物価高が低山ブームの背景に!? 無理な節約で遭難のリスクも|物価高と登山に関するアンケート結果②

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終わりの見えない物価高のなか、登山者もやりくりしながら山行を重ねている。このほど、山と溪谷オンラインでは物価高と登山についてのアンケート調査を実施。幅広い年代の426人から回答が寄せられた。最近の低山ブームの背景には節約志向があることが見えてきたほか、節約が思わぬリスクにつながる可能性もあるようだ。

構成=山と溪谷オンライン 写真=PIXTA

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基本データ

募集期間:2025年5月6日~2025年5月30日(オンラインアンケート)
総回答数:426
性別:男性275、女性141、回答しない10

年代

426件の回答

登山歴

426件の回答

登山頻度

426件の回答

節約が登山中のリスクを高める!?無理な登山につながる懸念も

「物価高騰に関連する登山の悩みがあれば教えてください」という自由記述の質問では、さまざまな悩みが寄せられた。また、それらの悩みを抱えながらも工夫を凝らして山に向かうひたむきな登山者の姿も見えてきたが、節約が無理な登山につながるおそれもありそうだ。

交通費や宿泊費を節約するため、日帰りや夜行日帰り、あるいは車中泊で山に行くという回答が多数寄せられた。また、登山頻度を減らしたり、スポーツジムを退会するなどして節約した結果、運動する機会が減ったことで、体力の低下を実感しているケースも。必要な装備を購入する際も、安全性よりも安さに着目してしまうというコメントもあった。節約によって時間や体力などのゆとりが失われると、遭難のリスクが高まることも頭に入れておく必要があるだろう。

  • 「食費、交通費、装備にお金がかけられず、お土産やその他交通機関(ケーブルカーなど)も控えめしているため、登山のプランもゆとりをもったプランが立てにくい。結果、弾丸日帰りツアーのような形となり、登山関連の経済循環へ悪影響」(50代・性別未回答)
  • 「喫緊の悩みとしては高速の深夜割が実走行時間のみになること。ますます寝不足で登山に行くことが多くなって大変だなぁと」(50代男性)
  • 「始めたばかりで回数を重ねたいので、日帰りか一泊でなるべくたくさんの山に登る計画作りに毎週頭を悩ませている」(50代男性)
  • 「ガソリン代やホテル代の高騰で遠征しづらくなった。遠征先では車中泊や外食せずスーパーで食料を買うなどしてできるだけ費用を押さえているが、車中泊だと暑かったり狭かったりで、寝不足になって登山中に調子が出ないことも」(30代男性)
  • 「宿泊費を抑えるために、どうしても無理な行程を組んでしまいがち。車中泊も増えたし山小屋をテントにしたりすることも多くなった。山小屋の予約合戦もあり、とにかく無理をする方向ではある」(50代男性)
  • 「体力をつけるためのスポーツジムも契約解除した。今まで歩けた距離が苦しくなった」(50代男性)
  • 「回数が減り体力や筋力の維持が大変だと感じる」(60代男性)
  • 「なるべく登山用品は自分の安全を重視して購入したいのですが、値段の安いものがあるとついそっちの方がよいようにも思えてしまいます。ザックやレインウェアなどは少し古いものをメンテナンスして使っていますが、機能もよくなっているので『新しいものが欲しい』『でも高い』と常々オンラインストアと睨めっこしています」(40代男性)
ガソリン代など登山の交通費も高騰している

シニア登山者の悩み

仕事や子育てなどが一段落し、趣味の時間がとりやすくなるのが60代以上のシニア世代だが、物価の高騰は年金暮らしを直撃し、登山用具が買えない、思うように山に行けないという悩みが多く寄せられた。また、定年退職を間近に控えた登山者にとって、退職後の“悠々自適”の生活設計を考える上で物価高が重くのしかかっているようだ。

  • 「靴代、ウェア代などの高騰が著しいです。少しおしゃれなものをと思うと、年金暮らしには手が出ない価格です」(60代男性)
  • 「年金暮らしの身分となり、山行が減りました。交通費、食費、などすべて値上がりし、特に小屋泊では予約制となり宿泊代も値上がり。登山はもともと費用のかからない趣味だと思っていました」(60代男性)
  • 「コロナ以降、大部屋1人1泊16,500円にもなった山小屋あり。夫婦で2泊すると66,000円、古希プラスαのシニアですが、中々アルバイトやめられません」(70代以上男性)
  • 「物価高騰もあるが、そろそろ定年なので定年後の登山が続けられるかわからない」(50代男性)
  • 「今年定年退職し、時間も自由になるので、宿泊を伴う縦走なども行ないたいのだが、テントなどの荷物が増えることなど体力的な心配もある。そもそもテントなど必要なギアをそろえる際に物価高騰が目の前に立ちはだかるのではと、一人悩む前期高齢者でもある」(60代男性)
登山用具の値上がりで、新しいアクティビティに挑戦しにくくなっている

「受益者負担」の重みもズシリ

財源不足を補うため、受益者負担の取り組みとして登山者や観光客に協力金(入山料)を求める山岳エリアが増えている。北アルプスに続いて南アルプスでも一部導入されたほか、富士山では山梨・静岡両県で4,000円の協力金が設定された。登山に関連する出費が増えるなか、こうした協力金の負担についてのコメントも寄せられた。回答を見ていくと、協力金制度そのものの否定ではなく、金額の設定や使途についての疑問が多くを占めた。

  • 「入山料もきちんと理由づけをしてもらえば、納得はできます」(50代女性)
  • 「高額な富士山入山料はなにに使われるのでしょう」(60代男性)
  • 「山小屋やテントサイト、入山料の料金は、安ければ助かりますが、それよりも持続可能な金額であることが重要と考えます」(50代男性)
  • 「夏時期は標高の高いアルプスの山へ行きたいが、山小屋の著しい値上がり、入山料など交通費を含め全てが値上がり小屋夕食だけとか素泊まりにしようか、値段の安い小屋を探すとか色々選択が悩ましい」(50代男性)
  • 「使途・目的の根拠に乏しい協力金が増えた」(50代男性)

低山ブームは物価高による現象?

最近ブームとなっている低山登山は、交通費や宿泊費が比較的少額で済むほか、雪山やクライミングといった登山に比べて、必要な用具類も少ない。回答を見ていくと、「低山ブーム」の背景には交通費や宿泊費の高騰により、消極的に低山を選択する登山者もいることがわかる。もちろんそうした人たちも低山ハイキングを楽しんでいないわけではないのだが、「本当はもう少し高い山、遠くの山に行きたい」という本音も寄せられた。

  • 「登山に行く為の交通費ガソリン代も高いので、近くの低山にしか最近行けていないのが最大の悩みですね。低山ももちろん好きですが、雄大な山を感じたいです」(50代男性)
  • 「昔は1人で行っていましたが、子どもも小学生になったので、家族で登山をやり始めました。子どもの登山グッズも高く、すぐに大きくなってしまうことを考えるとしっかりした装備はまだ買わない方がいいかなと思って、買い控えています。まだ低山ばかりなのでなんとかなっていますが、もう少し中級の山に登りたがったときにどうしようか悩みます」(40代男性)
  • 「ガイドと行きたいが、高いので近場の低山で止めている」(50代男性)
  • 「登山めしも物価高の影響で上がっているので、できるだけ持参します、交通費も年々上がり、近くの山ばかり行きます」(50代男性)
  • 「ガソリン代がばかにならない。高速を使わず下道で行く。行きたい山ではなく近い山に行くことにするしかない」(60代男性)
  • 「近場では物足りなくなってきたので、遠征したいのですが行きにくいです。道具類もいつの間にか値上がりしていて、一度上がったら下がることはなさそうだし、自作できるものはしようかな、と。諸々頭を使う楽しさはあります」(50代男性)
  • 「山小屋 テント場まで物価高 日帰りで近郊が主に」(60代男性)
  • 「まだまだ初心者のため、必要な道具はすべてそろっていないが、登山道具やウエアは高くて買うことを躊躇している。交通費もかかるので、遠くの山になかなか行けない」(50代男性)
  • 「コロナ禍自粛で泊まり山行を控えている間に山道具の加水分解と同行者(妻)の山離れ。テントなどをソロに戻そうかと考えていたら想像以上の値上がりに財布が遭難した」(60代男性)
  • 「アルプスや八ヶ岳テン泊を控え、近隣日帰りにシフトしたが、山頂からそれらの山が見えるとなにか切ない。家計やりくりして山靴は更新できたが、見える山々は思った以上に遠くになってしまったと感じる」(60代男性)
  • 「遠くの山に行ってみたいけど、交通費とか車の運転スキルがないので、なかなか行けないです。難易度の高い山は、どうしてもいろんな費用がかかるので、どうしても簡単なお山になってしまいます」(40代男性)
  • 「初心者のためガイドツアーなども参加してみたいが、ツアー料金の高さになかなか申し込みに踏み切れず、近場のあまり交通費のかからない山を選択しがちです」(40代男性)
低山ハイキングは比較的低予算で楽しめる

物価高には負けない!ポジティブ思考も多数

「悩み」についての質問だったが、回答の中には物価高のダメージをみじんも感じさせないポジティブなものも少なくなかったほか、「物価高は仕方がない」と受容する登山者や、日本経済という広範な視野に立った前向きな回答も寄せられた。

  • 「悩むのはギアを買い替えるタイミングくらいでしょうか?普段は地元低山、高山へは年2度程行くくらいで予算を前もって貯めながら計画するのであまり困らないです」(50代男性)
  • 「危険度のあるスポーツだと認識しているので、今までの登山スタイルからなにかを削ることはしていません。現時点では物価高騰も必要経費と考えています」(30代男性)
  • 「山小屋泊しています。物価高騰のこのご時世で ご飯味噌汁おかわりありは うれしいです。ありがとうございます」(60代男性)
  • 「元々、お金はかけないので、特になし」(50代男性)
  • 「ストレスを感じたくないので、登山に関しては特に物価高対策はしていません。むしろ、あんまり倹約して山のある地域の経済や山用品の質の低下に繋がる方が嫌です」(50代男性)
  • 「特になし。物価の高騰で登山を控える訳はないので」(70代以上男性)
  • 「交通費・宿泊費(テント泊代も)高くなったけど、山には行きたいので普段の生活の方を節約しています。山では、せめて食事付き宿泊ではなく、素泊まりで食事は自分で作る程度の節約しか行えません。山での物価高は世の現状、仕方ない事だと受け入れています」(60代男性)
  • 「山小屋は高くなったけれど、安全のためには仕方ないかなと思う」(70代以上女性)
  • 「日本経済に取っては賃上げにつながるよいことだと思う」(50代男性)
  • 「登山自体に節約は求めません」(50代男性)
  • 「頻度や出費を抑えるため、悩みはありません。」(50代男性)
物価高騰をネガティブにとらえない登山者も少なくない

登山者アンケート

山と溪谷オンラインで実施した登山者へのさまざまなテーマのアンケートの結果をご紹介。

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