真夏の猛暑のなかで爽快な二つの滝と高原を巡る日光・戦場ヶ原ハイキング

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読者レポーターより登山レポをお届けします。上町嵩広さんは夏の日光・戦場ヶ原へ。

文・写真=上町嵩広


もはや酷暑が定番となった夏。涼を求めて日光・戦場ヶ原へ竜頭ノ滝(りゅうずのたき)と湯滝(ゆだき)の2つの滝を観望しに行ってまいりました。戦場ヶ原一帯は標高がおおよそ1400m程度の高層湿原であり、真夏でも比較的快適なハイキングを楽しむことができました。湯川は奥日光の湯ノ湖から湯滝そして戦場ヶ原を流れていき、竜頭ノ滝を経て中禅寺湖(ちゅうぜんじこ)に注ぎ込みます。今回はこの流れを遡上するようにたどっていきます。

竜頭ノ滝の滝上から中禅寺湖の遠望
竜頭ノ滝の滝上から中禅寺湖の遠望

JR日光駅から路線バスに乗り、奥日光の中禅寺湖そばにある竜頭ノ滝からスタートです。滝の落差は約60m、長さは約210m。滝の正面に観瀑台兼お茶屋さんがあります。激しい奔流と水しぶきの音が涼やかです。竜頭ノ滝の横に階段道が設けられており、滝を横目に登っていきます。滝上に出ると湯川に架かった橋からは滝越しに中禅寺湖を望むことができ、なかなかの好展望です。

橋のそばからは戦場ヶ原へ直接入ることもできますが、今回はもう少し歩いてみたかったので戦場ヶ原の南に位置する高山という山稜にいったん登頂してからあらためて戦場ヶ原へ向かいます。高山の標高は約1668mで竜頭ノ滝からは300m弱の標高差。山頂までは比較的なだらかな登りが続きます。戦場ヶ原や中禅寺湖周辺では8月になってからクマの目撃情報が複数報告されており、ちょっと緊張感をもって歩き始めました。

森のなかでは赤トンボがたくさん飛び交っています
森のなかでは赤トンボがたくさん飛び交っています
高山への登山道の途中から中禅寺湖の眺め
高山への登山道の途中から中禅寺湖の眺め

山頂をめざして森の中を上がっていくと、赤トンボが群れをなして数多く飛び交っています。登山道の途中では、左側に中禅寺湖、右手に男体山(なんたいさん)をはじめとする日光連山が木立の合間から見ることができるポイントもいくつかありました。山頂は眺望がありませんが広場のようで休憩適地になっています。

白樺の林
白樺の林
戦場ヶ原をゆったりと流れる湯川
戦場ヶ原をゆったりと流れる湯川

高山頂上から戦場ヶ原、道標では小田代原(おだしろがはら)方面へ下りていきます。ゆっくりと下って平地に出ると、白樺の林が広がっておりました。青空とのコントラストがたいへん鮮やか。いったん舗装された林道を歩き、小田代原歩道を抜けて戦場ヶ原入口にあたる赤沼分岐まで戻るようにルートを進みます。湯川の流れにたどりつき戦場ヶ原へ入っていきます。戦場ヶ原の名前は、男体山の神と赤城山(あかぎやま)の神がこの地で戦ったという伝承に由来するそうです(諸説あり)。

広い湿原の向こうにそびえる男体山
広い湿原の向こうにそびえる男体山
シモツケソウ
シモツケソウ

戦場ヶ原の見所のひとつは、やはり広大な湿原の向こうにドドーンと突き抜けた男体山の雄姿でしょうか。その屹立した威容を目にすると「えー、あれ登るのかー」と正直、腰が引けそうです(すでに何度か登頂しましたが)。湿原のところどころに展望ポイントが設けられています。戦場ヶ原に入ると木陰はあまりなく太陽に照らされることになりますが、この日は幸いにも風があり、やはり1500m近くの高原を吹き抜ける風が気持ちよい。8月上旬でシモツケソウが咲き乱れるピンクのお花畑もまだ見頃でした。

泉門池(いずみやどいけ)まで来ると湿原もそろそろ終わりです。本来は湯川に沿ってハイキングコースが設定されていますが、このときは災害により通行止めのため左手へ迂回路を通ります。30分ほどで湯滝に到着です。滝が見える前から瀑音が響いています。いよいよ今回の一番のポイントです。

間近に体感できる湯滝の爆流
間近に体感できる湯滝の爆流

湯滝もお茶屋さんの近くにウッドデッキのような観瀑台が設けられており、その圧巻のスケール感を間近で体感できます。湯滝の落差は約70m。湯ノ湖から直接流れ落ちる迫力は見応え充分。水際まで下りれば滝壺までかなり近づけそうです。湯滝は最初の竜頭ノ滝そして言わずと知れた華厳ノ滝(けごんのたき)と合わせて“奥日光三名瀑”ともされています。華厳ノ滝が落差約97mとされていますので、湯滝はすこしスケール感が落ちますが、華厳ノ滝が遠目から眺めるのに対して湯滝はかなり間近で観望することができます。目で見て、耳で聞いて、水に触り、“見る”というよりも“体感する”という方が合っているかもしれません。

日光・戦場ヶ原は、比較的なだらかな登山道が続いているため歩きやすく、数々の高山植物も愛でることができ、また男体山の雄大さを目の当たりにして、さらに2つの名瀑もあります。見所たくさんで家族連れでも自然を堪能できる半日のアクティビティとしてはぴったりのハイキングコースではないかなと思われます。

(山行日程=2024年8月11日)

立ち寄り情報
「鉢石カフェ」

「鉢石カフェ」のカキ氷
日光はいまや日本では5カ所しかない天然氷の産地のひとつ。「鉢石カフェ」は江戸時代創業の老舗和菓子屋「湯沢屋」が経営するカフェです。店舗敷地の奥に立つ石蔵を改装したシックな雰囲気も魅力です。今回いただいたかき氷は「とちおとめミルク」。天然氷の質は独特で「ふわふわ」と合わせて「サクサク」といった不思議な食感があります。頭にキーンとくる嫌な冷たさは感じません。とちおとめソースと練乳は氷とは別添えになっており、自分好みで加減を調整できるのがうれしいです。また、とちおとめの果肉の食感もほどよくあり、練乳と組み合わさって濃厚な甘みが口いっぱいに広がります。ハイキングと真夏日で火照った体を気持ちよく冷やしてくれました。かき氷の提供は夏季限定です。

MAP&DATA

高低図
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最適日数:日帰り
コースタイム:5時間
行程:竜頭ノ滝・・・高山・・・戦場ヶ原・・・泉門池・・・湯滝
総歩行距離:約11,800m
累積標高差:上り 約613m 下り 約430m
コース定数:21
上町嵩広(読者レポーター)

上町嵩広(読者レポーター)

登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。好きな山は八ヶ岳の編笠山。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」。登山歴は15年ほど。普段は奥多摩や丹沢周辺に出没し、八ヶ岳や北アルプスにも出張ります。好きな山は八ヶ岳の編笠山。山の抱負は「ちょっとだけ背伸びした山を登ってみる」。

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