通過点にするにはもったいない! 登山者にはあまり知られていない上高地の姿を案内

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毎シーズン、多くの登山者を迎える上高地。あなたにとって上高地はどんな場所でしょう? ただの通過点になってしまっていませんか? 登山者が見落としがちな上高地の姿を、ナショナルパークガイドの方に案内していただきました。

写真=鈴木千佳 文=黒尾めぐみ(山と溪谷編集部)

 

「聖地・上高地」だけど

美しい梓川の流れ、威風堂々の穂高連峰。まぶたを閉じると、山の清々しい空気が漂い、鳥のさえずりも聞こえてくるようだ。入山前は「さあ、ここからが山だ」と襟を正したくなり、下山後は「無事に下りてきた」とホッと安心する。登山者にとって上高地とは、きっとそんな場所ではないだろうか。

ところが、往来の様子を見ていると、バスターミナルで準備体操を終えたら、登山口まで猪突猛進! な人や、徳澤園でソフトクリームを食べたら、あとは黙々と足を運ぶのみという人も。目的である「山」を前にして、上高地をただの通過点と捉えるのは仕方がないことかもしれない。

しかし、国の名勝・天然記念物にも指定され、雄大な自然が守られてきた上高地。

「はやる気持ちと歩くスピードを抑えて、ゆっくりと自然を観察したら、知らない発見があるかも」と思い立ち、ナショナルパークガイドの方に上高地を案内してもらった。

 

10年いても、毎年新しい発見がある上高地

案内してくれたのは、ナショナルパークガイドのさくらさん。上高地でガイドをするようになって10年だそうだ。今回は、河童橋から梓川右岸を歩き、明神を経由して徳沢へ、徳沢からは河童橋まで梓川左岸を戻るというコースだ。

 


今回の上高地探索コース。半日あれば十分にじっくりと探索できる

 

岳沢湿原を過ぎた場所で、大きな倒木を発見。雪で倒れてしまったのだろうか?

「上高地に降る雪は軽いので、雪で木が倒れることはあまりないんですよ。この木は冬に吹く強風によって倒れてしまったんです」

 

そのすぐ脇には、倒木の上に小さな芽が出ている。

「岳沢湿原の先にある森は、ササが地面を覆っている箇所が多く、植物の芽が出ても光がササに遮られてしまいます。だから、倒木の上などの光が当たる場所から芽を出し、養分をもらいながら成長していくんです」

ゆっくり歩くことで、普段は気に留めないことにも目が向き、疑問が湧いてくるのが不思議。そして小さな疑問に答えてくれるガイドさんの存在はとてもありがたく思える。

 

 

ほかにも、漢字の「出」のようなユニークな幹をもつカラマツの理由や、上高地のヤナギと梓川の関係、梓川が美しく見える理由など、数々の「知らなかった!」上高地の自然に出会うことができた。

「ガイドを10年間続けていても、毎年新たな発見があったり、疑問に出合ったり。季節が変わるたびにガイドツアーに参加して、四季の変化を楽しんでいるお客さんもたくさんいますよ」とさくらさん。

これまで知らなかった上高地の姿を楽しむことができたひとときだった。

 

登山者にとっては登山の入山口であり、通過点となりがちな場所だ。しかし、ゆっくり歩いてみると、周囲の山々とは違った魅力をたくさん持っている。そんな、上高地の魅力をもっと知りたいという方は、『山と溪谷 2018年5月号』に注目。

特集の「上高地と穂高岳」では、上高地の散策ガイドをはじめ、グルメ情報など散策の魅力を網羅。さらに徳本峠や奥又白池、霞沢岳など上高地を取り囲む山々の登山情報も余すことなく紹介している。

この夏、上高地経由で穂高岳方面をはじめ、北アルプスを目指す人には注目の内容だ。

プロフィール

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2024年5月号の特集は「上高地」。多くの人々を迎える上高地は、登山者にとっては入下山の通り道。知っているようで知らない上高地を、「泊まる・食べる」「自然を知る・歩く」「歴史・文化を知る」3つのテーマから深掘りします。綴じ込み付録は「上高地散策マップ」。

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From 山と溪谷編集部

発刊から約90年、1000号を超える月刊誌『山と溪谷』。編集部から、月刊山と溪谷の紹介をはじめ、様々な情報を読者の皆さんにお送りいたします。

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