南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑤徳島県の遍路道 区間ごとのアドバイス
弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月にわたって通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。
写真・文=岸田 明 トップ写真=玉ヶ峠の先にある神山遍路小屋付近から見る里の風景
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【区間2】第十一番藤井寺から第十六番観音寺まで 1泊2日公共交通の区切り:阿波川島駅/鴨島駅~府中(こう)駅
ややさびれた趣きではあるが、雰囲気のある第十一番藤井寺に着くと、いよいよ難所の「遍路ころがし」焼山寺道(しょうざんじみち)が始まる。「遍路ころがし」とは遍路が転がって落ちるほど厳しいといわれる区間のことで、四国遍路にはいくつかそう呼ばれる箇所がある。遍路ころがしについては、第3回「南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く③ 歩き遍路の難所について」で触れているので参照いただきたい。
焼山寺道は最初は尾根筋で、展望が2カ所で得られ正面には吉野川と讃岐山脈のパノラマが広がる。長い尾根歩きの後、浄蓮庵(じょうれんあん)を過ぎて焼山寺手前の左右内(そうち)で一度峠の沢筋に降り、再び向かいの尾根に登り返し、第十一番焼山寺に参拝して鍋岩(なべいわ)に下る。
鍋岩からさらにもう一回、眼下に里山の風景が広がる玉ヶ峠(たまがたお)を越えると、里になる。春にはしだれ桜が美しい鮎喰川(あくいがわ)沿いの長いロードを歩き、第十三番大日寺(だいにちじ)へ着く。大日寺からは再び平野部で、霊場間の距離が短い区間となる。流水岩が見られる第十四番常楽寺(じょうらくじ)、勇壮な庭園のある第十五番国分寺(こくぶんじ)、山門の美しい第十六番観音寺(かんおんじ)と続く。観音寺の最寄り駅は、JR徳島線府中駅である。
●アドバイス 焼山寺道はハードな山越えで、途中に水場が1カ所あるのみ。【区間1】にて記述したように阿波川島駅、または鴨島駅周辺を当日の出発点にしたい。通常の脚力の遍路であれば、一日でようやく歩ききれる距離なので鍋岩に投宿することになるが、宿が取れない場合は、明るい時間帯であれば玉ヶ峠越え、遅ければ暗い山道を避け、宿を求めて鮎喰川へ一般道を下る必要がある。1日で歩き切る自信がない場合は、前後の宿に相談しよう。
本区間に引き続き【区間3】の第十七番井戸寺(いどじ)からさらに歩く場合、大日寺~観音寺~井戸寺間には遍路宿が数軒あるので、早めの時間に宿に入るのもよいだろう。なお徳島駅周辺に泊まりたい場合だが、朝に鍋岩スタートではお参りしながら歩いて一日で徳島駅へ着くのは難しいので、府中(こう)駅からのJR線、または適当な地点からバスを使って徳島駅周辺へ往復する。
なお本区間は、藤井寺から焼山寺を越えて鮎喰川福原橋左岸までは完全な山道のため、遍路以外に歩く人はいない。
行程・コース
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プロフィール
岸田 明(きしだ・あきら)
東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。
四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/歩き遍路旅の魅力と計画アドバイス
登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスと、その記録
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