南アルプス南部調査人、四国遍路を歩く⑧高知県の遍路道 区間ごとのアドバイス
弘法大師・空海が修行した地・四国と、ゆかりの八十八寺をお参りする巡礼・四国遍路。南アルプス南部を主なフィールドとして長らく山歩きに傾注してきた筆者が、数カ月にわたって通い続け、歩き遍路を結願(けちがん、すべての霊場を回り終えること)した。その記録とともに、登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスをつづっていく。
写真・文=岸田 明 トップ写真=塚地峠から見た、宇佐の集落と青龍寺のある横浪半島の宇都賀山
目次
はじめに
高知県の遍路道は徳島県側の県境の町・宍喰(ししくい)から、高知県最後の霊場・第三十九番延光寺(えんこうじ)のある宿毛(すくも)まで距離約390kmある。
そのうち、足摺岬の最南端にある第三十八番金剛福寺(こんごうふくじ)周辺は、地元の人が「日本で大都市圏からもっとも遠い地方」と呼ぶように、残念ながら交通の便がよくない。従って高知県を区切り打ち、あるいは一国参りしようとする場合、この足摺岬廻りを念頭にどう遍路計画を立てるか悩み所がかなり多い。
また宿毛も交通の便が悪いので、筆者としては宿毛ではなく遍路道のさらにその先の愛媛県の宇和島まで歩いて打ち止めにするのが最も自然だと思っている。宇和島駅までの行程は、徳島県最後の海陽町にある阿波海南駅 から距離約445kmとなる。旧東海道でたとえると、日本橋をスタートしてはるばる鈴鹿峠を越え、京都まで残す所あと2日となる滋賀県甲賀までとほぼ同じくらい遠い。
さて、宇和島駅までの445kmもの距離をどう区切るかだが、それは鉄道との関係で考えればよいだろう。徳島県の阿波海南駅から進み土佐湾側に入れば、奈半利(なはり)から高知市までは、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線と併走となる。高知市から先は鉄道と離れるが、60km先の須崎から窪川を経由し中村まで、JR土讃線と土佐くろしお鉄道中村線と絡みながらの歩きになる。それ以降は鉄道との併走区間はなく、宿毛駅と宇和島駅が、残る鉄道とのコンタクトポイントだ。
これを前提に高知県内を何回で区切るかだが、高知県西部に入ると高知駅から離れるほど、また区切り回数が増えるほど、自宅との往復に時間を要することになる。そのような悪条件下で考えるとそれほど選択肢は多くなく、各回の距離のバランスを考慮すると、高知県内を3つに区切って分けて歩くのが適当な落とし所ではないかと思う。
具体的な区切り地点として1箇所目は、土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線のいち駅かJR土讃線も通る後免駅、2カ所目は特急の停車駅である土佐くろしお鉄道中村線土佐佐賀駅、土佐入野駅、中村駅が候補地点だ。
以上の区切りだと1週間弱の日程になるが、その日数を取れない場合は大きな駅やバスターミナルで区切ればよいだろう。ちなみに筆者は都合により、高知県内をさらに土佐清水で区切って合計4区切りで歩いたこともあるが、事後の感想としては、やはり大変の一語に尽きる。一国参りの場合、打ち止めは宿毛駅か宇和島駅の二択だ。
次項からは、前述の筆者の推薦でもある宇和島駅まで歩くこととして、愛媛県も含めて4つの区間に分け、遍路道や霊場などについて区間ごとに説明していこう。
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プロフィール
岸田 明(きしだ・あきら)
東京都生まれ。中学時代からワンゲルで自然に親しんできた。南アルプス南部専門家を自認し、今までに当山域に500日以上入山。著書に『ヤマケイアルペンガイド南アルプス』(共著・山と溪谷社)、『山と高原地図 塩見・赤石・聖岳』(共著・昭文社)のほか、雑誌『山と溪谷』に多数寄稿。ブログ『南アルプス南部調査人』を発信中。山渓オンラインに記事多数投稿。また最近は四国遍路の投稿が多い。
四国遍路の記事:https://www.yamakei-online.com/yama-ya/group.php?gid=143/歩き遍路旅の魅力と計画アドバイス
登山経験豊富な筆者ならではのアドバイスと、その記録
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