その種は150種類以上!? 可憐な紫色の花を咲かせるスミレの見分け方とは?
春の時期、可憐な紫色の花を咲かせるスミレ。多くの人に知られているスミレだが、その種類は豊富で、よく見ると花の色、葉の形、大きさにさまざまな違いがある。その種類は150種類以上と言われているが、その違いを見分けるコツなどあるのだろうか?
山地の草花で、春の訪れを告げる代表的な花の1つがスミレだ。万葉集にも歌われるほど古くから日本人に親しみのある花で、北海道から沖縄の海辺から高山まで日本の津々浦々に自生している。
街中でも道端や公園の植え込みなどで身近にみることができる花だが、スミレの世界は奥が深いことでも知られている。日本国内に自生している種類は60種類近くあり、変種や品種、雑種も含めると、その数は約150種類にもなる。その多様性は野草愛好家の興味を引きつけてやまない。
3~5月頃の時期に山を歩いていると、さまざまな場所でスミレを見かける。しかし、そのスミレの正式の名称を見極めるのは至難の業だ。そこで、日本国内の図鑑を横断的に閲覧できるWebサービス『図鑑.jp』では、見かけたスミレの花を専門家が特定する「春のスミレキャンペーン」を実施している。
今回特定をしてくれる方は、日本のスミレ図鑑の決定版『山溪ハンディ図鑑 増補改訂日本のスミレ』の著者である植物写真家のいがりまさしさん。
今回は、キャンペーンで投稿された一部を紹介しよう。
佐渡ヶ島の葉っぱが大きいスミレは?
質問: 佐渡島の金北山を縦走したときに見つけたスミレです。葉っぱが大きいな・・・と思った記憶があります。写真はこの1枚しかないのですが、わかるものでしょうか? よろしくお願いします。
いがりまさし先生からの回答:
オオタチツボスミレです。葉が花に比べて大きめなのもよい特徴です。特に花期後半はその傾向が強くなります。
距が白く、葉が円心形で明るい緑色なのも特徴です。言葉にしにくいのですが、花色もほかのタチツボスミレの仲間と微妙に違います。
高尾山で見かけたスミレは同じもの?
質問: 高尾山で見ました。1枚目も2枚目もヒナスミレかな? と思ったのですがあっているでしょうか?
いがりまさし先生からの回答:
意外に混乱するのが、ヒナスミレとナガバノスミレサイシンです。仲間としてはかなり遠縁なのですが、同じような半陰地に生え、花期も早く、葉形が似ていますね。以下のような違いがあります。
▪️花色
ヒナスミレ/淡紅色
ナガバノスミレサイシン/淡紫色
▪️生え方
ヒナスミレ/葉柄や花柄のつけねは地上すれすれ
ナガバノスミレサイシン/葉柄や花柄のつけねは地下
▪️葉の光沢
ヒナスミレ/光沢がない
ナガバノスミレサイシン/光沢がある
▪️花のサイズ
ヒナスミレ/1円玉くらい
ナガバノスミレサイシン/100円玉くらい
※全体にナガバノスミレサイシンの方が大型です。
1枚目がナガバノスミレサイシン、2枚目はヒナスミレです。
エイザンスミレ? ヒゴスミレ?
質問: GWの奥多摩の山で見ました。葉の感じが当然エイザンスミレとヒゴスミレということかと思いました。家に帰ってから図鑑で調べてのですが、葉が3裂か5裂かということの違いということですが、写真を撮ったときはその意識がなく、写真を見てもそこがちょっと分かりませんでした。
そもそもまだ葉が開ききっていなくて、2枚?しか出ていません。これはどちらでしょうか? よろしくお願いします。
いがりまさし先生からの回答:
エイザンスミレで間違いないと思います。 三つ目の裂片は花の後ろに隠れているのではないでしょうか。葉のシルエットが三角形になるのも特徴です(ヒゴスミレは五角形)。
この個体は、まずまず典型的なエイザンスミレですが、エイザンスミレとヒゴスミレの間には、有稔性の雑種や中間型も出てきます。
なお、ヒラツカスミレ(エイザンスミレとヒゴスミレの雑種)についてのコラムも掲載していますので、ぜひご覧ください。
★コラム:スミレの雑種の判断基準というものはありますか? (2018年4月30日まで)
南アルプスで見た黄色いスミレ
質問: 仙丈ヶ岳に登ったときに見つけました。黄色のスミレははじめてみました。よろしくお願いします。
いがりまさし先生からの回答:
キバナノコマノツメに間違いありません。側弁が上を向くのが、オオバキスミレの仲間とちがうところですね。
これらの質問/回答以外にも、さまざまなスミレについての質問に回答している、図鑑.jpのスミレキャンペーン。スミレに関するコラムも満載なので、これを機会にスミレの世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか?
なお、図鑑.jpは有料サービスだが、質問は無料となっている。
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