入山前の計画段階で下調べをしっかり行うことは安全登山の秘訣 島崎三歩の「山岳通信」 第366号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第366号では、期間中に起きた北アルプス焼岳の事例を取り上げ、入山前に登山道の状況を下調べしておくことの大切さを説明している。
11月7日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第366号では、期間中に起きた4件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
10月31日(木)、八ヶ岳連峰の北横岳で、単独で入山した66歳の男性が、北横岳から下山中に転倒して負傷した。
10月31日(木)、東筑摩郡山形村小坂地籍の山林内で、きのこ採りのために単独で入山した81歳の男性が、道に迷い行動不能となった。
11月3日(日)、雨飾山で、10月27日に2人パーティで雨飾山に入山した後行方不明となった32歳の男性の遺体を発見した。
11月4日(月)、北アルプスの焼岳で、単独で入山した30歳の男性が、焼岳から上高地に向けて下山中に技量不足により行動不能となった。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週、長野県内では3件の山岳遭難が発生しました(1件は先々週)。このうち、北アルプス焼岳で発生した山岳遭難は、焼岳から上高地に下山する際に、ハシゴが撤去されていることを知らずに行動した結果、下山することも登り返すこともできずに行動不能となったものです。
幸いケガはありませんでしたが、焼岳登山道(上高地ルート)は2024年10月22日(火)~2025年5月中旬(予定)まで通行止めになっており、「計画段階の下調べ」が不足していたと言わざるを得ません。
また、入山前の「計画段階の下調べ」はとても大切です。入山してから、「知らなかった」では遅いのです。特にこれからは環境的に厳しい時期を迎えますので、「計画段階の下調べ」をしっかり行なった安全登山をお願いします。
きのこ採りをされるみなさんへ
例年9月から11月にかけて、長野県内では、きのこ採り目的で入山し、道迷いや急斜面を滑落して死傷する遭難が多発しています。
きのこ採りは、探すことに夢中になるあまり、山奥へと入り込み、方向感覚を失って、現在地がわからなくなり、危険な崖や斜面に入り込んでしまいます。
入山する際は、「遭難するかもしれない」という危機感を持つとともに、必ず家族や友人などに入山場所と予定を知らせましょう。きのこ採り遭難防止のために次のことに注意してください。
1.入山場所と予定を家族などに伝えましょう
家族には入山場所と予定を伝えてから出掛けてください。家族から捜索願が出されても、入山場所が特定できなければ、捜索が非常に困難となります。
2.携帯電話やヘッドランプを持っていきましょう
携帯電話は、万が一の際の重要な通信手段となります。車内などに置いたままでなく、必ず携帯して入山してください。また携帯電話のGPS機能をONにしておきましょう。
秋は日が短く、冷え込みます。万が一に備え、防寒着やヘッドランプなどを携行してください。
3.急な斜面に入り込まないようにしましょう
きのこ採りに夢中になるあまり急な斜面に入り込み、滑落し、死傷するケースが多発しています。不用意に危険な崖や斜面には入り込まないようにしましょう。
4.単独入山、入山後の単独行動は避けましょう
単独での入山は、アクシデントに遭った際、救助要請ができない場合があります。2人以上で入山をするようにしましょう。また、複数で入山後、別々に行動し、道に迷ったり仲間とはぐれてしまうケースが後を絶ちません。お互いに声や目の届く範囲で行動をしましょう。
5.クマなどの野生動物に注意しましょう
山中でクマやイノシシに不意に遭遇し、襲われることがあります。野生動物からの危害を防止するために、鈴やラジオなど音の出るものを携行しましょう。
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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