雨の山、地図はどうする!?マップケース4種を雨の奥武蔵で使い比べる!
今月のPICK UP
イスカ/ドライマップケース [イスカ]
価格:1,400円+税
重量:80g
オスプレー/マップラップ [オスプレー]
>販売終了(参考商品)
重量:100g
モンベル/ロールアップマップケースM [モンベル]
価格:970円+税
重量:29g
ロックサック/防水マルチケース A4サイズ(2枚入り) [ロックサック]
価格:1,600円+税
重量:30g
4ブランド4モデル。まずはそれぞれの構造、特徴をチェック!
山歩きには「地図」が欠かせない。
地図の中でも、山と渓谷社が発行している「ヤマケイ登山地図」や昭文社発行の「山と高原地図」などの登山用地図にはユポ紙のような耐水性で強靭な用紙が使われており、雨に濡れても破れることはなく、何度折り曲げても傷みにくい。しかし、登山用地図はピックアップしている山域が限定されており、範囲という意味では全国を完全網羅する国土地理院発行の地形図には敵わない。また、コンパスなどを使った読図には、文字情報やマークが落としこまれていない地形図のほうが適している。
だが、一般的な紙を使っている国土地理院発行の地形図は水濡れに弱いのだ。それに折り曲げた部分は次第に擦れて傷み、だんだんと地形が判別しにくくなる。
そこで、うまく使いたいのが「マップケース」だ。市販されているものにはいくつかのタイプがあるが、今回はそのなかから数種選び、雨中の山で試してみることにした。
向かったのは、奥武蔵の伊豆ヶ岳。標高は851mという低山だが、山頂付近からの景色はなかなかのものらしい。だが、今回はあえて悪天候を狙って行ったわけであり、眺望は望むべくもないのだが……。
小雨のなか、僕は名栗げんきプラザ近くの駐車場から登り始めた。
さて、今回持参したマップケースは4点。
まずは1点ずつ、簡単に見ていこう。
ひとつは、イスカ「ドライマップケース」。ドライという言葉が名称に入っているように、防水性が高いマップケースだ。ベルクロのストラップが付いており、丸めて収納できる。
表生地はナイロン、裏はポリウレタンで、透明な部分はTPU。サイズは32×30cm。収納時は4×30㎝となる。重量は80gだ。
地図の入れ口にはかなりしっかりとしたファスナー(レールシール)がつけられており、これをしっかりと合わせると水はもう入らない。さらにそのファスナー部分を折り曲げるようにして固定するためにベルクロのテープも設けられている。素材はただ縫うだけではなく接着されているので、水漏れの恐れはほとんどない。
先ほど丸めると直径4㎝と書いたが、3つ折りにすれば、厚みは1㎝にも満たない(地図を入れていない場合)。ベルクロのストラップは長いので、この状態でも固定できる。また、バックル付きのストラップも付属しており、バックパックなどに固定することも可能だ。最新版の地形図(全体では460×580㎜だが、地図範囲のみが見えるように4辺の空白部分を折り畳むと415×510㎜)は、4つ折りにすると入る。
次に、オスプレー「マップラップ」。先ほどのイスカのものと似たモデルだ。
表生地と裏地はポリウレタンで、透明の部分はTPU。サイズは32×26cm。収納時は32×10×1㎝となる。重量は100gだ。
ファスナーは一般的なもので、防水性ではない。
こちらはケースを3つ折りにして使うことを基本としているようだが、丸めることもできる。その場合、ストラップを少しずらして留めるようになっている。地形図は地図範囲のみが見えるように空白部分を折り畳んでから4つ折りにすれば、きれいに収まる。だが空白部分を折りたたまず、たんに4つ折りしただけだと横向きには入らない。縦向きにすれば入るが、その場合は一部がベルクロで隠れてしまう。
と、ここまでオスプレーのマップラップを説明したが、これはじつは旧モデル。現在は「ULマップラップ」という名前のものにリニューアルしているが、今回は手元になく、まだ店舗によっては販売されているこちらを僕が私有していたので、参考までにいっしょに使ってみた。
そして、モンベル「ロールアップマップケースM」。ファスナー部分以外はすべて透明で、非常にシンプルなモデルである。
素材はナイロンとポリエチレン。サイズは、外寸28.6×37.6cm、内寸26.0×35.0cmとなっている。重量は29gだ。
この製品はサイドにスナップボタンが付いており、これで折り畳んだ状態に固定できる。しかも2パターンだ。
上の写真の左が2つ折りにした状態で、右の写真が4つ折りにした状態。また、この製品にはサイズ展開があり、こちらはMサイズ。ひとまわり小さいサイズSは、外寸19.8×28.3cm、内寸17.2×25.5cmである。地形図は地図範囲のみだけでも、全体をただ折っただけでも4つ折りにするだけで簡単に収められる。むしろ惜しいと思うのは、横幅をあと2㎝、縦幅をあと7㎝ほど大きく作ってもらえれば、地図範囲のみが見えるように空白部分を折った地形図だと2つ折りでも入ってしまうこと。そうすると裏表が透明なので、地形図全体が見えるようになるのだ。そうなればじつに便利に違いない。
最後に、ロックサック「防水マルチケース A4サイズ」。これはとくにマップケースとして販売されているわけではなく、名称通り「マルチ」な仕様が考えられるケースだ。
素材はポリエチレン。サイズは、外寸28.6×34.3cm、内寸26.7×33.7cmとなっている。重量は30gで、この数値は1枚の重量。2枚組で販売されている。
アメリカの軍隊でも使用されているほどの防水性を誇り、同国のダイビング認定で水深60mに対応する。さらにタッチパネル対応で、-40℃まで硬化もしない。このシリーズはさまざまなサイズ展開があり、これはもっとも大きいもの。スマートフォンにピッタリのサイズなども便利だ。地形図は4つ折りにさえしてあれば、空白部分を折りたたんでいなくても、すんなり収められる。裏表が透明なので、地形図全体の半分を一度に確認できるわけである。
角に付けたフックは、コードを付けられるようにと僕がカスタムしたもの。素材が痛む可能性があり、メーカーは推奨していないので、ご注意を。
これら4点は価格帯も似ており、すべて1,500~2,000円のなかに収まった。ただし、ロックサックだけは2枚入りなので、半額と考えるとよいだろう。
こんなマップケースをどのようなスタイルで持ち運ぶのかは、いつも悩むところだ。後述するが、いつでも確認できるように取り出しやすい位置にキープすると使いやすいが、歩行の邪魔になっては困る。だが今回は数も多く、なにより防水を中心としたテストの意味が大きいので、割り切ってバックパックの左右のサイドポケットに差し込むことにした。このほうが雨に濡れて、機能性がわかりやすいからだ。
上の左の写真にはイスカとロックサック、右にはオスプレーとモンベル。基本はこの状態で歩き、テストと撮影のために途中で何度も取り出した。
雨の山へ。水たまりに浸す意地悪までして使い比べてみる
登山道を歩きはじめると、すぐに沢を渡る。この日の数日前から全国的に天気はイマイチだった。だが、まだ増水しているようではない。
この日の天気は基本的に小雨だった。だが、ときどき激しく降り注ぎ、ときにはほとんど降らなくなる。撮影はできるだけ雨が降っていないタイミングを狙った。
しかし30分も歩かないうちに、マップケースは充分に濡れてしまった。
この時点では4つすべてに浸水はない。ファスナーのタイプからいえば、オスプレーのものは水が入ってきてもおかしくないのだが、3つ折りにしているとファスナーが表面に露出しないこともあり、とくに問題はないようである。
そこで、よりラフに扱ってみようと、水たまりにマップケースを浸してみた。
もともと全面的に防水素材で、ファスナーも完全に閉められるモンベルとロックサックは、あらためて試すまでもなく、これくらいで水が入ってくるわけがない。
それらに対してイスカとオスプレーは……
左のイスカは防水ファスナーに加えて接着していることもあり、まったく水の侵入はない。だがオスプレーはファスナーの部分から少しずつ水が入ってくる。このような沢登り的な浸水に陥る状況は想定していないはずだから、仕方ない。新製品の「ULマップラップ」は防水構造らしいので、このような浸水はないはずである。
むしろこの2点で気になったのは、表側の化学繊維の素材が水を含んでしまうことだ。防水コーティングはしてあるのですぐに地図が濡れるわけではないのだが、一度雨に当たってしまうと、それ以降は常に湿った状態になる。もう少し、撥水性を持たせてあると使いやすそうだ。
標高を上げていくと、五輪山に到着した。標高が低いので紅葉は進んでいないが、一部には色づき始めた樹木も見られた。
登山道はわかりやすいが、念のためにマップケースを開き、地形を確認してみる。
マップケースで重要なポイントが、内部の地図が見やすいかどうかだ。公平を期するために表面の水滴はできるだけ拭き取り、それから等高線や地図記号を眺めてみる。だが、透明度や光の反射がいくらか違うとはいえ、透明なシート自体の性能はどれも大差はない。
あえて言えば、モンベルのものがいちばんクリアに見え、その次がロックサック。オスプレーのものはいくらか湾曲して見えにくい部分ができる。そしてイスカのものは「丸めて持ち運ぶ」という特性上、かなり波を打ってしまい、光の反射がランダムになって視認性をいくらか損なっているようであった。
ちなみに、これらのマップケースに入れている地形図は、どれも伊豆ヶ岳とは関係ない別の場所。今回はあくまでもテストのために入れているだけであるので、そのあたりはご了承いただきたい。
山頂に到着。この日は誰にも会わなかった。
それにしても、晴れているときに来たかったな……。
プリントアウトの地図を想定し、「A」サイズの地図も入れてみた
ちょうど雨はほとんど降っていないタイミングなので、ここで内部の地図を入れ代えてみた。じつは僕は今回、「書店で売っている」地形図以外に、「自分でプリントアウト」した地形図も用意していたのだ。
現在、国土地理院の地形図は、ウェブ上からダウンロードし、自分で印刷することができる。自宅にプリンターを持っていれば無料で地形図が手に入り、わざわざ書店に買いに行く手間が省ける。また地形図ではなく、この「ヤマケイオンライン」のウェブサイトから利用できる「ヤマタイム」の地図データも同様に自宅でプリントアウト可能だし、コンビニのプリンターで地図データを呼び出し出力できる有料サービスもある。
ただし、自宅やコンビニなどでプリントする場合の問題は「用紙」だ。多くの場合、自宅にプリンターを持っている人でも、用紙のサイズはA4(210×297㎜)だろう。コンビニで出力するとしても、その倍のA3サイズくらいである。
何を言いたいのかといえば、自分でプリントアウトする地図は、A4サイズの場合が圧倒的に多いということ。これからはウェブサイト上からの地図利用がますます増えるはずであり、そういう意味ではマップケースにはA3を含む「A」サイズに対応する大きさが求められるに違いない。
そこで、自宅でプリントアウトしてきたA4サイズの「伊豆ヶ岳」の地形図を、4つのマップケースに入れてみた。その様子が以下の写真である。左上がイスカ、右上がオスプレー、左下がモンベル、右下がロックサックである。
イスカとオスプレーのマップケースは、A4サイズの用紙だと数㎝折りたたまないと入らない。1枚ならばそう面倒ではないが、広範囲をカバーしようとすると数枚必要になるため、かなり使いにくくなる。折りたたまれた紙が何枚もあると内部がゴワついてしまい、収納時も大きくなってしまうのが問題だ。
その点、モンベルのものにはかなり余裕がある。しかも裏表ともに透明なので、コンビニなどのプリンターを利用したA3サイズの地図を入れれば、広範囲を簡単に確認できて、ますます便利そうだ。同じことがロックサックにもいえる。今回使ったものは「A4」をうたいながらも、実際の内寸はA4よりもだいぶ大きく、縦に4㎝、横に5㎝以上もオーバー。これはおそらくA4サイズの紙ではなく、「A4サイズのノートパソコン」などを入れられる大きさなのだろう。ともあれ、これも裏表ともに透明なので、モンベルと同じようにA3の地図も使いやすいだろう。
話は変わるが、マップケースをどのように持ち歩くのかは、その人の好み。使いやすく、持ち運びやすい位置は人によって異なるからだ。
以下はこれら4点のマップケースを、僕ならどう持ち運ぶかを試してみた一例である。先ほどと同様、左上がイスカ、右上がオスプレー、左下がモンベル、右下がロックサックとなる。
イスカとオスプレーにはストラップがついているので、それをチェストハーネスに取り付けつつ、マップケース本体は歩行時にブラブラしないようにウエストハーネスと腹部の間に挟み込んだ。あまり深くウエストハーネスに差し込むと腹部に違和感が出てくるが、その点だけ微調整すれば、これで全く支障ない。
モンベルのマップケースにも細いコードが付属しており、同様に持ち歩くことができるだろう。だが今回は、僕がマップケースホルダーとして使用しているものと組み合わせた。これはもともとザ・ノース・フェイスがトレッキングポールホルダーとして販売していたものだが、これを胸元に固定すると丸めたマップケースが程よい位置に固定でき、とても便利なのだ。ストラップやコードが一切ついておらず、紛失しやすいロックサックの場合はますます都合がよかった。
胸元にマップケースを固定すると、ケースと内部の地図を失くさないようにキープしながら、いつでも自分の位置などを確認できる。このとき老眼の方は、少し離した場所で見られるように微調整するとよいだろう。
マップケースをバックパックのサイドポケットなどに入れている人は多いが、胸元に固定することをお勧めしたい。イスカのもののようにバックルで外せるものは、地図の入れ替えも簡単で、とくに有用だ。
ひと通りの確認が終了し、下山を始める。雨は小降りになっているが、地面は滑りやすい。最後に山伏峠の舗装路に出ると、少しだけ安心した。
今回は雨の中のテストだった。しかしこれから寒い冬になる。これらのマップケースの使い心地も変わってくるかもしれない。
おまけ。凍るほど寒い山ではどうだろう?
そんなわけで、自宅に帰ってから最後のテストを行なってみた。マップケースを水に濡らし、冷凍庫に入れて凍らせるのである。内部の温度は-20℃程度だった。
表面素材が水を含みやすいイスカとオスプレーは凍結してゴワゴワになった。だが、使い勝手が著しく落ちるほどではない。ただし、ファスナー部分に水滴がついていた部分は固着して開きにくくなった。その点は留意して使ったほうがよさそうだ。ファスナー部分の問題に関してはモンベルとロックサックも同様。だが素材が水を含まない分だけマップケースが硬くなりにくく、気温が高い時期と同じように使えそうだった。
今回テストしたもののなかで、僕が使うならばモンベルかロックサック。ただし透明のフィルムだけなので傷みやすいかもしれない。ヤブや岩が多い場所であれば補強されているイスカかオスプレーだ。
あとはサイズ感。個人的にはモンベルがもう少しだけ大きいものを作ってくれると、地形図全体をカバーできて、すばらしいと思う。それまではいくつかのマップケースを使い分け、自分なりのベストを探していきたい。
プロフィール
高橋庄太郎の山MONO語り
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