滑落事故が多発、残雪の変化に対応できる技術・体力・装備品の準備を 島崎三歩の「山岳通信」 第393号
長野県内で起きた山岳遭難事例について配信している「島崎三歩の山岳通信」。第393号では、連休中に滑落事故が多発したことについて言及。残雪の変化に対応できる技術や体力、装備品の必要性を説明している。
5月8日に配信された『島崎三歩の「山岳通信」』第393号では、期間中に起きた21件の山岳遭難事例について説明。以下に抜粋・掲載する。
4月28日(月)、北アルプスの大天井岳で、2人パーティで入山した48歳の男性が、北アルプス大天井岳付近を登山中に雪で足を滑らせて滑落、負傷した。
4月28日(月)、北アルプスの爺ヶ岳で、2人パーティで入山した55歳の男性が、爺ヶ岳に登山後に別々に下山中、なんらかの原因で滑落、死亡した。
4月28日(月)、北アルプスの爺ヶ岳で、単独で入山した40歳の男性が爺ヶ岳から下山中に何らかの原因で滑落、死亡した。
4月30日(水)、八ヶ岳連峰の編笠山で、2人パーティで入山した81歳の男性が編笠山を登山中に足を滑らせて滑落、負傷した。
4月30日(水)、北アルプスの焼岳で、単独で入山した69歳の男性が中の湯に向けて下山中に道に迷い、行動不能となった。
5月1日(木)、北アルプスの蝶ヶ岳で、3人パーティで入山した60歳の男性が、蝶ヶ岳から横尾に向けて下山中に滑落、負傷した。
5月1日(木)、中央アルプスの空木岳で、2人パーティで入山した78歳の男性が、空木岳の池山尾根を下山中に道に迷い滑落、死亡した。また、同行者の39歳の男性も道に迷い、行動不能となった。
5月2日(金)、八ヶ岳の縞枯山で、2人パーティで入山した41歳の女性が、八ヶ岳ロープウェイから縞枯山に向けて登山中に雪を踏み抜き、負傷した。
5月3日(土)、北アルプスの蝶ヶ岳で、単独で入山した54歳の男性が、蝶ヶ岳から横尾に下山中に滑落、負傷した。
5月3日(土)、北アルプスの前穂高岳で、2人パーティで入山した22歳の男性2人が、前穂高岳から岳沢に向けて下山中に疲労により行動不能となった。
5月5日(月)、北アルプスの涸沢で、3人パーティで入山した67歳の男性が、涸沢で幕営中になんらかの疾患を発症して行動不能となった。
5月5日(月)、北アルプスの常念岳で、単独で入山した29歳の男性が、山小屋に滞在中に膝の痛みを発症して行動不能となった。
5月5日(月)、北アルプスの奥穂高岳で、2人パーティで入山した46歳の女性が、奥穂高岳のコブ尾根を登山中に滑落、負傷した。また、同行者(42歳の女性)も技量不足により行動不能となった。
5月5日(月)、北アルプスの蝶ヶ岳で、単独で入山した53歳の男性が蝶ヶ岳から三股登山口に向けて下山中に、雪で足を滑らせて滑落、負傷した。
5月5日(月)、3人パーティで入山した23歳の女性が、焼岳から上高地に向けて下山中に滑落、負傷した。また、同行者の2人(27歳の女性と23歳の女性)も技量不足で行動不能となった。
5月5日(月)、戸隠山で、単独で入山した49歳の男性が、戸隠山の八方睨から奥社に向けて下山中に滑落、負傷した。
5月6日(火)、八ヶ岳連峰の赤岳で、2人パーティで入山した41歳の男性が、権現岳から赤岳に向けて別行動で登山中になんらかの原因で滑落、死亡した。
5月6日(火)、北アルプスの北穂高岳で、単独で入山した51歳の男性が、北穂高岳から涸沢に向けて下山中に滑落、負傷した。
長野県警山岳安全対策課からのワンポイントアドバイス
先週は、連休を中心に21件の遭難が発生しました。21件中、滑落による遭難が13件発生しています。
滑落による遭難のほとんどが下山時に発生しています。標高の高い北アルプスなどでは、残雪が多くあります。早朝は凍結により硬く締まり、日中は気温の上昇や日照の影響で融雪が進んで雪が緩むなど、一日のなかで雪の状態が大きく変化する時期です。そのため、登山には残雪の変化に対応できる技術や体力、装備品が必要です。
今年の特徴として、雪上でのスリップによる滑落のほか、融雪が進み雪を踏み抜いてバランスを崩して滑落するといった遭難が多く発生しています。疲労の蓄積や筋力の消耗が多い下山時は、ちょっとしたバランスの崩れに対応できずに転倒や滑落をしてしまい、死亡や負傷する遭難につながっています。
標高の高い山域では、まだまだ残雪が多く、冬山登山の延長にあります。登山には多くのリスクが存在し、「無事に帰宅するまでが登山」です。遭難を「他人事」と考えず、装備、計画を万全にして安全第一で楽しみましょう。
プロフィール
島崎三歩の「山岳通信」
信州の山岳遭難現場と全国の登山者をつなぐために発行。「登山用品店舗スタッフ」「登山情報サイトを利用する登山者」「長野県内の各地区山岳遭難防止対策協会」などに対して、長野県の山岳地域で発生した遭難事例を原則・1週間ごとに、「安全登山」のための情報提供をしている。
島崎三歩の「山岳通信」
長野県では、県内の山岳地域で発生した遭難事例をお伝えする「島崎三歩の山岳通信」を週刊で配信。その内容をダイジェストで紹介する。
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