった。

バックパックメーカーらしい使い勝手の良さ

休憩中、改めてパラゴンのディテールをチェックする。雨蓋表面のポケットは大小の2つ。大きいほうは立体的な一般的形状で、小さいほうは薄く、内部にカギなどをキープできるフックがついている。一方、多くのバックパックにつけられている雨蓋裏のポケットは省略されている。つまり、雨蓋裏にポケットを付ける代わりに、表側にポケットを付けたということだろう。

その雨蓋を外すと、ハイドレーションシステムのチューブを引き出すスリットが現れる。ハイドレーションのリザーバー(水筒)はバックパック内部のポケットに入れ、フックで吊るすという構造だ。

荷物を出し入れする部分はコードで巾着を開閉するタイプで、さらにストラップとバックルでコンプレッションできる。

開くときは巾着部分に取り付けられたストラップを引くだけでフルオープン。反対に閉じるときは片手でコードを引くだけだ。非常に簡単なのである。

ヒップハーネスのポケットは左右で異なる。腰の右側に当たるポケットは生地で全面が覆われており、ある程度の防水性を持つ。

一方、左側はメッシュ。中に入れたものがわかりやすく、湿ったものを入れるのにも抵抗が少ない。どちらも引き手は大きくて立体的なので、グローブをしたままでも使いやすい。

パラゴンはフロント下部にもファスナーがつけられている。だがその内部に仕切りもある、いわゆる2気室構造ではなく、シンプルな荷物の出し入れ口としてだ。38Lという中型モデルともなると、このように上部以外にも荷室にアクセスできる箇所があると便利である。

僕が気に入ったのは、その部分のファスナーの上にあるフラップだ。内側に伸縮性のコードが収められているためにめくれることはなく、ファスナーの上を確実に覆うので、雨水が浸入するのを防ぐ効果は高い。細かいところだが、気が利いている。

サイドのポケットは左右ともに伸縮性のメッシュだ。深さも手ごろで、1Lほどのボトルも収められる。

その上につけられたストラップは、ポケットの外側にも、内側にもまわせるようになっている。収納するモノの形状やサイズに合わせ、自分なりに使い分けられるだろう。

フロントにも伸縮性のメッシュを使った大型ポケットがある。その内側にはファスナーがあり、レインカバーが内蔵。同色なのでわかりにくいが、黒いロゴが書かれているのがそのレインカバーだ。純正の付属品とあって、当然ながらサイズはピッタリである。

今回は好天だったので使用する機会はなかったが、フックやループで確実に固定でき、防水性は高そうだった。

休憩が終わると、とうとう山頂へ。ここが山中だとは思えないほどの砂地の上を歩いていく。

南斜面は比較的緩やかだが、北斜面は急峻で崩落しかけた場所もあり、あまり近づかないほうがよさそうだ。最後は再び樹林帯に入り、巻くようにして山頂へ出て行った。

そして日向山山頂。

この日は平日とあって、ほかの登山者は2~3名ほどであった。

山頂の背後には、鞍掛山に隠れるようにして、甲斐駒ケ岳。やはり林道から見た姿のほうが迫力はある。

北側に目を転じれば、八ヶ岳。う~ん、気持ちよい。やはり日向山は絶好の展望地なのである。

ここまでパラゴンを背負ってみて、とくに気になった部分は一切なかった。背面のパッドは違和感なく背中になじみ、ショルダーハーネスも心地よくフィットした。今回はテストのために使っているのだと意識しなければ、背負っていることを忘れているほどである。人によって体型は異なるため、万人に合うとまではさすがにいうことはできないが、大半の人は心地よく背負えるに違いない。

わずかながら気になった部分があるとすれば、雨蓋のポケットのファスナーだろうか。普通に使用する分に大きな問題はないが、いくぶん滑りが悪い気もしないではない。しかし、この部分は滑りがよすぎると、ポケット内部に多くのモノを入れたときに内側から圧迫され、勝手にファスナーが開いてくる恐れもある。そのあたりのことを計算し、あえて滑りがよすぎないファスナーを選んでいる可能性も高く、わざわざ改善すべき点ではないのかもしれない。

山頂でもゆっくりと休んだ僕は、矢立石へと下山していった。このときは3月中旬だったが、登山道は雪が溶解と凍結を繰り返してできた氷の帯となり、とてもスリップしやすかった。

だが錦滝からの登りのハードさに比べれば、気楽なもの。好天に恵まれたことに感謝しながら、僕は駐車場へと向かった……。

同社のなかで、パラゴンは「ライトウェイト」を意識したモデルである。だが38Lで耐荷重18キロもあり、ハーネス類もそれだけの重量に対応すべきデザインが行なわれていて、背負い心地は申し分ない。使用されている生地は「ライトウェイト」ゆえに、それほど強靭ではないかもしれないが、サイドやボトムなどの岩などと擦れやすい部分は強化されているのも好印象だ。耐久性ばかりは何度も使い込まねば判断しかねるが、かなりよくできたバックパックであることは間違いない。

ザック
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『山道具 選び方、使い方』(枻出版)ほか著書多数。

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