紅葉が終わった入笠山は山頂も貸し切り。コケが美しいテイ沢で気持ちがよい時間を過ごす

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読者レポーターより登山レポをお届けします。白麻佑季さんは、日帰りで南アルプス前衛の入笠山(にゅうかさやま、1955m)へ。紅葉が終わって静けさの中にある入笠山とコケが美しいテイ沢を堪能してきました。

文・写真=白麻佑季

目次

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 5時間5分
行程:沢入登山口・・・入笠湿原・・・入笠山登山口・・・入笠山・・・仏平峠・・・大阿原湿原入口・・・分岐・・・テイ沢出合・・・入笠山登山口・・・入笠湿原・・・沢入登山口
総歩行距離:約12,700m
累積標高差:上り 約743m 下り 約743m
コース定数:21

晩秋の静かな登山道を登ると、入笠山山頂は貸し切り状態

雪が降る前にテイ沢を見たくて晩秋の沢入登山口へ向かった。朝10時半の駐車場は4台駐車していたのみ。紅葉も終わり、入笠山を訪れる人はだいぶ減ったようだ。

入笠山 沢入登山口駐車場
沢入登山口駐車場

ここから静かな登山道を山彦荘まで登った。11時を過ぎたというのに入笠湿原周辺は誰もおらず閑散としていた。湿原内は元気な植物が来春に芽吹くよう所々野焼きされている。ゴンドラ山頂駅に続く傾斜地にはうっすらと雪が積もっていた。八ヶ岳を見るために先にゴンドラ山頂駅へ行く選択もあったが、メインで行きたかったのはテイ沢なのでまずは入笠山から登ることにした。

実は1週間前にも友達と入笠山に登っている。すでに登山者は減っていて落ち着いた登山ができたが、この日はさらに静かで、ほかの登山者をまったく見かけなかった。唯一、入笠登山口のお花畑で数名の作業員を見かけたくらいだった。

入笠山 雪が積もったお花畑
雪が積もったお花畑

先週は雪がなかったお花畑も上の方は白くなり、山頂へ続く登山道も雪が積もっていたため、テイ沢のコケにも雪が積もっていないか心配になった。入笠山山頂まで登ると、日当たりがよいせいか雪はなかった。しかし強風が吹いて肌寒い。体が冷えて長居はできないだろうと思っていたが、いつも誰かしらいる入笠山山頂がまさかの貸し切りでテンションが上がった。寒さも気にせず、ヨガ動画を撮り続けた。

途中、強風で三脚が転倒。カメラが地面に叩きつけられて傷ついたにもかかわらず、まったく意に介さずに笑っている私が動画に写っていた。幸い傷ついたのがボディーでよかった。レンズだったら泣いているところだった。

入笠山 八ヶ岳をバックにヨガ
八ヶ岳をバックにヨガ

諏訪湖方面は守屋山(もりやさん)や高ボッチ山、霧ヶ峰(きりがみね)が見えて、御嶽山(おんたけさん)方面は厚い雲がかかっていた。

入入笠山から諏訪湖方面の展望
入笠山から諏訪湖方面の展望

南アルプス方面、富士山もうっすら見えたので展望はまずまず。

入笠山から富士山方面の展望
富士山が見えるとうれしい

コケが美しいテイ沢で自然と呼応するようにヨガを楽しむ

入笠山山頂を充分すぎるほど満喫し、テイ沢に向けて歩き始めたら若干曇ってきた。山頂で少々時間を費やし過ぎたかもしれない。急いで入笠山を下りて車道を歩き、大阿原(おおあはら)湿原に入ると木道を進んだ。

入笠山 大阿原湿原
大阿原湿原

湿原を抜けると、いよいよコケが美しいテイ沢へと入っていく。テイ沢に入ると薄暗くうっそうとしていたが、しばらくすると木々の隙間から光が差してきて、コケが生き生きし始めた。

入笠山 テイ沢
テイ沢に待望の光!

コケを見ていると、気持ちが落ち着いてくるのはなぜだろう。コケ全体のふわふわ感や、一本一本の形状のかわいらしさ。深い緑色にも癒しの効果があると思う。コケの道を歩ける幸せをかみしめながら進んでいった。

入笠山 テイ沢
コケのテイ沢を歩く

ふと視線を上に移すと木々の間から空が見えて、空間の広がりをもっと感じた。自然の中で身体と対話しながら自然と呼応するように動く。とても気持ちがよい時間だ。しばらくヨガを行なっていたら、ふいに空からの光が弱まった。名残惜しいけれど、先へ進む頃合かもしれない。

入笠山 テイ沢
静かな沢歩き

いくつか橋を渡り、大岩の迫力や不思議な形状のつららを興味深く眺める。空が曇ったことで沢は暗くなってしまったけれど、深い色になったコケも味わいながら下流に下りていった。

林道に合流すると、とろろ昆布のようなサルオガセに目が留まった。先週友達と入笠山に登った時、木にぶら下がったサルオガセを見た友達が「これは一体なに?」と興味津々だった。私も初めて見た時は新鮮だったが、いつしか見慣れてしまっていた。調べてみると、サルオガセは高山や森林の樹木に着生する地衣類(菌類と藻類が共生してできた、あたかも一つの生物のように見える複合体)で、空気中の水分や栄養分を吸収して生きているそうだ。人間もサルオガセのように地球に優しいエコな生活が送れたらいいのにと思った。

サルオガセ
木々に付着したサルオガセ

さらに林道を進むと高座岩(こうざいわ)を案内する看板があったが、曇っていて展望は期待できそうになかったので登らなかった。

入笠牧場の入り口ゲートを越えて牧場沿いに歩いた。夏場はここで牛の放牧が見られる。入笠牧場とその周辺はミュージシャンのMV撮影や映画の撮影で頻繁に利用されているようで、どうやらその界隈では有名な場所らしいことを最近知った。

入笠牧場入り口のゲート
入笠牧場入り口のゲート
入笠牧場から守屋山を望む
入笠牧場から守屋山

舗装路を歩いていると守屋山が見えた。しかしそれ以外は曇っていたためゴンドラ山頂駅の八ヶ岳も期待できないだろう。山彦荘から沢入登山口へ下山し、この日の山行を終えた。

次に登る時は一面銀世界だろうか。どんな表情を見せてくれるか、次回も楽しみだ。

(山行日程=2025年12月1日)

白麻佑季(読者レポーター)

白麻佑季(読者レポーター)

中央&南アルプスに挟まれた、長野県上伊那郡在住。ヨガを仕事にしていて山でもヨガをするのが趣味。さまざまな自然が身近にあるおかげで、毎日元気にゆる~く生きてます。

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この記事に登場する山

長野県 / 赤石山脈北部

入笠山 標高 1,955m

富士見高原は、戦前から軽井沢に次ぐ避暑地として、大学の先生など文化人が集まった所。木ノ間、横吹、松目、原ノ茶屋など、美しい名前の集落が入笠山山麓に散在している。 スキー場のゴンドラを利用したハイキングコースがメジャーとなり、夏山ではゴンドラ山頂駅から約1時間で山頂に到達できる。 また、夏だけでなく、冬にはスノーシュー入門コースとしても注目されている。

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