アルプスの岩稜帯で頼りになる登山靴 アゾロ/フレネイEVO GV|高橋庄太郎の山MONO語りVol.110

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山岳・アウトドアライター、高橋庄太郎さんが、最新山道具を使ってレポートする連載。さまざまな角度からアウトドアグッズを確認し、その使用感と特徴を余すことなくレポート! 今回はアゾロの「フレネイEVO GV」を紹介します。

文・写真=高橋庄太郎


記録的な暑さになるといわれている、今年の夏。それでも日本アルプスのように岩稜帯の稜線が続く3000m級の山々に行けば、少しは涼しさを得られるはずだ。そんな高山の岩場で活躍するのが、“ライトアルパイン”シューズなどと言われる登山靴である。

全体的に重く、硬いことから近年は敬遠する人も多いが、ハードな環境でのライトアルパインシューズの安定性には捨てがたいものがある。硬いアウトソールは岩場の小さな突起をしっかりととらえて難路でも行動しやすく、くるぶしまでがっちりと覆ったアッパーは捻挫を予防し、不整地でも足首を支えてしっかりと立てる。また、足に力を入れなくても体のバランスを取りやすくなるため、少々重くても安全で、むしろ疲れにくい。僕は岩稜が続く登山道では、この手のシューズではないと不安になり、軽そうなトレッキングシューズ、ましてやトレイルランニングシューズのようなものを履いている人を見ると心配になるほどだ。

足を入れたファーストインプレッションは?

アゾロ/フレネイEVO GV

さて、今回取り上げるのはイタリアのシューズメーカー、アゾロの「フレネイEVO GV」。重量は片足743g(K8.0)と、やはりそれなりの重さではあるが、見るからに堅牢で頑丈である。

さっそく、足を入れてみよう。

アゾロ/フレネイEVO GV

シューレースはシューズの先端付近まで延びている。つま先までフィット感を高めようという設計で、最近のライトアルパインシューズの流れに沿ったデザインともいえる。実際、フィット感は良好だ。このアゾロというメーカーのシューズは少し足幅が狭い設計のものも多く、僕も以前試した同社のモデルには合わないものもないわけではなかった。しかしフレネイ EVO GVに関してはまったく問題ない。もちろん足の形は人によって変わるため、万人に合うわけではないが、以前アゾロのシューズが合わなかったという人でも試してみる意味はあるだろう。

フィット感という意味で、僕がフレネイ EVO GVで感心したのは、最上部が少しくびれたタンの構造と、そこから延長する足の甲を覆っている部分だ。

アゾロ/フレネイEVO GV

非常に柔軟で足首への当たりがよく、ライトアルパインシューズとは思えないほどソフトな履き心地なのである。

アゾロ/フレネイEVO GV

熱形成された“アゾロ3Dサーモ・シェイプド・テクノロジー”なる構造らしいが、シューレースを締めたときに余分な生地がゴロつくようなこともなく、とても心地よい。

アゾロ/フレネイEVO GV

まだ歩き始めてもいないうちから、もしかしたらこの部分がフレネイ EVO GVの最大の長所ではないかと思ってしまった。

フィールドテスト開始。まずは平坦な土の道

そんなわけで、フレネイ EVO GVを履いて登山口を出発。

アゾロ/フレネイEVO GV

このシューズが活躍するような岩稜帯ではないが、核心部へのアプローチにはこのような緩やかな登山道をけっこう長く歩かねばならない山は多いものである。

このような平坦な道に関していえば、フレネイ EVO GVは歩きにくい。

アゾロ/フレネイEVO GV

アウトソールがあまり湾曲しておらず、なにより硬くてほとんど曲がらないため、地面を蹴るときにはつま先立ちのような体勢になってしまい、体が上下左右にぶれやすいのだ。ある意味、一昔前のロボットのような動きになり、はっきりいえば、かなり疲れる。

アゾロ/フレネイEVO GV

これはフレネイ EVO GVに限らず、ライトアルパインシュ-ズの宿命である。こういう場所での歩きにくさや疲れやすさが、ライトアルパインシューズが敬遠されがちな理由であろう。

アゾロ/フレネイEVO GV

そうはいうものの、フレネイ EVO GVは足首周りが柔らかいからか、他のライトアルパインシュ-ズと比べれば違和感は少ないようである。

ちなみに、僕は北アルプスの穂高岳などを登るときには、岩稜帯ではライトアルパインシューズを履いていても、上高地の遊歩道や林道はサンダルに履き替えて歩いている。やはりそのほうが楽だからだ。

土が主体で緩やかだった登山道には、次第に石や岩が多くなってきた。

アゾロ/フレネイEVO GV

こうなるとライトアルパインシュ-ズの力が徐々に発揮されていく。

丸みを帯びた石の上でも体勢が崩れにくく、歩行は安定。

アゾロ/フレネイEVO GV

テント泊用の重い荷物を背負っていても、足に力を入れて踏ん張らずに前進できる。

アゾロ/フレネイEVO GV

ライトアルパインシュ-ズは岩場向けのシューズだが、テント泊にも向いたシューズだといわれるのは、重い荷物を支えるために足首へ過度にかかる負担を、足首をしっかりと覆うアッパーの効果で軽減してくれるからだ。

しかし、このように石や岩が多い場所では、地面からの衝撃を足腰に受けやすい。

アゾロ/フレネイEVO GV

フレネイ EVO GVのミッドソールには重い荷物にも負けない硬めの発泡ポリウレタンが使われ、かかとに弾力性が高いEVAを組み合わせている。シューズとしての安定性を重視した構造といえるだろう。トレッキングシューズなどに比べれば衝撃吸収性は落ちるが、ライトアルパインシュ-ズとしては悪くはない感じである。

シューズ内部には、衝撃吸収性を高める効果を持つフットベッド(インソール)が入っている。

アゾロ/フレネイEVO GV

それほど立体的なデザインではなく、厚みも薄い。フットベッドに工夫を凝らしたシューズが多数生まれている現代としては、かなり簡易的なものと言わざるを得ない。シューズ自体の設計が優れているので、フットベッドはこの程度で充分というメーカーの考えなのだろうか? 場合によっては他のフットベッドに取り換えると、フレネイ EVO GVの実力がもっと発揮されるかもしれない。

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プロフィール

高橋 庄太郎(たかはし・しょうたろう)

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『テント泊登山の基本テクニック』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学』(ADDIX)ほか著書多数。
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