満開のコブシを夢見て宝篋山へ。開花リレーのはじまり
読者レポーターより登山レポをお届けします。植野律子さんは茨城県の低山、宝篋山(ほうきょうさん、461m)へ。
文・写真=植野律子
春の訪れをいち早く教えてくれるコブシの花。真っ白な花びらにピンク色のラインがとてもかわいらしい。しかし、開花期が短く、あっという間に散ってしまうため、見頃を逃さないようタイミングを計るのが難しい。今回も前日の冷たい雨で花が散ってしまったのではないかと不安を抱きつつ出発した。
小田休憩所付近に着くと、次々に登山者とすれ違う。そこで不安は希望に変わった。満開のコブシを頭に思い浮かべ、ワクワクしながら登山口をめざした。
今回は、大好きな花を愛でる時間を充分に確保するため、コースタイムの短い極楽寺コースを選択。登山道に入ると、さっそくコブシの花があちらこちらに咲いていた。あまりのかわいらしさに心奪われ、写真を撮る手が止まらない。今年も見られてよかったという安堵もあり、そばを流れる小川の音がゆったりと心地よく聞こえた。
足を滑らせないよう気をつけながら何度か小川の飛び石を渡り、少しずつ登り進めると、今度はコブシの白とヤブツバキの赤を掛け合わせた絶景がしばらく続く。まだ咲いたばかりの花も、一面に落下した花も可憐で美しく、上を向いたり下を向いたり、つい足を止めてうっとりしてしまった。
しかし、見どころはこれで終わりではない。山頂に向かう途中、「こぶし道」というまるでご褒美のようなまわり道があるのだ。ここを通らずには帰れない。迷わずそちらへと進むと、出発時まさに思い描いていた満開の大きなコブシの木が迎えてくれた。元禄こぶしという名のついた画角に収まりきらないほどの巨木もあり、どれも真っ白な花を枝いっぱいに咲かせていた。
「かわいい」という言葉をこの登山道で何度口にしただろうか。夢中になり、次から次へと花開いたコブシの木を追いかけるように進むと、山頂はすぐだった。お昼ごはんを食べながら、まだ蕾の多く残ったコブシと筑波山のコラボレーションを楽しむ。あと数日で満開となり登山者のゴールをにぎやかに待ち構えてくれるはずだ。
宝篋山では、コブシからのバトンタッチでヤマザクラが見頃を迎える。足元に小さな白い花びらを見つけ、太陽の光がぽかぽかとあたたかそうな木の上の方を見上げると、数輪ずつ咲き始めているのが見えた。満開まであと少し。年によっては、コブシとヤマザクラの共演も見られるようだ。
ほかにもニリンソウ、スミレなどの草花や、ヒサカキ、キブシ、ヤマウグイスカグラの花も咲き、山のどこを歩いていても、ふんわりといい香りが漂ってきた。
この時期は週替わりでさまざまな花が咲き誇り、花好きにとっては特別だ。なかでも、コブシのように時期の限られる花が青空に映え、美しくきれいな姿を見られるとうれしさも倍増する。ぜひ早春の可憐な開花リレーを楽しみながら、新しい季節の訪れを全身で感じてほしい。
(山行日程=2025年3月30日)
MAP&DATA
関連リンク

植野律子(読者レポーター)
洞窟好きだったが、新たな趣味を求めて登山を始める。ウェアやごはんで気分を変えながら登る週末の山は、とっておきのごほうび。山中では、植物を愛で、撮影しながら登るのがいちばんの楽しみ。
この記事に登場する山
プロフィール
山と溪谷オンライン読者レポーター
全国の山と溪谷オンライン読者から選ばれた山好きのレポーター。各地の登山レポやギアレビューを紹介中。
山と溪谷オンライン読者レポート
山と溪谷オンライン読者による、全国各地の登山レポートや、登山道具レビュー。
こちらの連載もおすすめ
編集部おすすめ記事

- 道具・装備
- はじめての登山装備
【初心者向け】チェーンスパイクの基礎知識。軽アイゼンとの違いは? 雪山にはどこまで使える?

- 道具・装備
「ただのインナーとは違う」圧倒的な温かさと品質! 冬の低山・雪山で大活躍の最強ベースレイヤー13選

- コースガイド
- 下山メシのよろこび
丹沢・シダンゴ山でのんびり低山歩き。昭和レトロな食堂で「ザクッ、じゅわー」な定食を味わう

- コースガイド
- 読者レポート
初冬の高尾山を独り占め。のんびり低山ハイクを楽しむ

- その他
山仲間にグルメを贈ろう! 2025年のおすすめプレゼント&ギフト5選

- その他