筑波山で山+風呂+グルメの贅沢三昧。関東平野を望む名峰温泉ぶらり旅【山と溪谷4月号】

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雑誌『山と溪谷』2025年4月号の特集は「登山者に欠かせぬ 風呂、酒、山小屋土産」。登山を彩るのは、山登りそのものだけではありません。山を下りてからのひと風呂や一杯、その山ならではの土産物といったアクセントが、山行をいっそう豊かにします。いつもの登山をより楽しくする、登山と切っても切れない、そんな3つのこと・ものを紹介する特集から、筑波山の温泉を楽しむルポを抜粋します。

文=吉澤英晃、写真=加戸昭太郎

なじみのない山域で、日帰り山歩きをしてみたい

冷えた指先からじわ~っと温まり、体中から力が抜けて、終いには心までとろけてしまいそう……。下山後に入る温泉は、なんて気持ちがいいんだろう。

そんな至福のひとときを楽しみに、今日は筑波山(つくばさん)を訪れた。筑波山で温泉?と思われるかもしれないが、2001(平成13)年に「筑波山温泉 双神(ふたがみ)の湯」が中腹で開湯し、筑波山神社周辺には現在、日帰り入浴を行なっている施設がいくつもある。

まだ春浅い2月の平日、到着したつくば駅から「つつじヶ丘」行きの筑波山シャトルバスに乗り、まずは旅の起点の筑波山神社入口をめざす。

目的のバス停で下車すると、近くには筑波山観光案内所があり、道の先に目をやると、朱色の大きな鳥居が多くの来訪者を出迎えていた。

筑波山は、観光名所やパワースポット、登山者には日本百名山のひとつとして有名だが、山全体が信仰の対象であり、今でも古の神々を祭る霊峰である。そのため、鳥居から先は神々が住まう神域で、並び立つふたつの頂には双方に筑波山神社の本殿があり、東の女体山(にょたいさん)には筑波女大神(イザナミノミコト)、西の男体山(なんたいさん)には筑波男大神(イザナギノミコト)が祭られている。

筑波山神社の赤い大鳥居
登山の起点は筑波山神社の赤い大鳥居が目印
筑波山神社
拝殿が立派な筑波山神社

バス停から歩き出し、白雲橋(しらくもばし)コースをたどって大展望が広がる女体山(877m)、続いて男体山(871m)に登り、下山は御幸ヶ原(みゆきがはら)から筑波山ケーブルカー。ものの数時間の行程だが、体力は消耗するし、なによりも体が冷えた。標高こそ低いものの、北風が身に堪える。

筑波山 女体山
女体山は展望抜群。関東平野が足元に広がり、胸がすくほど眺めがいい

さて、山から下りたらさっそく温泉に向かおうではないか。

日帰り入浴で立ち寄ったのは、筑波山神社の側に立つ旅館「筑波山江戸屋」。中に入ると、1628(寛永5)年の創業とは思えない和モダンな明るいロビーが迎えてくれた。

「筑波山江戸屋」のロビー
くつろげる江戸屋のロビー

お待ちかねの温泉は、階段を下りた地下2階。内湯と露天風呂があり、いずれも川に面している。

泉質はアルカリ性単純温泉。柔らかいお湯は肌に優しく、ちょうどいい温かさでずっと入っていたくなる。

形容しがたい温もりに包まれながら、ページをめくるように山で見た景色を思い出したり、なにも考えずにぼ~っとしたり。あぁ、やっぱりこのひとときが気持ちいい。

「筑波山江戸屋」の露天風呂
露天風呂は日差しが暖かくて開放的

谷間の緑を眺めながら露天風呂もしっかりいただき、ほどよい時間で心と体の充電完了。ロビーに戻り、せっかくなのでコーヒーを片手に足湯も楽しませてもらうことにした。

注文したコーヒーは、筑波山から湧き出る天然水「杉の水」を使ったこだわりの一杯。口あたりがとてもまろやかで、華やかな酸味が香ばしい。

「筑波山江戸屋」の足湯
コーヒーを啜りながら足湯でリラックス。北の空に女体山が見えた
「筑波山江戸屋」の喫茶ルーム
館内の喫茶ルームでは「王妃の至福とろけるラスク」も人気

山に登って、温泉にも入り、時刻はちょうどお昼過ぎ。旅の締めくくりは、やっぱりグルメがいいだろう。

旅館のフロントで話を聞くと「つくばうどん」がこのあたりの名物と教えてくれた。つくば茜鶏(あかねどり)の“つ”くね、地元産のシイタケやゴボウなど“く”ろ野菜、茨いばら城き 県産ローズポークの“バ”ラ肉が入っているから“つくば”うどん。レンコン入りの麺も特徴で、つるつると喉越しがよく、こちらも美味。

筑波山名物つくばうどん
筑波山名物つくばうどん
筑波山名物つくばうどん
地元の名物もちゃっかり堪能。温かいうどんに癒やされました

今日の計画は贅沢しすぎ? いや、たまにはこんな山旅もありでしょう。

(取材日=2025年2月25日)

COURSE GUIDE筑波山

茨城県/877m(女体山)

筑波山
筑波山は顕著な双耳峰。右の頂上が女体山で左が男体山

四方に登山道がある筑波山だが、公共交通機関利用の場合は筑波山神社入口バス停が玄関口。バス停から参道を進み、筑波山神社下で右へ進んで登山道へ。酒迎場(さけむかえば)で迎場コースを分けると常緑樹林が茂る、本格的な登りとなる。弁慶(べんけい)茶屋跡からは奇岩群が現われ、ブナなどの落葉樹林となる。展望峰の女体山から御幸ヶ原へ下ったら、男体山を往復してケーブルカーで帰る。余裕があれば筑波山自然研究路を一周して、筑波山の自然を学ぼう。

(文=石丸哲也)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
歩行時間:計4時間(ヤマタイム計算値)
行程:筑波山神社入口バス停・・・筑波山神社・・・酒迎場・・・弁慶茶屋跡・・・女体山・・・御幸ヶ原・・・男体山・・・御幸ヶ原・・・男女川源流の湧水・・・中茶屋跡・・・筑波山神社・・・筑波山神社入口バス停
総歩行距離:約7,100m
累積標高差:上り 約883m 下り 約883m
コース定数:19
アクセス:[公共交通機関]行き つくばエクスプレスつくば駅(バス36分、770円、関東鉄道 TEL:029-866-0510)筑波山神社入口バス停/帰り 筑波山頂駅(ケーブルカー8分、590円、筑波観光鉄道 TEL:029-866-0611)宮脇駅(徒歩15分)筑波山神社入口バス停(バス40分、770円、関東鉄道)つくばセンターバス停
[マイカー]筑波山神社入口バス停付近に市営駐車場4カ所あり、計440台、500円

施設情報

筑波山江戸屋

筑波山江戸屋

江戸時代の創業から397年を数える老舗旅館。昭和天皇がランチを召し上がり、上皇陛下が宿泊されたこともある。日帰りでは温泉、足湯、喫茶メニューを注文できるラウンジとロビーを利用できる。

所在地 茨城県つくば市筑波728
TEL 029-866-0321
営業時間 11時30分〜15時(足湯は10時~)※最終受付14時
定休日 不定休
入浴料 1,540円 ※足湯のみの利用は440円(喫茶メニュー注文時は飲食代+220円で利用可)

『山と溪谷』2025年4月号より転載)

この記事に登場する山

茨城県 / 八溝山・筑波山

筑波山 標高 877m

昔から富士山と並び称される東国の名山として知られ、万葉集に筑波山を詠んだ長歌・短歌が25首もあるのがそれを物語っている。 今は誰でも登れる行楽の山で、南面の筑波山神社の脇から出るケーブルカーと、東面のつつじガ丘からのロープウェイが、山頂近くまで昇っている。 登山道も四方から標高800mの御幸ヶ原(みゆきがはら)を目指しており、その中の3コースが首都圏自然歩道に認定されている。山麓の北条から筑波山神社に至るつくば道(神郡(かんごおり)街道)は「日本の道100選」に入っている。 山頂部は御幸ヶ原を挟んで男体山(870m)と女体山(876m)の双耳峰になっており、イザナギノミコトとイザナミノミコトを祭る筑波山神社の奥宮を置いている。男体山を一周する自然研究路では、筑波山で発見された貴重な植物や、ツクバの名を冠した珍しい草花を見つけることができる。

プロフィール

山と溪谷編集部

『山と溪谷』2026年1月号の特集は「美しき日本百名山」。百名山が最も輝く季節の写真とともに、名山たる所以を一挙紹介する。別冊付録は「日本百名山地図帳2026」と「山の便利帳2026」。

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雑誌『山と溪谷』特集より

1930年創刊の登山雑誌『山と溪谷』の最新号から、秀逸な特集記事を抜粋してお届けします。

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