トレランシューズの特徴を受け継いだ個性派トレッキングシューズ ホカ/アナカパ 2 ミッド GTX|高橋庄太郎の山MONO語りVol.107

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山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回のアイテムは、ホカの「アナカパ 2 ミッド GTX」です。

文・写真=高橋庄太郎


毎年、毎期、たくさんの新製品が登場するアウトドア用具。他を圧倒して新製品が多いのはウェア類だが、その次は登山靴を中心としたシューズ類であろう。そんなウェアとシューズは、人気モデルには素材やディテールを変えた“派生品”や“リニューアル版”がよく作られる点も共通している。

今回紹介するのはアメリカを拠点に展開する、ホカのハイクシューズの最新モデル「アナカパ 2 ミッド GTX」だ。「アナカパ」のあとに「2」という数字が入っている通り、これはアナカパシリーズの最新作で、以前からあったモデルのリニューアルバージョンである。

僕も上の写真の「アナカパ ブリーズ ロー」というモデルを昨年から愛用しているが、これはアナカパシリーズのなかでは、防水性の代わりに通気性を重視したローカット版。ホカはトレッキングシューズ以上にランニングシューズで有名な会社であり、このアナカパ ブリーズ ローは、トレイルランニングシューズの性質を併せ持つトレッキング向けシューズという位置づけだ。

それに対し、アナカパ 2 ミッド GTXはゴアテックスを使用した防水タイプであり、ミッドカットである。

ちなみにこのブランドの正式名称は“ホカ オネオネ”だが、現在はシンプルに“ホカ”という名称で展開されている。

まずは特徴を確認

では、アナカパ 2 ミッド GTXの特徴を見ていこう。

ホカといえば、近年人気の“厚底”シューズの代表格。ミッドソールの分厚さこそが、アイデンティティとすらいえそうなホカの特徴だ。

もちろんアナカパ 2 ミッド GTXのミッドソールも非常に分厚い。少なくとも、外観上はそう見える。

アナカパ 2 ミッド GTXのアウトソールは、中央部は比較的フラットだが、爪先とかかとは少し反り上がっている。

これは前方へ蹴り出しやすい設計で、スピーディに歩けるデザイン。こんな点も少しトレイルランニングシューズ的である。

アッパーはヌバックレザーやリサイクルポリエステルを部分的に使い分け、要所を補強している。

また、表面にはPFCフリーの撥水加工が施されている。アナカパ 2 ミッド GTXは環境に配慮した素材の使用や加工法などを積極的に取り入れた製品でもあるのだ。

シューレースの素材もリサイクルポリエステル。

アッパーは全体的に柔らかで、特にタンのリサイクルポリエステルのメッシュは当たりがソフトだ。

足首周りのフックは3段に分かれている。フックの形状は付属のシューレースの太さよりも余裕があり、引っ掛けたシューレースの滑りはよい。

オーソドックスなタイプの登山靴には、屈曲部のフックでシューレースをいったん固定でき、爪先方向と足首方向で締め付け感を変えられるものも多いが、アナカパ 2 ミッド GTXは歩いているうちに全体の締め付け感が均一になっていくような設計になっている。

爪先には樹脂製の硬いガードがつけられている。僕の足を入れると、特にぶつけやすい親指から中指ほどはカバーされていたが、薬指と小指はガードから外れていた。ゆえに、薬指から小指あたりは石などにぶつけると少々痛いので、注意する必要はある。

こういう頑丈なガードはシューズの重量増に直結するパーツでもあり、シューズの軽量化とのバランスで、大きなガードは設けなかったのだと思われる。実際、アナカパ 2 ミッド GTXは、ボリュームがある見た目とは裏腹に、片足(28.0cm)510gと軽量だ。

アナカパ 2 ミッド GTXのアッパーが高いのはミッドカットの前側だけで、後ろのアキレス腱側はローカット並みに低い。これは前方と横への体のブレは抑制しつつ、足を蹴り出したときにはアキレス腱付近を圧迫しない設計ということだ。

おもしろいのは、アキレス腱に合わせて、シューズ内部から飛び出すようにつけられたパーツである。非常に柔らかで、アキレス腱を圧迫するような感覚はなく、フィット感を高めるものらしい。

アウトソールには、ヴィブラムメガグリップが採用されている。リニューアル前のアナカパとこの「2」が大きく違うのは、「2」はこの“ヴィブラムメガグリップ”を使っている点だ。つまり、アナカパ 2 ミッド GTXは以前のアナカパよりも滑りにくいのである。アウトソールの横幅は最大で12cmほどもあり、接地面積が広いので地面との摩擦感も強くなり、メガグリップとの相乗効果でグリップ力はますます高まっている。

また、アウトソールの凹凸は基本的に横向きに並べられ、いかにも前方への推進力を重視したラグパターンだ。

おもしろいのは、X字にラインが入っている土踏まず部分。このXの左右の三角形部分はEVA製のミッドソールが露出しているだけで、アウトソールの素材ではないのである。ヴィブラムメガグリップのアウトソールはその前後のパネル部分になるが、厚さ数ミリのものをミッドソールへダイレクトに貼り付けているだけ。一般的なシューズに比べると、アウトソールに使われている素材の量は非常に少ない。これもシューズの軽量性につながっている。

下の写真で言えば、アウトソールは「Vibram」という黄色いロゴがついている箇所と地面に接する凹凸のみだ。サイド部分は地面に接するまでの大部分が、表面に露出したEVAのミッドソールである。

このミッドソールは厚み4~5cmにも見えるが、実際はかかとを収める内部はもう少し低く、両サイドが立ち上がった構造。立体的なミッドソールでかかとを両側から挟み込み、シューズ内の足を安定させる設計なのだ。

こんなアナカパ 2 ミッド GTXはアッパー全体が柔らかいこともあり、初めて足を入れたときからほとんど違和感はなかった。

シューレースが配されている甲から足首までのフィット感は高く、爪先付近には少し余裕がある、といった足入れ感である。

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プロフィール

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(peacs)ほか著書多数。
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