南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑤徳島県の遍路道　区間ごとのアドバイス

はじめに

今回は、徳島県内の遍路道を交通の便を考えて4つの区間に分け、登山でいうところのコースガイドのような形で、遍路道や霊場などについて触れていく。それぞれ補足として、実際歩くにあたっての宿泊地を含めたその日の行程の考え方や、ルート選択などについてのアドバイスも記した。

ちなみに、八十八霊場1200km超の遍路行程を区切って歩くことを「区切り打ち」、特に県ごとに区切って歩くことを「一国（いっこく）参り」と呼ぶ。本コラムは説明上「一国参り」で記述するが、個人的には霊場間の距離や交通手段を考えると、厳密な「一国参り」は容易ではないと思っている。県境付近に起終点となる駅や交通手段が必ずしもあるわけではなく、あったとしても便数が限られていて、再スタートする場合にそこまで復帰するのが大変だからだ。筆者は遍路中に多くの歩き遍路と会話したが、「一国参り」の遍路には実際一人しか会っていない。

本題に戻るが、以下に述べる各区間の説明には最適日数や歩行時間など、筆者の踏査をもとにしたコースデータを添えてあるので、歩行計画の参考にできる。（※踏査コースデータはあくまで一例であって、計画を考える際は、自身の歩くペース・起点・終点・宿泊地などを加味して考えていただきたい。登り下りの累積標高差はノイズが乗っているので、実際はそれよりも少ないと思ってよいだろう。）

なお「コース詳細を見る」を押すと、山と溪谷オンライン内のコースデータページが開き、このページからGPXデータをダウンロードできる。スマートフォンにダウンロードしておけば、遍路中に電波が入らない場所でも各種地図アプリで、ルートの確認が可能だ。

コースデータは、登山地図&計画マネージャ「ヤマタイム」の地図情報に準拠している。「ヤマタイム」には筆者が四国遍路を実際に歩いた記録をもとに、遍路道のコースや所要時間、ヘンロ小屋、注意箇所や見どころなどの情報を掲載しているので、合わせて参考にしてほしい。目的とする霊場付近を地図上で表示させるには霊場名で検索可能だが、同一名の霊場が多い場合は、付近の駅名あるいは一意的なランドマーク名を使って検索すればよいだろう。

またコースのGPXデータをダウンロードしていなくても、歩いている最中電波が入る場所であれば、スマートフォンで「ヤマタイム」の地図を表示し「現在位置」をタッチすると自分の位置が確認できるので、遍路道から外れた場合復帰に活用できる。

加えて、コースタイム計画を立てられる「ヤマタイム」の計画モードについて触れておきたい。「ヤマタイム」を計画モードにして、地点を次々とクリック（タップ）してルートを決めると、自動的に歩行時間が積算され、起点から目的地までどのくらい時間がかかるか、標高差は何mか簡単に把握できる。また参拝時間も加味できるので（ヤマタイム計画モード上では「休憩時間」を利用）、独自の歩き遍路計画を立案し保存することができる。

⇒「ヤマタイム」の地図を見る

⇒「ヤマタイム」計画モードの使い方

計画にあたっては、霊場では祈祷と納経（御朱印を頂く）で20分程度をみるとよいだろう。加えて霊場の納経所の開窓時間は午前8時～午後5時である点、計画時に注意が必要だ。また遍路宿の朝食は午前6時、または6時半の所が多い。昼食に関しては食堂はほとんどなく、遍路道近辺のコンビニエンスストアか商店での事前の購入になる。なお、お弁当を用意してくれる遍路宿もあるので、確認するのがよいだろう。夕朝食に関しては、遍路宿での提供を前提としている。ビジネスホテル、あるいは早出の場合は購入場所も含めて事前に検討が必要である。また飲み物・おやつ以外に非常食1食は常時携行したほうがよいだろう。

それでは次より、主な区間ごとに徳島県の遍路道を紹介していこう。なおこの区間は交通の便を考えての区切りなので、これを目安にして自由に遍路計画を考えてほしい。